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【借金返済への道】ザ・ヒーロー!

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【借金返済への道】ザ・ヒーロー!

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■借金魔女ホイップ第893話〜恐怖! 怪人シロクマー〜■

 幕が開く前に緋桜 ケイ(ひおう・けい)が登場した。
「これは借金を背負った少女達を狙う悪の組織『トリタテー』と仁義の魔法少女の物語。仁義の魔法少女ホイップは今日も愛用の木刀を手に仁義無き取り立てから少女達を守る!」
 簡単な説明が終わると幕が上がった。

 背景にはどこぞの町が描かれている。
 舞台の袖からは早速雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が現れた。
「クマックマックマー! 俺様は怪人シロクマー! 町の奴等の借金は全て俺様が取り立ててやるぜぇ!」
「わらわは悪の幹部カナタ! 今日こそ町の者たちから借金を取り立てるのだ!」
「ベアー!! 子供達よ……おまえらの親もみ〜んな借金を抱えてるんだぜぇ……クマックマックマッ」
 ギクリとなった親数名。
「その通り! さあ、 ゆけぇい! シロクマーよ!」
 カナタが指刺す先から町娘の格好をしたソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が出てきた。
「今日も借金の返済のため、頑張って働きます!」
 気合いを入れているところへ、シロクマーが近寄る。
「可愛い譲ちゃんよぉ、今日こそ耳を揃えて返してもらうぜぇ!」
「そんな、全部だなんて……もう少し待って下さい! 必ず返しますから! うちにはお腹を空かせたゆる族が2人も……」
「そんなゆる族なんて知らねぇなぁ! 払えねぇって言うんなら、体で払ってもらうしかないなぁ!」
 そう言うとベアはソアを抱き寄せた。
「ベア、言い方がなんだかやらしいです!」
 小声でベアへと伝える。
「そんなことないって、ご主人」
 こちらも小声で返す。
「さあ、大変! 皆で仁義の魔法少女ホイップを呼ぼう! せーのっ!」
「ホイップーーー!」
 ケイが子供達を煽り、子供達はノリノリでホイップを呼んだ。
「その子を放して! 私が相手よ!」
 すると木刀を携えたホイップが舞台袖から登場した。
 木刀を構え、2人と対峙する。
「小癪な奴め。俺様のベアクローの餌食にしてやる!」
 シロクマーが構えるとケイがこっそりと舞台に氷術をかけ、氷の演出を施す。
「そんな小娘一ひねりにしてやれぇい!」
 カナタはシロクマーの代わりにソアを抱き寄せておく。
 シロクマーが爪で襲いかかり、ホイップはそれを木刀で受け止める。
 その攻防が暫く続く。
「くっ……このままじゃ、埒が明かないっ!」
「クマックマックマー!」
 黒子刀真が霧吹きでホイップの額を濡らし、まるで本当に切羽詰まった戦闘の時に出る汗みたいだ。
「みんなー! 頑張れーって、ホイップを応援してあげてくれっ!」
「頑張れー!!」
 子供達が必死に応援をする。
「応援有難う! 力が出てきたよっ! よーし、必殺……炎熱殺人剣!」
 後ろに飛び退いたホイップが上段の構えをすると、ケイがこれまたこっそり火術を放ち、木刀に纏わせる。
「クマックマクマーーーー!」
「覚えてろよーーーー!」
 木刀で突くと炎と風が2人に向かっていく。
 シロクマーは大げさに吹っ飛び、側に居たカナタもソアを放して吹っ飛んだ。
 吹っ飛んだのを確認してから木刀を腰へと差す。
「あの! 助けて下さり有難うございました!」
 ぺこりとお辞儀をして礼を言う。
「仁義無き取り立ては私が許さない! いつでも私を呼んでね!」
 そう言うとホイップは去って行ったのだった。
「こうして、また新たな物語を紡ぎ、ホイップは去ったのでした」
 ケイがスカートの裾を掴んでお辞儀をすると幕は静かに下りた。


■助けて! ゴッドマン!■

 いきなり幕が開き、司会もなく舞台がスタートした。
「きゃー! 助けてー!!」
 ホイップが舞台の上で助けを求めていると、袖から登場ゴッド・ルーラー(ごっど・るーらー)
「どうしたのだ!? 我が聞こう」
 本気で心配をしてホイップへと駆け寄った。
「実は……」
 ごくりとゴッドの喉が鳴る。
「私が悪の魔女なのさっ!」
 そう言うと犬神 疾風(いぬがみ・はやて)も出てきた。
「俺はその手下だー!」
「な、何と!? ええ〜い! 悪は決して許さぬ。貴様等、神たる我に刃向うと言うのか? おめでとう! ならば死ね!」
 光条兵器の光の鉄槌を取り出し、本気攻撃を仕掛けてこようとするゴッドに焦る2人。
「ええっ!? ちょっと待って――」
「本気攻撃じゃないか!」

 小声でゴッドへと話しかけるが聞いていない。
 見兼ねた月夜が舞台へと登場し、ゴッドと2人の間に割って入った。
「……本気で倒しちゃ、ダメ」
「ふむ……下々の命乞いというやつか……良かろう! 手加減して、死ね!」
 ホーリーメイスでぶん殴って来たのを寸でのところで後ろへとかわし、2人はそのまま舞台から消えて行ったのだった。
「我に刃向う者は何人たりとも許さぬ!」
 そう告げると仁王立ちで舞台の中央へと立った。
 子供達は一体、何の話しだったのかが解らず、ぽかんと口を開けてしまっていた。
 それは親達やさくらである渚も一緒で、何が起きたのか理解出来た者はいなさそうだ。
 こうしてなんとか舞台の幕は下りたのだが、一向に動こうとしないゴッドをホイップと疾風が無理矢理引きずり降ろしたのだった。
「放せ! 我はまだ戦える!」
「はいはい」
「次の舞台があるからダメだよ!」


