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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
嘆きの邂逅(最終回/全6回) 嘆きの邂逅(最終回/全6回)

リアクション

 白百合団と神楽崎分校生達の猛攻により、傷ついたキメラが暴れだし、拠点を護る下っ端達も次々と倒れていく。
 神楽崎分校生に囲まれて、鈍器や刃物で攻撃を受けたマスクは、普段被っている帽子が落ち、口元を覆っているマスクも破れて素顔が露になっていた。
 彼の顔が、拠点に踏み込もうとしていたメイベルの目に留まった。
「似て、いますぅ」
 彼はメイベルが探している人物に、良く似ていた。
「メイベル危ない!」
 気を取られたメイベルに、敵の1人がナイフを突き刺してきた。
 セシリアが咄嗟に飛び出して、野球のバットで男の頭を殴りつけて、倒す。
「でやーっ!」
「帰りやがれ!」
 その後にも、少年達が次々に襲い掛かってくる。
 ナイフはメイベルの服を掠めただけだった。
「一旦下がりましょう」
 フィリッパが煙幕ファンデーションを使う。
「あ……っ」
 そして、写真の少年に良く似た人物に近づこうとしているメイベルを下がらせる。

「マスク、一旦退きますよー」
 神楽崎分校生に殴られ、斬られてぼろぼろ状態のマスクの腕を引き、ひなは戦線を離脱する。
 拠点の中に退くのではなく、裏側から敵の包囲網を突破して街へと逃げていく。
 包囲しているのは情報交換相手の黎明と舎弟だ。ひな達が阻まれることはなかった。
「ナリュキから連絡がありましたー。メモが飛んできたんですー」
 ひなは走りながらメモを取り出して、マスクに見せる。
 メモには、あのキマク拠点にはコリスの他に研究所の所長もいること、組織の本部が襲撃されたこと。制圧間近であることなどが書かれていた。
 それを見たマスクから力が消えていく。
 瞳に宿っていた強い意志も。
 拠点が見えない場所まで走り、ひなは大きく息をつく。
 本部が無くなっても、各地の拠点が全て滅びるわけではない。伝のある幹部のコリスか、研究所の所長が生き延びれば、その下に変わらずついていくことも考えられるが……どう見ても分が悪かった。
「功績を挙げる意味はなさそうですー。一度仕切りなおして、再起を図るですー」
 そう言うひなに、マスクは首を左右に振った。
「俺は……目的を失ったみたいだ。ひなには足を洗ってほしいと思うよ、ホント。キミ、明るくて可愛いし、こんな組織に関わらなくても刺激的で楽しい毎日が送れると思うんだ。キミが何を目的に組織にいるのか、俺にはやっぱりわからなかった。俺も言ってないし、ね。今までありがとう」
 ひなの手を振りほどき、力なく笑った後マスクはふらふらとどこかへ歩いていった。

