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【アナザー北米戦役最終回】 決戦! 黒い大樹!!

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【アナザー北米戦役最終回】 決戦! 黒い大樹!!

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02 接触

 
 戦闘開始前、ルカルカはグレースに【潜在開放】をかけ、かつ【神宝『布留御魂』】を手渡しておいた。
 そしてダリルは【蒼き涙の秘石】をグレースに渡す。
 更にルカルカの【ジャイアントキリング】やかつて別の地域で戦った大樹との共通点を洗い出すことによって、ダリルは味方に攻略ポイントを知らせる準備をしていた。
 そして【電脳支配】でラグナロクと一体化したダリルは、これで艦内の全てを把握することが可能になったのである。
 
 そして始まった作戦は、まずは現実世界における既存兵器群との戦闘から始まった。
 移動に時間を費やしたせいもあって時刻はすでに19路を過ぎ、日も沈もうとしていた。
 まずはルカルカが米軍に支援要請を行っていた高高度爆撃が開戦の合図となった。

 戦闘機や爆撃機の中にはイコン以上の高度――成層圏ギリギリまで上昇できる機体も少なくない。そんな高高度を飛行可能な爆撃機に戦闘機の護衛を伴って、米軍はシェパード空軍基地の防空圏に侵入していた。
「――ハイナ!」
「よござんす!」
 そして、ハイナのGOサインで爆撃が開始される。
『――ブラボーよりラグナロク。庭の掃除は終わった。繰り返す、庭の掃除は終わった』
「ご苦労さまです。迎撃部隊接近の前に後退願います。ダリル、イコンに発艦の合図を」
 そして、イコンが次々とラグナロクやウィスタリアから発艦して行くのだった。
 ウィスタリアのイコンデッキにて、一人の男が意味ありげな笑いを漏らしていた。
「ククク、ついにプロトタイプが完成したぞ! 我ら秘密結社オリュンポスの最強兵器のな!」
 その男はドクター・ハデス(どくたー・はです)といい、ハデスが立っているのは新イコン「グレートエクスカリバーン」の前だ。
 ハデスのマイスターとしての【チューニング】の技能を用いて従来のエクスカリバーンの神剣形態に追加強化装甲を装着し、Lサイズの人型形態のイコンに強化改造したものが、この{ICN0005118#グレートエクスカリバーン}
だ。ただし、まだプロトタイプのため、外見はまだハデスの満足のいく出来ではなかった。
「さて、それでは、グレートエクスカリバーンの試運転として、ダエーヴァの黒い大樹破壊作戦に参加するとしようか! ……と思ったが、大樹に攻撃できるようになるまでは待機だな」
 ハデスは聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)とともにコクピットに乗り込みつつ、出番が来るまでの間にと各種計器のチェックを始めるのだった。

 大樹までの道標となる戦いの中でも特に目立った活躍をしたのはまずはリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)とそのパートナーたちだった。
 コープスたちも意外と原始的な弱点があることがこれまでの戦いで判明してきたため、リカインは【夢想の宴】でダエーヴァの兵器であるところのコープスやレッド・キャップ、各種ギガースなどの幻影を生み出してダエーヴァの群れに解き放った。
 前回の戦闘でダエーヴァがこれらの幻影で出来た標的に対しても攻撃を仕掛けていたことから考えて、もし彼ら自身の姿を幻影で作ってみたらどうなるのか……そんな興味があったことはリカイン自身も否定出来ない。
 そして、その試みは一定の効果をあげていた。まず、コープスでないダエーヴァは確実に混乱していた。
 一方のコープス系統のダエーヴァは視覚センサーだけではなく赤外線センサーも併用することで幻影と実態を見分けることには成功していたが、その成果を他のダエーヴァと共有できないためにかえって混乱がもたらされていたのだ。
 そしてパートナーであるシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)もこれまでの戦いで学習したこともあって【ミラージュ】で身を守りつつ、周囲のギガースに向かって攻撃を繰り広げていた。
「たしかに、真正面からガチンコで殴り合ったら厳しいかもしれないけど……」
 フィスはそう言いながら背後をとったギガースの首筋に22式レーザーブレードを突き立てておもいっきり引きぬく。
 どう、という音とともにギガースは倒れ、フィスは次の相手を探して視界を巡らせる。
「後ろからやればいいんだよね!」
 そして、定めたのはイコンと戦って気を奪われている一体のギガースだ。フィスはそのギガースに接近すると、今度は人間ならばアキレス腱に相当するところを切り裂いてみせる。するとそのギガースは急に足の力を失ってその場に倒れこんだ。そして、その隙を狙って味方のイコンは強力な一撃をギガースに叩き込んだのだった。
 リカインのパートナーであるヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)がリバイバル・ストライプの本部に提供した各種情報機器を用いながら戦場のデータを収集し、米軍に提供していた。
「我々がいなくなったあとも、あなた方は戦い続けるわけですからね……」
 サングラスの奥に笑顔を作りながら、ヴィゼントは米軍の兵士にそう述べた。
「確かに、な。欲を言えばあんたらの技術をコピーできればいいんだが……」
 ヴィゼントはその兵士の言葉に頷きつつ、次々と情報を処理していくのだった。
 
