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●第3章 ジャイアント・アントの巣へ潜れ

 一方、巣穴に向かった学生たちはというと――。

 入り口とその周辺にて、イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が酸の霧を発生させていた。
 パートナーのアルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)は、イーオンへとジャイアント・アントが近付かないよう、カルスノウトを構えて立ち塞がっている。
 酸の霧は入り口付近を守るジャイアント・アントたちの関節など弱い部分を溶かし、身動きを制限させた。
「これは使えるであろう」
 イーオンは1つ頷くと、発生させていた霧を消し、アルゲオと共に、巣穴の中へと入って、他の学生たちの後を追った。



「EDFの勇猛さを見せる時だぁ〜!」
 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)の上げる声に、学生たちの掛け声が重なる。
「EDF! EDF!」
 譲葉 大和(ゆずりは・やまと)の作った【EDF】隊歌を皆で合唱しながら、巣穴を突き進んでいた。
「イーディーエーフッ!! イーディーエーフッ!!」
 少し音痴なベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)が歌うと、他の皆とやや音程がずれている。
「E・D・F……」
 男くさい軍隊的なノリについていけないレロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)は、それでも溶け込むために小さく呟くように歌う。
 皆が声を揃えて歌うということは必然と、その声は巣穴全体に広がるもので、ジャイアント・アントの方から学生たちへと向かってきてくれることもあった。
 それを退治しながら、巣穴を突き進んでいく【EDF】。
 そして、その脇を抜けるように、ジャイアント・アントクイーンを狙う学生たちが奥へと向かっていっていた。

