First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
Next Last
リアクション
○第十七試合○
「次はちょっとおもしろそうなカード。東からは、セカイジュオオミミズの頑張れリリィ号!」
くどいようだが、このムシバトル公式ルールでは、昆虫でなくても、実行委員会の許可があれば出場することができる。明確に出場を禁止されているのは「人間および人間に見える生き物」「動物園がお似合いと思われる動物」「水族館によくいる水族」「ドラゴンなど、およそムシと表現することができない生き物」だ。
今大会でも、昆虫以外にクモ、カタツムリ、そしてこれから登場するミミズの出場が認められている。まあ、実行委員会としてもクモ、カタツムリ、ミミズあたりまでが出場許可の限界と考えているようだ。
にょろにょろにょろにょろ〜。
「はぁ。ミミズ……」
知らぬうちに、ミミズに名前の一部を提供していたリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)が、大きなため息をつきながら、頑張れリリィ号から少し距離をおいて、ついてくる。
「なんでそんなに離れてるのよ。ほら、かわいいじゃない」
対照的に、セコンドのマリィ・ファナ・ホームグロウ(まりぃ・ふぁなほーむぐろう)は、頑張れリリィ号をやさしくなでなでしている。
もちろん、頑張れリリィ号と名付けたのも、この大会にエントリーしたのもマリィであり、リリィは完全に巻き込まれた格好だ。
「西より、パラミタニジハンミョウのミョンミョン!」
今大会、ハンミョウでエントリーしてきたのは、このミョンミョンだけ。
唯一のハンミョウに、客席の注目が集まった。
ボディは美しい虹色で、森の木漏れ日できらきらと輝いている。
「ミョンミョン。私たちは勝つためにコンビを組み、勝つためにここに来たのよ」
バトルステージに向かうミョンミョンに語りかける、ブリーダーの天貴 彩羽(あまむち・あやは)。
周囲はお祭り的な雰囲気だが、ミョンミョンと彩羽の間に、そのような浮いた空気は感じられない。
「ミュンミュン〜ふぁいとぉ〜」
ミョンミョンをミュンミュンと呼び違えている、セコンドの天貴 彩華(あまむち・あやか)。
彩羽とは対照的に、ムシバトルの雰囲気を楽しんでいるようだ。
ちなみに……パラミタニジハンミョウは、エサとして昆虫やミミズを食べるのだが、特にセカイジュオオミミズは好物だそうだ。
もちろんこの大会では、相手のムシの命を奪うことは厳禁。説明不要かもしれないが、当然捕食禁止となっている。
とはいえ、この二匹の対戦になってしまうとは、他意なくバトルの対戦が決められたとはいえ、ムシバトルの神のいたずらを感じずにはいられない。
試合開始!
まずは双方、相手の出方をじっと見ている。
バトルステージの両端で、しばらくにらみ合いが続いた。
「行きなさい、ミョンミョン!」
まず動いたのはミョンミョン。
ぴょんっと飛んで頑張れリリィ号との距離を詰め、体当たりを繰り出す!
ドスッと頑張れリリィ号に攻撃を当てると、すぐさま後方に飛び退いて距離をとった。
「……んん?」
今の一撃はきれいに入ったし、効いたと思っていたミョンミョンサイドだが、意外にも頑張れリリィ号はびくともしていない。
「ミミズさん、ミミズさんなのに堅いですぅ〜」
彩華が手足をじたばたさせながら叫んだ。
ミミズのボディはやわらかそう……というイメージが強いが、実は頑張れリリィ号は相当丈夫だ。
「が……頑張れ! 負けてはいけませんわ。頑張って!」
リリィの声は、同じ名を持つ頑張れリリィ号に届いた。
もともと、世話をしてくれる人間に尽くすタイプの頑張れリリィ号。
ここはがんばらなくてはと、気力を充実させた!
「頑張れリリィ負けたら標本にするよ!」
マリィの叱咤が背中を押した。
にょろりとボディを伸ばすと、ミョンミョンに体ごと向かっていった!
