リアクション
第四章 ようやく準備の整った空路第二陣。多くの積荷を載せ、シャンバラ教導団本校から、クィクモへ向かう。 出発の朝。 「第一陣に出遅れるとかマジありえねーしもー…… 何で点呼の日の朝起こしてくんねーんだよエル!! せっかくの団長からの指令なのに……」 第一陣に入る予定だったのだが、このような理由で、第二陣となったらしい。 教導団のヤンデレ(【ヤンキーデレデレ略してヤンデレ】)土御門 雲雀(つちみかど・ひばり)であった。 「俺はちゃんとあの日雲雀に連絡したんだけど? ま、遊びの旅じゃないんだから、眠い頭で駆け込むよりは今回の方が良かったんじゃない」 そう言うのは、雲雀の守護天使であり悪友でもあるエルザルド・マーマン(えるざるど・まーまん)。 「……遅れた分は絶っっ対取り返す!」 かなり、気合が入っている。 「ふむ。…………コワイな」 「えっ。あ゛あ゛ロンデハイネ中佐! で、でありますかっ!」 空路第二陣を率いる第四師団のロンデハイネ中佐。 「先ほどのは……えーと(見られていなかったかな?)」 「ふむ。…………気合が入っているようであるな」 「は、ははは……一生懸命任務を遂行しますので、よ、よろしくお願いしますです!」 「ふむ。団長が直々にお選びになった人材と聞いておる。こちらこそよろしく頼む」 「(えっ、そうなの?!)」 「エルザルド殿も、土御門候補生をよろしく頼む」 「ええお任せを」 「(何となく問題児扱いになってない、あたし……?)」 「それから、もう一人、彼も空路任務に就く候補生だ」 ロンデハイネの少し後ろに控えている、精悍な眼差しの青年士官候補生。 湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)だ。 航空科の候補生であり空路の任務に抜擢された。 「よろしくお願いします!」 びしっと敬礼しあう。初めての師団での遠征になる。緊張を胸に、そして、飛空艇は飛び立った…… 「この船超かっけー空飛んでる!!」 「や、そりゃ空路なんだからあたりまえなんだけど」 雲雀とエルザルドである。 甲板をあっちに行ったりこっちに行ったりで、はしゃぎまわる雲雀。 「まるで遠足の子どもみたいだよ」 「うわー。どう動いてんのかよくわかんねーけどとにかくす、ご……」 雲雀は、はっとした。……み、見られてないでありますよね。上官の方とかおられませんですよね?! 「あ゛あ゛ロンデハイネ中佐!」 「ふむ。土御門候補生。空の旅はどうかな?」 「え、はい! 楽し……すみません、異常なしであります! しかし、中佐なぜこんな甲板に……」 「……ふむ。私は実は空は初めてでな。落ちつかなくてなあ。そもそも、船も慣れておらぬ。ずっと陸の方だったので。 湊川候補生はどうかな?」 「はっ」中佐に付き従っていた湊川。 「俺は、イコンパイロットもいいかなと思っております」 「ほう。それは期待が持てるな。イコンか。今回、戦争が激化すれば、導入することがあるのか。そうなれば私のような古い考えの軍人は出る幕ではないかもしれぬな」 ロンデハイネは甲板の縁に移動し、行く先コンロンの方を見る。 湊川も続き、雲雀とエルザルドも縁に移動する。 「中佐」雲雀は話しかける。 「ふむ」 「第一陣の方々からの情報は……雲賊や魔物が出没するというお話は聞いていたのですけれども、どんな相手なのかできるだけ詳しく知りたいのであります。自分は戦力としては強くありませんけれども、敵を知ることができれば何かお役に立てると思うのであります」 「雲海にはとめどなく魔物があふれ出しており、襲撃も十分に予想される」 ごく、と雲雀は唾を飲みこみ、湊川もそれを聞いて身を引きしめる。 「しかし、クィクモの港付近は我々が到着するまでに魔物の排除が行われる。 タシガンを抜けてクィクモに到着までの雲海が問題であろうな。第一陣もそこで相当の被害を受けている。 だが、タシガンで補給を受けられるし、雲海においても、陥落させた賊の砦にクレーメック少尉が兵を駐屯されるという」 「クレーメック少尉が」 「だから、襲撃が予想される範囲は第一陣のときより狭くなる。被害は抑えられるだろう」 第一陣にはそれでも名だたる将校らが乗っていた。 第二陣は物資が中心で、名のある士官候補生が雲雀と湊川のみである。 「貴官らの頑張りに期待いたすぞ」 |
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