天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

キノコ狩り

リアクション公開中!

キノコ狩り

リアクション


第4章 VSお化けキノコ
「……確かに炎は効果的だが……やり過ぎだ……」
 炎色に染まる森。クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)アイシア・ウェスリンド(あいしあ・うぇすりんど)
「……アイシア……少し後ろに隠れていろ……」
 ジャンヌ・ダルクの英霊であるアイシアは火刑にあって死んだ。
 だから今でも火が怖いし、既に顔は真っ青になっている。
「アイシアさん、無理はしないで下さいね。それよりどうします、先に消火しますか?」
「……いや。……この際だ……一気に片をつけよう」
 ユニに、少し考えてからクルードは答えた。
 視線の先には、やはり同じ考えらしき七尾 蒼也(ななお・そうや)リアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)の姿がある。
「お化けキノコだけ狙うってのも、中々大変だな」
 言いつつ、蒼也は炎を器用に操っていた。森に燃え広がらないよう、こまめに軌道を修正しつつ、お化けキノコへと炎を向ける。
「少し恥ずかしいけど、僕も負けていられないよね」
 同じく炎を纏うリアトリス。
 こちらは、エペに爆炎波を纏わせながら戦っている。
 いや、正確には踊っている……フラメンコを!
 リアトリスとしては恥ずかしい黄色のアオサイ姿と相まって、実に可憐で幻想的ではある。
 例え周りのお化けキノコがバッサバッサと焼きつくされていくとしても。
 こうなった以上、一刻も早く片を付け、森への被害を最小限で納める……蒼也もリアトリスもその一心だった。
「こちらも……行くぞ……」
 言って、クルードは炎を駆けた。
「……侵掠する事火の如く……【閃光の銀狼】の爪牙……見せてやろう……その身に刻め! 冥狼流奥義! 【破狼爆炎陣】!」
 一閃と共に、狼の形をした炎がキノコ達に襲いかかる。
 その牙より逃れる事、叶わぬべし。
「……これが……銀狼の牙だ……」
「私も行きます!……我が身に宿りし蒼天の力よ……その輝きを示せ!……蒼焔火……【ブルー・フレア】!」
 追う様に肩を並べる様に。ユニの蒼い炎が逃げまどうキノコを焼き尽くす。
「わ、私も行きます!」
 そんな二人に置いていかれまいと、アイシアも気力を奮い立てる。
 煙のせいなのか、過去の記憶故か、呼吸が苦しい。
 それでも、クルード達に守られたままここでのんびりしているわけにはいかなかった。
 共にある為、大切な人を守る為……いつか彼の人の闇を払う為にも。
 だから。
「……聖なる氷の祝福を……出でよ……【聖剣デュランダル】!」
 武器がまとう淡い蒼の光。それは付与されし聖剣デュランダルの力だ。
 森やユニ達をも飲み込もうとする炎を消し去りながら、アイシアは次々と焼き尽くされていくキノコ達にただ祈った。
「……せめてあなた達に、永遠の安らぎがあらん事を……」

「こんな中では氷術の効果は半減ですわ」
「それより先へ急ぎましょう」
 影野陽太はエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)達と共に、キノコの森の奥をひたすら目指していた。
 勿論、お化けキノコは全滅させねばならない。
 ただ、その原因……発生源まで燃えてしまっては元も子もないのである。
「道を開きますわ。ですから……」
 そんな陽太の内心の焦りを察し、エリシアは行く手をふさごうとする炎に、氷術を放った。
「もう少しだってのに……っ!」
 政敏もまた焦っていた。一刻も早く発生源にたどり着きたい、と。
「やっぱり政敏、ただキノコを採りに来たって感じじゃないわね」
 薄々気づいていたリーンに、カチュアも頷く。
「生物が影響を受けた事が気になっているのでしょう?」
 ズバリ指摘され、思わず政敏の動きが止まる。
 そう、生物であるキノコの変異に、危機感を感じていたのだ。
 だが闇鍋で盛り上がる者たちに水を差したくはなかったから。
「でも、たどり着く前にケガしたり毒に侵されたりしたら、肝心な時に対応できないでしょ」
「そうよ、まぁ多少の無茶は私がフォローしてあげるけどね」
 炎に照らされ頼もしげに笑むカチュアとリーン。
「大丈夫。政敏達はたどり着ける……私がたどり着かせてみせるから」
 政敏はふっと息を吐き、
「……分かった、頼む」
 苦笑交じりに告げたのだった。