■太陽と月の輝き■

 舞台にはホイップと六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)が登場した。
 優希は明るい青を基調とした服に三日月の入ったものを着用し、いつもの眼鏡を外してコンタクトレンズにしている。
 ホイップは淡いピンクに太陽のアクセサリーを付けた衣装になっていた。
「おかしいですね。この辺りに悪者の反応があるのですが……」
「それらしい人は見当たらないね……」
 2人が思案しているところへ現れたるはキグルミを着たミラベル・オブライエン(みらべる・おぶらいえん)だ。
「おかしいですねぇ……迷子でしょうか? せっかく悪事を働き手下の『シタッパー』から昇格させてもらおうと思っていたのですが……」
 まごまごしているところと2人に見事に発見された。
「あ、あなた達はサンシャインホイップとムーンライトユーキ!」
「出ましたわね、シタッパー! 今日こそ覚悟して下さい」
 ムーンライトユーキが言うと、ホイップ共々戦闘準備にはいった。
 しかし、ホイップの一撃の蹴りで倒されてしまう。
「シタッパーよわーい!」
 子供達からもツッコミが入るほど弱かった。
「お〜ほっほっほ……悪の幹部の甲斐姫参上なのじゃ! シタッパーよ、ようやく見つけたのじゃ! おや、これはサンシャインホイップとムーンライトユーキではないか……丁度良い、覚悟するのじゃー! 行け、殺人ロボット! シタッパーに加勢するのじゃ!」
「……はい」
(もっと可愛い役が良かったです……)
 そこへ出てきたのは、露出の激しいボンテージ衣装に鞭をいう出で立ちの成田 甲斐姫(なりた・かいひめ)と、殺人ロボット役を嫌々やっているロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ)だ。
 殺人ロボットであるロージーが加わることによって形成は一気に互角へと変わった。
「はっはっは! こんな所にいたのかお前たち! むっ? 何やら互角の戦い! ならばこのガイコツ博士が作った薬を受け取るが良い!」
 唐突に上から出てきたのはデフォルメされたガイコツを身に付け、口元以外を覆う黒いマスクを被ったアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)だった。
 怪しげな黒い瓶に入った薬をシタッパーへと投げつける。
「おっとっと……」
 落としそうになりながらもなんとかキャッチしたシタッパーが薬をすぐに飲み込む仕草をする。
「ぐ、ぐわぁー!」
 叫びながら、いったん舞台から退場し、直ぐに違うキグルミに着替えて現れた。
「わたくしはツヨッパーとなり戻ってまいりました!」
「なんですって!?」
「そんな……!」
 驚嘆するヒーロー2人。
「ふははははっ! 首領である、この僕も出ようじゃないか!」
 2人の後ろからは大口を開けて高笑いをしているブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)も登場した。
「ブレイズ様ー!」
 悪役皆が平伏し、その偉大さをアピールする。
「ふはははは! 貴様等を倒せば、我等が野望を阻む者は無し! ここで屍を晒すがいい! やれぃ! 我が下僕共よ!」
 そう声高に指示を出すとヒーロー目がけて一斉に飛びかかってきた。
「きゃー! このままじゃやられてしまいます!」
「そ、そうね! 今こそあの技を使う時よ!」
「ええ!」
 ムーンライトユーキは三日月の入ったロッドを構え、ホイップは太陽を模った飾りのついたロッドを構える。
「フルムーンシュート!」
「サンシャインシュート!」
 2人が叫ぶとロッドから光が飛びだし、敵へと直撃した。
 ムーンライトユーキが付けていた光精の指輪から光を出し、ロッドに付いていた鏡で反射をさせたのだ。
「うわぁーー!!」
 あっさりとやられてしまう敵役達。
「ふ……ふふ……ふはははは! 悪は不滅だー!!」
「お〜っほっほっほ! 女王様とお呼びなのじゃ!」
 無残にやられるはずのブレイズが声を大にして叫ぶと呼応するように、甲斐姫も起きあがって、鞭を振るいだしてしまった。
「ええ!? どうしましょう!?」
「ど、どうしよう……台本とまるで違う反応だよ……しかも、さっきよりイキイキしているように見える……」

 ひそひそと優希とホイップは相談をするが、止まりそうもない2人に呆然としてしまう。
「卑怯だぞ! 悪者はヒーローの必殺技を食らったらやられるものなんだ!」
「そうだぞ!」
 とっさにさっきまでやられて地面に突っ伏していたロージーが立ちあがり、舞台の横にあったマイクを手にした。
「悪の幹部達の大逆襲です。このままじゃ正義のヒーローさん達が大ピンチ…! 会場の皆、力を貸して! 皆で悪の幹部をやっつけちゃいましょー!」
 少々棒読みだが、熱くなってしまった子供達をけしかけるには十分だった。
 一気に舞台の上へと上がり、ブレイズへと攻撃を始めてしまったのだ。
「む……こりゃいかんのぅ……さらばじゃ!」
 子供には手を出せないので、早々にブレイズを捨て駒にし、甲斐姫は舞台から去った。
「……流石にブレイズも子供達には手は出せませんよね」
 ロージーは呟いた。
「な、何ぃ! ちょ……ちょっと待て! それは反則……ぐおぉぉぉぉ!!」
 ぼっこぼこにされたブレイズを見て、満足したのか子供達はそれぞれの席へと戻っていった。
「みんなー! 正義は必ず勝つよー!」
「うん!」
 最後はなんとかホイップがまとめ、舞台は終了となったのだった。