もともと、手足やハサミ、触覚は持ってない。
武器は、その体なのだ!
「ミュンミュン、よけてぇ〜!」
ミョンミョンのセコンドが回避の指示を出す。
だが、回避の方向をうまく読んだ頑張れリリィ号の攻撃が、ドスッとミョンミョンの体にヒットした!
速さ特化型のミョンミョンに、その攻撃は大きなダメージとなった。
「あぁ〜ダメですぅ〜!」
彩華の悲鳴。
ミョンミョンは、ステージの真ん中あたりまで吹き飛ばされ、そのまま倒れた。
「ワン、ツー、スリー、フォー……」
レフェリー誠がカウントをとる。
「立ちなさい、あなたはそんな程度じゃないはずよ!」
彩羽の叫びに、ミョンミョンはなんとか立ち上がろうと体を震わせている。
だが……。
「テン! 勝者、頑張れリリィ号」
ミョンミョンは、テンカウント内に立ち上がることができなかった。
「ん〜、負けちゃったけど、よくがんばったねぇ」
彩華になでなでされて、ミョンミョンは気持ちよさそうにしている。
「ま、今年はこんなもんで勘弁しておくわ。次は優勝よ!」
バトルステージに向かって拳を突き上げる彩羽。再び、ここに戻ってくることを誓ったのだった。
○第十八試合○
「次の対戦! 皆さん、落ち着いて選手を迎えてね。では、東シャンバラチームより、パラミタオオゴキブリのマグネタイト9世、入場!」
会場から流れる、どんよりとした空気。
ゴキブリがあまり歓迎されないのは、仕方がないことだ。
「あれぇ? みんなもっと遠慮せずに、泣き叫んでもいいのに」
客席が意外と静かであることに、ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)は首をかしげた。
女子たちの切ない悲鳴が聞けると思っていたのだろう。
だが、先ほどもゴキブリが選手として登場したことから、客席は多少の免疫ができていたようだ。パニックが起こるようなことはない。
そして、その後ろからもう一匹のゴキブリ……ではなくゴキブリ風ゆる族のジュゲム・レフタルトシュタイン(じゅげむ・れふたるとしゅたいん)が、カサカサとついてくる。仲間に見えるジュゲムがセコンドについていることは、マグネタイト9世にとって大きな勇気になるに違いない。
「続いて西シャンバラチームより、パラミタオオカブトムシのガチタン!」
ずん、ずん。
相手に臆することなく、堂々と歩いてくるガチタン。
だが、ガチタンのセコンド陣は、少し引き気味だ。
「よりによって……相手がゴキブリ……」
ブリーダーの月谷 要(つきたに・かなめ)は、パワードスーツの内側で苦笑いした。男性でも、巨大ゴキブリを至近で見るというのは、あまり気持ちのいいことではない。
「ま、相手も一生懸命生きているんだし」
「そうよね。生き物同士……だよね」
セコンドの女性陣霧島 悠美香(きりしま・ゆみか)とマリー・エンデュエル(まりー・えんでゅえる)は、そんな会話でどうにか状況を納得しようと努力している。
試合開始!
相手の出方を見ようというガチタンに対し、じりじりっと近寄っていくマグネタイト9世。
そして、マグネタイト9世がガチタンの側まで来た時……会場の誰もが予想してなかった事が起きた。
ぱかっ。
……割れたのだ。
マグネタイト9世の体が、真っ二つに。
正確には、上半身と下半身の二つに分かれたのだ。きれいに切れている。
「ま、まだ何も攻撃してないよな……」
要がきょろきょろすると、周りの誰もがうなずいた。
「うふふっ。いいぞ〜」
マグネタイト9世が二つに割れたのは、作戦だ。
客席は何が起きたのか理解できず、しばらくの間しーんと静まりかえっていた。
かさっ。かさかさっ。
動き出した。マグネタイト9世が、動き出した。
……上半身と下半身、両方が、それぞれ動き出したのだ。
「そそそそそそそそそれはムリムリムリムリ!」
最初にパニックを起こしたのは、虫が苦手な静香校長だ。
「もう帰るーーーーーーーーーーー!」
泣きながら会場を走り去ってしまった静香。
数名のスタッフが、慌ててその後を追っていった。
バトルステージでは、相変わらず上半身と下半身となったマグネタイト9世が動いている。
実は、ゴキブリの脳は腹部にあり、本体は下半身。
上半身は、ブルタがサイコキネシスで動かしているのだ。
どちらを攻撃したらよいか相手が迷っている間に、本体で襲いかかる。これが作戦だったのだ。
ところが、この作戦が通用しない相手がいる。
それは……熱血タイプ。
「二匹になったのなら、二匹ともやっつければいい!」
要は、迷わなかった。
すぐさまガチタンを動かし、まずは近場にいた下半身の方を、角で場外へとはじき飛ばした!