「皆さん、流石にやり過ぎですね」
 大体の戦況状況を見てとったオレグ・スオイル(おれぐ・すおいる)は、氷術でもって消火作業を開始した。
「山火事になったら本当、シャレにならないですよ」
「そういう事なら私に任せて下さい……【アブソリュート・ゼロ】!」
 お化けキノコがクルード達によって駆逐されたのを確認したアイシアもまた、標的を炎に変え。
 逃げ出したくなる恐怖をねじ伏せ、ダイヤモンドダストを放つのだった。 
 そして。
 そうして。
「俺がそんな犬みたいに、なんて……」
 毒が抜け我に返ったキリエは絶望のどん底に在った。
「ええ、とても可愛かったですよ」
 梓が無邪気に追い打ちを掛ける。
「顔をペロペロと舐められて、ちょっとくすぐったかったですけど」
 更に、爆弾投下。
「それはキ……いっいや! ちょっとそれはダメだろどうなんだ俺!?」
 苦悩を深める青少年、その背後ではこちらも不穏かつ不敵な試みが行われようとしていた。
「さって! お化けキノコがどんな味か試してみるかな」
「え……まさかこれを食べる気なのか?」
 ラルクの言葉に、思わず声を上げる蒼也。確かに、自分やリアトリス達が駆除したものはこんがりと焼けているが。
「コレを食べるのは勘弁してくれ」
 げんなりとする蒼也。
「胞子なんか振りまくモンスターなんか食っても大丈夫なのか?」
「クー兄、食べないでね。私も……怖いから、食べたくないよ」
 クライブとルナも心配顔だ。
「欲しければ、どうぞ」
「そうね、こんがりと焼いたし美味しくなった……かも?」
 対照的に、リアトリスとセシリアは楽しそうにズズズぃっと勧め。
「おおっ丁度いいじゃねぇか!」
 ラルクは気にした様子もなく、お化けキノコの姿焼きに手を伸ばした。
「醤油バターで味付けすれば、きっと美味しいに違いありませんね」
 と、用意してきた醤油とバターを、こんがり焼けたお化けキノコに乗せるオレグ。
 香ばしい匂いは確かに、美味しそうだ。
「サンキュ〜、これはいけそうだぜ」
 もぐもぐもぐ。
「あ、食べた……お味はどう?」
「うん? 中々刺激的な味だな」
 セシリアの興味津津な眼差しに、答える。
 ぼんやり大味ながら時折脳天を突き抜けるような衝撃が走る、他では中々味わえない刺激があった。
「うん、だがこれはこれで美味い!」
 ……まぁラルクは味音痴だったりするので、何でも美味しくいただけてしまうわけですが。
「うんうん、美味い……美味……」
 パタン、唐突に倒れるラルク。見ると足とかピクピク痙攣していたり☆
「あ〜、やっぱり毒なんだ。ん〜、残念」
 ガッカリしつつ、ミミはキュアポイゾンをかけ。
「ですけど、お化けキノコにも色々種類があるようですし……他のを試してみても良いのではないですか?」
 オレグはにこやかにそんな事を勧めたが……ラルクの死にざまを見たばかりの中、勇者はいなかった。
 そう、今はまだ。
「解毒が済んだら、学校まで運ぼう」
 そうして、レイディスが苦笑まじりにそう言った。