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【帝国を継ぐ者】追う者と追われる者 第三話

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【帝国を継ぐ者】追う者と追われる者 第三話
【帝国を継ぐ者】追う者と追われる者 第三話 【帝国を継ぐ者】追う者と追われる者 第三話

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epilogo ・

 
エピローグ・セルウス

「契約? 何それ」
 ドミトリエから詳細を聞いたセルウスは、ぽかんと訊き返した。

 キリアナとミツエの会話を殆ど聞かずにその場を逃げ出したセルウスは、今回の騒動の柱となり、多くの者を巻き込んだ最大の理由を、全く解っていなかった。
 ミツエに会った時に、あたしと契約しなさい! と高らかに宣言されたはずだが、さっさと逃げ出し、更にその後の混乱で、そんなことは、すっかり頭から抜け落ちていたのだった。
 ドミトリエは、大きな溜め息を、ひとつ。
「まあ、いい。
 だが、今後契約を持ちかけられても、不用意に乗るなよ。
 くれぐれも、食べ物に釣られて知らない奴と契約したりするな」
 釘を刺さずにはいられない。
「解ってるって。そんな神経質にならなくても、俺だって馬鹿じゃないのに」
「それはそれは」
 白い目のドミトリエに、セルウスは近くを歩く小鳥遊美羽に訴えた。
「美羽! ドミトリエが何か酷い!」
「よしよし」
「元気出して。ドーナツ食べる?」
 コハクが笑って荷物から小さな袋を取り出す。
「うん!」
「私と契約してくれたらあげる」
 冗談を言った美羽に、セルウスは考え込んで、ドミトリエを見た。
「知ってる人ならいいのかな」
「やっぱり馬鹿だろう」


 そうそう、忘れてた、と、南臣光一郎が、荷物から何かを取り出す。
「ドミトリエ、これこれ」
「?」
「ドミトリエってカンテミール地方出身だっけな。
 これは、超貴重プレミア間違い無しの、カンテミールの部品だぜっ!」
 彼が見せたのは、かつて、エリュシオンのカンテミール地方選帝神だった、テレングト・カンテミールの体の一部だった物だった。
 ちょっとした嫌がらせのつもりだったのだが、出身はカンテミールでも、ドワーフの里で育てられたドミトリエの反応は薄い。
 へえ、と言って、とりあえず渡されたそれを受け取る。
 その瞬間。
 その部品が、カッ、と閃光を放ち、周囲の者達は咄嗟に身構えた。
「……?」
 一瞬の閃光の後、すぐに光は治まり、それ以外の何の効果もなく、部品はドミトリエの手のひらの上に転がっている。
「……びっくりしたー。
 光一郎、それどんな仕掛け?」
 セルウスが面白がって、ドミトリエから部品を預かる。
 しかし、そこには、光る仕掛けなど何もなく、光一郎は部品に細工などしていなかった。
 他の者が持っても何事もなく、光ったのは、最初の一度だけだ。
 ドミトリエは、じっと部品を見つめ、それを光一郎に返した。



エピローグ・キリアナ

 エリュシオン、首都ユグドラシル。
 キリアナは、一旦単身で故国へ戻り、第三龍騎士団団長、アーグラに面会していた。

「未だ任務を果たせず、途中で戻ってきてすみません」
「手を焼くようか?」
「失態続きで、お恥ずかしいです」
 ふ、とアーグラは目元を緩める。
「お前がこの任務を仕損じるとは思っていないがな。
 お前はまだ若いのだから、失態も失敗も、数多経験していくといい。
 最後に勝利すれば、それでいいい。
 それよりも、戻って来たということは、何か報告があるのだろう」
「はい。
 実は、捕獲対象の少年のことなんですが……」
 キリアナは、これまでのことを、かいつまんで説明した後、自分が抱いていた推論を述べる。
「……成程、彼の資質、か。
 それで、キリアナ。お前はどうしたい?」
「任務は遂行します」
 アーグラの問いに、キリアナは答えた。
「ですけど、もしもあの子の資質が本物なら、と、少し思っています。
 もしもあの子が、全ての困難を退けて、その宿命を掴み取れるくらいの強さを持っているのなら……」
 成程、とアーグラは頷く。
「報告は聞いておく。ご苦労だった」
「もしも、この件で団長が困るようでしたら」
「そんな心配は不要だ」
 キリアナの言葉を、アーグラは遮った。
「まだ何も決定していないし、もしその子が本物ならば、貴族の下らぬ自尊心など、秤に掛けるまでもない」
 それよりも、と、アーグラは不思議そうに、キリアナの腰を見た。
「それは、何だ?」
 キリアナのベルトには、骸骨型キーホルダーが揺れている。
「……もしもお前が自身の生い立ちを卑下しているのなら、それも不要だ。
 お前も本物のスパルトイにも認められている。それに、我がエリュシオン帝国の誇り高き龍騎士だ」
「そんなんやないです。
 これは、シャンバラの人に貰いまして。
 楽しかったので、記念みたいなもので」
 キリアナの笑みを見て、心配は杞憂だと思ったアーグラは頷いた。



エピローグ・ミツエ

 セルウスを逃がしたことを、ミツエはひとしきり怒ったが、
「仕方ないわね!
 まあ、乙王朝拡大のチャンスは他にあるからいいわ」
とすっぱり気持ちを切り替えた。
 ぱた、と、孫権が見ていた携帯を閉じる。
 美羽からのメールが何通か入っていたが、彼は最後の一通だけを見た。
 そこには、美羽達がセルウス達と無事に合流し、サルヴィン川からコンロンへ向かうことが書かれてある。
 返事をしようかと思ったがやめた。
 頑張れよ、とか言わなくても、彼等は頑張るだろう。

「……なあ、ミツエ」
 何よ、とミツエは振り返る。
「俺は、契約したからには、おまえとうまくやって行きたいと思ってるんだぜ。
 おまえのことも、まあ、妹みたいにも思ってるし……多分」
「何よそれ。あなたまだ、あたしが疑ってると思ってんの?」
 孫権は苦笑する。やましいことが無くもないだけに、返す言葉もない。
 どうやら劉備曹操は自分の動きに気付いていたようで、その上で、素知らぬ顔で己の任務を遂行していたのだから尚更だった。
 彼等のように、ミツエを孫ではなく妹のように思ってしまうところが、一歩遅れている理由なのかなあ、などとも思う。
「心配しなくても、」
 ミツエは言い掛けて、やめた。
「? 何だ?」
「やめた。ツンデレみたいで我ながら寒くなったわ」
「何だよ」
 苦笑するが、聞かないでおく。
 とりあえず、待機パートナーの脅威は去った。
「……待機パートナーよりも、ミツエの無理無茶無謀に付き合う方がいい、か。俺もよっぽどだよなー」
「さあ、王朝に帰るわよ! 次の策を練らないと!」
 ミツエが身を翻す。
「……奇策はほどほどにな……」
 後に続きながら、孫権はふと、サルヴィン川の上流の方を見やり、少し笑って、視線をミツエに戻した。




 ちなみに、その後酒杜美由子の宣伝DVDを観たミツエは、それをプレイヤーごと叩き壊したという。
 
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

九道雷

▼マスターコメント

 
 大変お待たせいたしました。
 「追う者と追われる者 第三話」リアクションをお送りいたします。

 ここで、一旦一区切りです。
 皆様お疲れ様でした。
 次回第二部、追う者と追われる者Z 第一話をお楽しみに!

 (冗談です)