五体満足でなくなったため、力や堅さ、速さが半減しているマグネタイト9世は、回避できるはずもなく、飛ばされるがまま、場外へ落ちた。
「もう片方っ!」
下半身が本体だったので、もう勝負は決したのだが、要は残る上半身もきっちりと場外に落とした。
「えーっと……勝者、ガチタン」
レフェリー誠も一瞬迷ったのだが、上半身と下半身、両方が落ちているのなら、どう考えてもガチタンの勝ちだ。
「あの……ちなみにそれ、助かるんですかね?」
誠はおそるおそる、ブルタとジュゲムに問いかけた。
「あ、すぐくっつければ大丈夫」
と、比較的軽めの返答が返ってきた。
だが、診察してみたところ、この上半身と下半身をくっつけるにはけっこうな回復スキルが必要で、結局エリザベートら、校長クラスの人々が駆り出されたのである。
「次回ムシバトルのルールブックに、切れるの禁止と書き加えますわぁ」
エリザベートは半ギレで、そうつぶやいたという。
○第十九試合○
「予選もいよいよ大詰め! 東からは、パラミタオオカブトムシの阿蘇!」
おおっと客席から声が上がる。
阿蘇は、パラミタオオカブトムシの中でも、特に立派な角を持っている。
「オー〜阿蘇〜♪ 阿蘇〜阿蘇〜阿蘇〜♪」
阿蘇のテーマを歌いながら、ブリーダーの赤城 花音(あかぎ・かのん)が阿蘇を先導する。
そしてその後ろから、セコンドのリュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)が、対照的に物静かに入場してきた。
ひたすら阿蘇を盛り上げようとしている花音と、阿蘇の体調や周辺の様子に警戒を怠らないリュート。良いコンビネーションができあがっているようだ。
「西から、シャンバラオニヤンマのミスターヨシダ!」
客席のちびっこが「わー、とんぼー」と喜んでいる。
トンボの中でも最大級のサイズといわれているオニヤンマ。巨大虫の世界においても、トンボの中ではオニヤンマが最も大きくて迫力がある。
「さあ、いってらっしゃい」
「しっかりね」
イレイン・ハースト(いれいん・はーすと)と近衛 涼子(このえ・りょうこ)に見送られて、バトルステージへと元気に上がっていった。
試合開始!
慎重に相手を見ようとしていたミスターヨシダに、阿蘇は挨拶代わりの一撃を出していった。
「ミスターヨシダ!」
自分の方が素早さで勝っているとたかをくくっていたミスターヨシダは、最初の一撃に対する反応が遅れた。
イレインからのサイコキネシスによる支援があったため、ぎりぎりで攻撃を避けることができた。
ぶんっ!
阿蘇の攻撃が空を切っただけで、ものすごい風圧が起こる。そのパワーはハンパない!
早期に決着をつけるべきと、今度はミスターヨシダが攻撃に転じる。
一度空中に飛び上がり、勢いをつけてからの体当たりだ!
「おおっと!」
今度は阿蘇サイドが、女王の加護を用いて阿蘇を支援した。
双方とも、ダメージを受けないように体力を温存する作戦に出たようだ。
攻撃を回避した阿蘇は、体当たりにより体勢を崩したミスターヨシダに、自慢の角を突き出した!