 ジャイアント・アントが襲ってこない間、学生同士、パートナー同士で他愛もない会話を交わすこともあれば、椿 薫(つばき・かおる)のようにダンジョン気分で灯りに松明を用いて突き進んでいく者も居る。
 隊列の最前線を歩くベアとマナもジャイアント・アントの吐き出す酸について話していた。
「蟻酸なんって怖くないぜ! 俺は毎日『弱酸性ボディーソープ』で体を磨き鍛えたんだぜ?」
「冗談にしては笑えるよ〜」
 ベアの言葉に、彼のパートナーのマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)が笑いながら言った。
「いや本当に毎日頑張って磨き上げたんだぜ?」
「……お前はアホかー!!」
 まだ言い続けるベアに、マナはボディーソープで身体を洗ったところで蟻酸とは違うのだと言おうとしたところで、その彼に言葉をさえぎられた。
「待て……何か足音が……あれは……!」
 耳を済ませながら曲がり角の先をこそっと覗く。
「アリだー!」
 ベアとマナは、曲がり角にて目の前に現れたジャイアント・アントに声を上げ、皆に知らせた。
「開幕宣言だ、これでも喰らえ巨大生物め!」
 葛葉 翔(くずのは・しょう)がカルスノウトの先から放った炎がジャイアント・アントの傍で爆ぜる。
 爆ぜた炎はジャイアント・アントを包み込んで、大きな痛みを与えた。
 痛みで暴れ回るジャイアント・アントの傍に、トラッパーを用いて薫が罠を仕掛ける。
 暴れ回っているうちにその罠にかかってしまい、ますますジャイアント・アントは身動きが取れなくなってしまった。
 爆ぜた炎と仲間のピンチに誘われたか、奥からジャイアント・アントたちが次々と出てくる。
「行くぞ、EDF突撃だー」
 翔の言葉に、皆が手にした武器を構え直し、ジャイアント・アントたちに向かっていった。
「虫捕りアミは無理ですね」
 大きいアリと聞いて、大きくても掌サイズくらいだろうと考えていたレロシャン。用意していたのは虫捕りアミとアリ駆除用の殺虫剤であった。
 けれど目の前に現れたのは小柄な自身と比べて、遥かに大きいジャイアント・アントである。虫捕りアミは当然通用しそうになくそれを手放すと、殺虫剤だけを撒き散らそうと、狙いも定めず、噴射した。
 噴出す殺虫剤に一瞬目くらましされたようになったジャイアント・アントであったが、臆することなくレロシャンへと反撃を仕掛けてくる。
「本当に怪獣と戦う日が来るとはな、地球じゃないが防衛するぜ」
 パートナー、ジョージ・ダークペイン(じょーじ・だーくぺいん)と出会う前には、本気で正義のヒーローになる事を目指す特撮オタクのグループに籍を置いて訓練を受けてきた経歴から、気合を入れる雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)
 悪食丸がカルスノウトを用いて斬りかかる傍ら、ジョージがエンシャントワンドの先から火の玉を放つ。1体のジャイアント・アントが弱ってきたところで、悪食丸は剣圧を纏った攻撃で、2回攻撃を放ち、そのジャイアント・アントを沈めた。
「こちらも生きていく為です、悪いですけど潰させてもらいます」
 樹月 刀真(きづき・とうま)はパートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の身体から、光条兵器を取り出した。
 たとえジャイアント・アントの外殻が硬かろうと、光条兵器を用いれば、己で斬るもの斬らないものを選ぶことが出来る。
「気をつけて」
 ジャイアント・アントと対峙する刀真に月夜は祝福を祈りながら、声をかけた。
「勿論」
 笑んで答え、光条兵器を構えた刀真はジャイアント・アントへと斬りかかっていった。
 手ごたえは勿論、とても硬い。けれど、斬ろうと思えば斬れる光条兵器だ、刃はジャイアント・アントの外殻をすり抜けるように斬って、内側へも痛みを与える。
「……大きなアリだな。こういうのを見ていると糸を吐き出す大きなクモは? と思ってしまうな。……いや、いなくても良いんだが」
 ジャイアント・アントと学生たちの乱戦が続く前線から少し離れた場所から、ロブ・ファインズ(ろぶ・ふぁいんず)はアサルトカービンを構えると、一撃放った。
 その正確な射撃は、ジャイアント・アント1体の注意を惹くには充分なもので、攻撃してきた相手を探してきょろきょろと辺りを見回すジャイアント・アントに対して、彼のパートナー、アリシア・カーライル(ありしあ・かーらいる)がカルスノウトを振り下ろした。
「巨大なアリですか。……色々な昆虫がいるんですね」
 感心するようなその一言を呟きながら、ロブが注意を惹いてはアリシアが斬りかかっていくという行為を続けていく。
 ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が一定の範囲内にジャイアント・アントたちが固まるように、けん制するような攻撃を与えていく。
「雷よ!」
 ジャイアント・アントたちが集まったところで、エンシャントワンドを掲げたカレンが呼び出すは、雨のように降り注ぐ雷撃だ。
「ジュレ、次行くよ!」
「サー、イエッサー!」
 雷に打たれて痺れながら絶命していくジャイアント・アントを見届けたカレンは次の一撃を放つべく、ジュレールにジャイアント・アントたちを集めてもらうのであった。
 仲間たちが隊歌を歌い始めても決して歌うことはしない橘 恭司(たちばな・きょうじ)は、パートナーのクレア・アルバート(くれあ・あるばーと)と共に、ジャイアント・アントが集まっている辺りに向けて、それぞれの構えるカルスノウトの先から炎を放ち、爆ぜさせた。
 最初のうちは勢い良く放たれていた爆炎も次第に、勢いを失い、終いには放てなくなる。
 そうなると、恭司は手にしたカルスノウトを今一度構え直し、直接接近して、関節や触覚を狙って攻撃していく。クレアは、持って来た殺虫剤を噴射してみるも、一般的な虫と違うため、致死量には至らず、目くらまし程度になるだけのようだ。
「ライラ、戦斗機動!」
「戦斗機動、了解。突撃します」
 昴 コウジ(すばる・こうじ)の言葉に、こくりと頷いたライラプス・オライオン(らいらぷす・おらいおん)が、カルスノウトを構えて、ジャイアント・アントへと近付いていった。
 その後方から足止めを目的としてコウジが構えたアサルトカービンから機関銃のように弾をばらまき、ジャイアント・アントを逃がさないようにする。
「蟻がどんな攻撃手段を持っていようとも……ん?」
 己の後方から現れた影に首を傾げたコウジが振り向くと、まさにジャイアント・アントが口の中から強酸を吐き出すところであった。
「こ、これは……酸だ! さ、酸だーっ!?」
 ぽたりと落ちてきた雫だけで、纏ったアーマーが少しばかり溶ける。それで酸であることを理解したコウジが慌てて声を上げた。
「ほら、今のうちに!」
 大和がやって来てそのジャイアント・アントの関節を狙ってランスで突く。更にライラプスが戻ってきて、その首を断ち切った。
「さあ、歌いますよ!
♪パンパッパパンパパパパッパパーン
 パパパパパパパーパパパパーン
 パンパーパパパン
 パンパーパパパン パン
 アリだアリだアリだアーリだ
 アリだアリだアリだアーリだー!」
「なにそれ大和ちゃん?」
 体勢を立て直し歌いだした大和に、パートナーのラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)が首を傾げる。
「無駄に壮大な前奏です」
 大和が微笑んで答えると、改めて隊歌を歌いだした。
「我等は人類の最期の希望! E・D・F! E・D・F!」
 陽気に歌いながら嘉川 炬(かがわ・かがり)が挑発するようにリターニングダガーをジャイアント・アントに向けて振るう。
 炬が挑発しかけたジャイアント・アントが牙の覗く口をもごもごし始める。
 今だ、と思い、他のジャイアント・アントを壁に出来るような位置へ、炬は移動した。
 炬を狙って吐き出される酸は、炬とそのジャイアント・アントの間に立つ、別のジャイアント・アントに降りかかる。
 ……けれど。
 それだけではなく、彼の傍らで酸を降りかけられたジャイアント・アントに攻撃を仕掛けていたドット 君(どっと・くん)にまで降りかかってしまったのだ。
「プルルルル……」
「隊長〜ああああ隊員が戦死しました!」
 倒れるドット君の姿に、炬は嘆きの声を上げるのであった。