「こちらネフィリム三姉妹! コープスたちはこちらで出鼻をくじきます。切り込む仲間への援護、お願いします」
 そんな通信を米軍に飛ばすのは湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)だ。それに対して、米軍からはこんな返事が帰ってくる。
「おお! 我らのアイドルのご登場か!! よし、景気良くやってくれ!」
「了解!」
 そして凶司はネフィリム三姉妹に指示を飛ばす。
「派手にやっていい……いやド派手にやってやれ! 大人のヒーローショーみたいなもんだ!」
「もう…どうなっても知らないからなァーッ!」
 凶司の言葉にそんなふうに返しながら支援機からカタパルトで飛び出したのは、青いスーツを着た末っ子のエクス・ネフィリム(えくす・ねふぃりむ)だった。
 射出の勢いと高速機動を併用して敵の群れに突撃すると、PS用カタナを用いてヘリコープスを斬りつける。ローターが破壊されたヘリコープスは錐揉みをしながら墜落する。そしてエクスはそのまま重力に引かれつつゆっくりと降下をしていくのだった。
「下は頼んだわよ、エクス!」
 そんな言葉を発するのは緑のスーツを着た次女のディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)だ。
 地上を妹に任せ、自分は上空の敵をランスで持って相手をする。
 ヘリや戦闘機コープスの機銃掃射を華麗な空中機動で回避しつつ、ディーミアは戦闘機コープスにランスを突き立ててエンジンを貫く。戦闘機コープスのコクピット部分に蹴りを入れながらランスを引き抜いてそのまま距離を取ると、次の瞬間には戦闘機コープスは爆発して墜落していく。
「さぁて、どんなものかしらん?」
 そして長女で赤いスーツのセラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)は前線で戦う二人の妹の様子を見守りながらレーザーライフルで適宜妹達の支援をしていく。
「さあ、行きなさぁい!」
 姉の支援を受け、二人の妹はダエーヴァの兵器を次々と破壊していく。
「頃合いかな……機晶解放! さあ、もっと大暴れをするんだ!!」
『了解!』
 機晶石の力を開放された三姉妹は、それほどまでよりも更に激しく、苛烈な攻撃を繰り広げ始めるのだった。
 そして、そんな激戦の隙間を縫うように飛行し、後方へと進む飛空艇の一団がいた。
 小型飛空艇アラウダを操る天城 一輝(あまぎ・いっき)とそのパートナーで小型飛空艇アルバトロスを操るローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)とそれに同乗するコレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)の一行だった。
 一輝たちはユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)を地上を行く部隊に同行させつつも自分たちは2つの飛空艇で偵察に赴こうとしていた。
 一輝は迷彩塗装とテイクカバーで対策を施しつつ、従者であるローザのアルバトロスをイージス艦とした場合の搭載ヘリコプターのような役割で、自身のアラウダを動かし、地上の戦況を逐一報告していた。
 一輝がこのような行動をするのも、コレットの御託宣があったからだ。曰く
「オヤブン、御託宣があったけど、『もしこの黒い大樹を破壊できれば、ダエーヴァの生産能力を停止することができるため、一時的にせよ人類側は息をつくことができるでしょう』だそうだよ」
 ということである。
 そのため、2つの飛空艇が収集する情報をプッロは総合的に判断しながら、ラグナロクの館内にいるハイナへと上げていくのであった。

 一方でサイコダイブであるがアボリジニのシャーマンや日本の陰陽師などという伝統的民族的な呪術師とともにグレースの精神世界へ飛び込んだ契約者はそれほど多くなかった。
 まずは水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)とそのパートナーのマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)
 それからセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
 サルヴァまでの道筋を開くためにと精神世界に飛び込んだのはこの二組だけだった。
 もちろん他にも居るのだが、そちらは直接サルヴァの精神体にダメージを与えるべく戦力を温存しており、この二組を軸に呪術師たちの戦いが始まったのである。
 
 ゆかりは【戦況把握】で免疫機構の戦力や戦術を把握しつつ、防衛計画でそれらに対応できるように、戦いながら体勢を整えていく。
 そしてわかったことは先遣球によるマーキングがなければ敵の攻撃が発動しないため、まずはそれらを駆除することが先決ということだった。
 ゆかりはマリエッタの【超人的精神】と【フォースフィールド】によって守ってもらいながら、【エイミング】と【ロックオン】を併用して先遣球を確実に潰していく。
 そうすると残りの免疫機構は呪術師たちでもなんとか相手が務まるくらいには弱体化するのだ。
「カーリー、気をしっかり持って! ここでは、精神的な強さがそのまま力になるみたいですから」
「わかったわマリー。このまま押し切ります!」
 そして、二人は息のあった攻撃で免疫機構の防衛網を突破していく。
「なかなか厳しいわね、この状況」
 そう言いながらも冷静に免疫機構に対して銃撃を行っているのはセレンフィリティで、パートナーにして恋人であるのセレアナと背中合わせになって互いを守り合いながら、【ディメンションサイト】で周囲の空間を把握、【ゴットスピード】【メンタルアサルト】で免疫機構を撹乱していた。
「とはいえ、こちらには【女王の加護】や【フォースフィールド】もあるわ。厳しいけれど、決して絶望的ではない。むしろ、希望がはっきりと見えるわ」
 そう言いながらセレアナは【真空波】を免疫機構に向かって放つ。
 その衝撃を受けて切り裂かれる猟兵球。
「とはいえ、もう少し何とかしないと……ね」
 そんな契約者たちとともに、精神体となったグレースが灰色の空間を飛翔する。
 二丁の拳銃で周囲の歩兵球を次々と撃ち落としつつ騎兵球の攻撃をくぐり抜けて肉薄……二本の小剣に持ち替えるとそれを猟兵級に突き刺して切り裂く。
 そんな風にして精神世界での戦いは進んでいったのだった。