「阿蘇! チャチャチャ」
リュートの応援に力が入る。
阿蘇が突き出した角は、ミスターヨシダに見事命中した!
それほど堅さに自信がなかったミスターヨシダは、パワーのある阿蘇の一撃でごっそりと体力を持って行かれた。
意識があったので場外に落ちることは防いだが、ステージの中央でもはやフラフラだ。
それでもあきらめないミスターヨシダは、数発の攻撃を繰り出す。阿蘇に命中した攻撃もあるが、いずれも致命傷には至らない。
阿蘇も、相手の攻撃の合間を見計らって手を出す。
最後に放った一撃がミスターヨシダの体をかすった!
すでに体力がほとんど残っていなかったミスターヨシダにとって、そのかすった一撃がまさに致命傷だった。
「ミスターヨシダー! ミスターヨシダーっ!」
セコンドが声の限りに名前を呼ぶが、ミスターヨシダはもう立ち上がることができなかった。
「勝者、阿蘇!」
体力を使い尽くし、自力での退場が難しいミスターヨシダは、大会実行委員会の巨大ミツバチたちによって、救護所に運ばれていった。
「あんな風になるまで、がんばってくれたんだね」
「今度は、もう少しムリをさせないようにしきゃならならいよね」
そんなミスターヨシダの姿を見て、セコンドだったイレインと涼子は反省した。
ただただ攻撃の作戦を立てるだけでなく、救命について、引き際についても、あらかじめ愛虫のために決めておくことが、虫ブリーダーにとって大切なことなのだ。
それを学んだ二人だった。
○第二十試合○
「長かった予選もあと二試合! 東シャンバラチームより、イルミンアンバーダンゴムシのコハク!」
ダンゴムシにも様々な種類があるが、このコハクは、その名の通りきれいな琥珀色をしている。
アクセサリーみたーい……と、客席の女子からの人気は上々だ。
「ああもう、早く終わらせてよね……」
うつむいて縮こまり、足をずるずる引きずって入場してくるのは、コハクのブリーダー師王 アスカ(しおう・あすか)。虫嫌いである。
そんなアスカの背中をルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)が押して歩かせる。
「ほらほら。コハクはまだ子供なのだから、アスカがしっかりしていないと不安がらせてしまうだろう」
それでもアスカは、なかなか前を向くことができないでいた。
「西からは、葦原オニヤンマの疾風ー!」
本日二匹目の、葦原出身の虫が登場だ。
他のオニヤンマと同様、トンボの中では最大級の大きさを誇る。
「疾風! 後ろは見ずに前だけ見て行ってこい!」
御剣 紫音(みつるぎ・しおん)が、疾風をステージに送り出す。
「まけないで、疾風」
「疾風、わらわがついておるのじゃ」
セコンドの綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)とアルス・ノトリア(あるす・のとりあ)も、疾風を不安にさせないように、絶えず声を届けている。
試合開始!
……と同時に、二匹とも相手に向かって突っ込んでいった。
「ヒットアンドアウェイだ!」
「ヒットアンドアウェイで!」
両方の陣営から、同じ単語が聞こえてくる。
ヒットアンドアウェイ。つまり、素早さを生かして、相手に一撃を加えた後、反撃を避けるためにすぐ距離を置いて、深追いをしない戦い方のこと。
どちらも、立案した作戦は同じだったようだ。
となれば成功率は、虫が持っている素早さに依存する。
この作戦は、足を使ってのフットワークが常に必要なので、素早い虫向きといえるだろう。
速さで勝るのは……。
「よしっ、いいぞ疾風!」
疾風だ!
疾風は作戦通り、コハクに一撃を加えると、素早く離れた。
それを何度か繰り返す。
「コハク、まだ大丈夫ね?」
コハクには堅さがある。まだ動けるようだ。
「頑張ってくれ、コハク!」
ルーツが身を乗り出してコハクに声を届ける。
コハクは反撃に転じるため、ぐるりと丸まり、相手に向かって転がっていった!
ダンゴムシ特有のスタイルの体当たりだ!