 仲間に迷彩塗装を施し、拠点の偵察を行っていた青 野武(せい・やぶ)皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)の元に戻る。
「ここでは研究などな行われておらんようじゃ。部屋数の多い民家ってところじゃな。だが、防犯設備はそれなりに整っておるの」
 窓は曇りガラスとなっており、防弾加工もされているようだ。
 拠点周辺や覗き込めた範囲に罠などは仕掛けられていなかった。
 組織のメンバー達は荷物の梱包と積み込みを行っているようであり、どうやら飛空艇での逃亡を企てているようだった。
「つまり、時間稼ぎをしておるようじゃの」
「分かりました〜。手はず通り進めましょう〜」
 伽羅がそう答えると、野武は共に偵察を行っていた黒 金烏(こく・きんう)と共に、パートナー達の下に戻る。
 野武のパートナーシラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)は、拠点前に立っていた。……拠点護衛の立場で。
「さーて、そろそろここも攻められそうじゃの? ぬおわはははははははーっ!」
 野武の笑い声が合図となり、拠点の前、組織の下っ端達の後ろで護りについていた者達が一斉に、拠点に体を向けた。
「これより、神楽崎分校支援に移行する」
 そう声を発したのは、組織の一員であったサルヴァトーレ・リッジョ(さるう゛ぁとーれ・りっじょ)だった。
 即座にアシッドミストを放ち、自分達の仲間ではない――組織の下っ端達を攻撃する。
「さあ、ここからが本日の本当の仕事です」
 ヴィト・ブシェッタ(う゛ぃと・ぶしぇった)は弾幕援護で分校生を援護。更に、2人に従うパラ実生が組織の者に飛びついて、組み伏せ、動きを奪っていく。
「派手にいきますよー」
 言った途端、十八号がミサイルポッドを18発発射する。
「だんちゃーく、いま」
 キメラ、建物側の組織一員、そして拠点の一角に着弾する。
「ぐおおおおーっ!」
 シラノが鬨の声をあげ、忘却の槍と紋章の盾を構えて、戦意を失わなぬ者達に挑んでいく。
「ぬぉわははは、ぬおわははははー! 撃て、撃つのじゃー! 斬り込むのじゃ」
 野武はもっぱら指示を出している。
「行くぜ!」
 シラノ達と一緒にサルヴァトーレの配下として混ざっていたアクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)は、機関銃を撃ち鳴らして弾幕援護。
「こういう弾数をばら撒く戦法は好きじゃないんだけど……ま、仕方ないわね」
 パートナーのパオラ・ロッタ(ぱおら・ろった)もそう言いながら、アクィラ同様機関銃を撃ち鳴らす。
 本当は狙撃の方が好みなのだが、今回は突入する仲間を援護することが自分達の役目だ。
「パオラさんの分も狙撃頑張りますよぉ」
 クリスティーナ・カンパニーレ(くりすてぃーな・かんぱにーれ)は今回はチョコバルカンは使わずスナイパーライフルを持参し、敵を狙う。
「はわわわわわわわ」
 シラノに斬り込む敵に慌てながら、クリスティーナは銃を撃つ。しかし外してしまう。
「はわわわわわわわ!」
 気合を入れて、シャープシューターで狙いを定めて、敵の足を撃ち抜いて倒した。
「はわわ、撃ち取ったりぃ」
 クリスティーナは誇らしげに、にこっと笑った。
「ちょっと、それ、あたしのセリフ」
 不機嫌そうにパオラが言う。
「はわわわわわ。ごめんなさい〜。パオラさんの代わりに言いました〜」
 そしてまた、クリスティーナは味方に迫る敵を撃っていく。
「まったくもう……。とにかく私はガンガン撃ちまくるしかないわね」
 ため息をついて、パオラは弾幕援護をしていく。
「うわっ、すごい弾幕だ。T−35に肉迫攻撃するドイツ兵の気分だぜ」
 自分とパオラが張った弾幕に、アクィラが感激して声を上げる。
 支援を受けた分校生達が、接近戦で敵を抑えていく。
 建物の前は乱闘になっていた。
「キマク郊外でこんな戦闘やっちゃって、後で外交問題にならないかな?」
 組織拠点以外にも建物が並んでいる地域だ。野次馬もぞろぞろ集まっている。
「その辺は依頼元のヴァイシャリー家がうまくやってる……と思いたいわね」
 パワードレーザーで後方から、援護をしながらアカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)がアクィラの呟きにそう答える。
「そうだよなー」
 アクィラはそう信じて再び機関銃を撃ち始める。
「この上キマク家あたりから賞金つけられたんじゃ目も当てられないわ」
 アカリはため息をつきながら、分校生と戦う敵の肩を撃ち、倒す。
 ……キマク家は兎も角。教導団員が作戦に加わったなどと知られればパラ実が黙っていなそうではある。
「ともあれ、今のところ敵側はキメラ以外大したことなさそうね。統一された武具も装備していないようだし」
 アカリはパラ実の寄せ集め集団のような敵の様子に軽く疑問を覚える。
「ま、俺達は持ち場で全力を尽くすだけだけどな!」
 アクィラはそう言い、支援攻撃に徹していく。
 アカリも「そうね」と答え、銃を構えなおす。
「こちらの方が優勢のようですな」
 金烏は負傷している白百合団員の元に向かい、怪我の具合を診た後、ヒールをかけていく。
 白百合団員には事態が良く分かっていない者もいるようだ。
「自分達はとある別荘解体に協力したことを切欠に、神楽崎分校に協力している者です」
 金烏が簡単に説明をすると、直ぐに理解をし、白百合団員達は礼を述べてくる。
「ゆくぞ!」
「頑張ってください……あ、僕もですか、やっぱりそうですか」
 敵へと向うシラノに十八号はがしっと腕をつかまれ、共に敵の中へ飛び込んでいく。
「ええと、撃ちますよ?」
 十八号は銃で敵の足を撃ち体勢を崩した敵にシラノが剣を振り下ろし、戦闘不能に陥らせる。