「当たったら痛そう!」
「疾風、回避!」
疾風のセコンドからは回避の指示。
その通りに疾風は回避の行動に出た。
突進するコハクと、上に飛び退く疾風。
わずかに疾風のタイミングのほうが速く、ぎりぎりで回避することができた。
「そしたらまたヒットアンドアウェイ!」
確実に、少しずつ、コハクの体力を削っていく。
そして、勝負は決した。
ころん……。
最後は、疲れたコハクが、ステージ中央で丸まって、動かなくなってしまった。
「勝者、疾風!」
負けてしまったものの、ステージで光を浴びながら丸まっているコハクは、とても美しい宝石に見えたという。
「コハク、よくやった」
ルーツがやさしくねぎらうと、コハクはようやく顔を出した。
「……ん、まあ、その、よかったと思うよ……」
虫嫌いだったアスカも、コハクのがんばりを称えないわけにはいかなかった。
大好きなアスカに褒められて喜んだコハクがすり寄ってきたため、次の瞬間アスカは悲鳴を上げて逃げてしまったのだけど。
○第二十一試合○
「このブロックの予選は、この試合でラスト! 東シャンバラより、シャンバラダンゴムシのアル!」
ここイルミンスールの森ではよく見かける、オーソドックスなダンゴムシだ。
だが、だからこそ、バトル仕様に体ができあがっているのが、素人目から見てもよく分かる。
「一緒にがんばろうね、アル君」
須藤 雷華(すとう・らいか)は、愛虫への声かけを忘れない。虫は返事ができないが、声は確実に届いているのだ。
「なかなかおもしろい催しだ」
ここまでの試合を観戦していた北久慈 啓(きたくじ・けい)も、数々の虫たちのバトルに心を揺り動かされ、今は胸の内が熱く燃えているようだ。
「西! パラミタキリギリスのロベルト、出てこいや!」
ぴょんぴょんぴょん。
まるで踊っているかのようなステップを踏みながら入場してきたロベルト。童話の通り、楽器でも持たせたら演奏できてしまいそうに見える。
そんなロベルトを、セコンドのコンスタンシア・ファルネーゼ(こんすたんしあ・ふぁるねーぜ)は、対照的に、静かに見守っていた。
「頑張ってきなさい」
コンスタンシアは、ロベルトをアリスキッスでステージに送り出した。
試合開始!
アリスキッス効果で元気なロベルトがまず先制攻撃!
飛び上がり、上から相手を踏みつける作戦だ。
アルは上空からの攻撃を、丸まってこらえた。
かまわずロベルトは、数発の連続攻撃を浴びせ、呼吸を整えるために少し離れたところに着地した。
「今だ」
そのタイミングを、啓は待っていた。
カコーーーン!
まるでビリヤードのような音が響く。
啓が放った遠当ては、愛虫アルをまるでビリヤードのようにはじき飛ばした。
ごろごろごろごろ。
まっすぐ、ロベルトのほうに転がっていく。
このままいけばブレイクだ!
「回避!」
急いで、ロベルトに回避の指示を出すが、間に合わない。
ごんっ。
多くの人が想像していたのと少し違う音が響き、アルがロベルトに命中した!
だが、途中まで回避の行動をとっていたアルは、吹き飛ばされることなくその場にとどまった。
そして、まだ丸まったままのアルに、キック一発!
ごろごろごろごろ。
アルはそのまま転がり続け……。
ガコン。
……場外にポケットした。
「場外! 勝者、ロベルト!」
「ああ、アル君……大丈夫?」
球のように丸まって戻らないアルに声をかけ、緊張をほぐし、どうにか顔を出させた。
「次はジャンプショットなどの技も磨いておかなければ」
むうっと顎に手を当て、考え込む啓。
敗因はビリヤードの技術だったのだろうか。
このメンバーの、次回の戦いに期待したいところだ。
これで、全ての予選が終了した!
このブロックだけでなく、少し離れた会場で行われていた別の予選も終了し、次のステージへと進むことができる虫が決定した。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
Next Last