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魔の理科実験室の怪を探れ!!

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魔の理科実験室の怪を探れ!!

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第五章 

 その晩。学生寮の窓の見張りについていたのは影野、伊吹、安芸宮の3人だ。
窓から脱出を試みる生徒に伊吹がすかさず制止をかける。
「危ないです! こんな時間にどこへ行くんですか!」
「うるせえ、ほっとけ!」
叫ぶ生徒が半ば身を乗り出しかけたところへ、影野がヒプノシスをかけると、生徒は窓にだらんともたれ掛かった。
「全く、世話の焼けることですね」
「本当にもう、何をやっているんだか」
「伊吹さん、お疲れ様です」
「いえいえ、影野さんこそ」
安芸宮が声をかけた。
「あ、また一人出てきた。一階の窓」
「何時だと思っているんですか!! 部屋にもどりなさーい!」
「見逃してくれよー」
「だめですっ!」
3人は異口同音に叫んだ。
窓から生徒が飛び出した瞬間、安芸宮が体術で押さえ込んだ。
「いててて」
「だから言ったでしょう」

 学生寮玄関付近。 
「御影〜恐くないからねー」
セルマは御影の背アタマをなでてやっていた。
「うん、だいじょぶ〜。あ、誰か出てきたよ」
玄関から抜け出してくる人影が見えるなり、抜かりなくぼろぼろの黒衣を着て、見るからに不気味ななりの月谷が穏行ですっと姿を消す。
「おお、出てきた出てきた、脅かして帰るように仕向けてくるねー」
セルマに向かい、月谷は明るく言って、生徒の前方に突如火術で人魂状のものを出現させ、ついで一気に穏行を解く。
 目前に現れた浮かぶ不気味なモノに、生徒は仰天した。
「うわあああああああああ!!」
飛び上がった生徒は、寮と反対方向へ思い切り駆け出した。
 それを見たオルフェリアがおもむろに刀を抜き、逃げる生徒を追いかけ始めた。
「そっちは危ないのよー!もどってらっしゃああい」
「そうだにゃー 危ないにゃー……ぎゅーさせてにゃあああああ」
御影が黒猫に姿を変え、オルフェリアとともに生徒を追いかけだした。
一瞬振り返った生徒の顔が、さらに恐怖に引きつった。大きな黒猫と、刀を手にした女が、すさまじい勢いで追いかけてくるのだから無理もない。
「安心して〜 峰打ちだから〜」
オルフェリアの言葉は、もはや届かない。

「ありゃ、もう行っちゃったし」
月谷がもどって来た。
「光る箒を使っての演出とか考えていたのになあ。こうやってさ」
箒もろとも月谷の姿が消える。少しあってかすかに光るものが浮かび上がった。
「この方が雰囲気あると思う? んでさ、最後にこれ出そうと思ってさ?」
月谷の瞳が、ぞっとするほど恐ろしい鬼眼に変わる。
ウィルメルドがそれを見て悲鳴を上げた。
「ぎゃああああああああああ!!!」
「恐くない恐くない。月谷だからあれ。大丈夫大丈夫」
「わ、わかっておっても怖いんじゃ、何とかしておくれー……」
巨大なドラゴンが、涙目になって小さくなって震えている。セルマが全身を震わせた。
「か、可愛すぎるっ!!! は、いかん……は、鼻血が……」
あわてて上を向き、後頭部をとんとんする。
「あー、ごめんごめん、マジ恐かった?」
月谷が鬼眼のままニコニコと笑った。
「ぎゃあああああ!!! 恐いいいいい」
「月谷それ止めろ、不気味だから……ああそれと……俺失血死しそうだからやめて」

 廊下に出てきた生徒を制止すべく神楽坂とシェイドは寮内を見回っていた。
「さすがに深夜の校舎は……不気味ですねこの時間だと多くなるんですけど……アレが」
神楽坂が一人ぶつぶつと言う。その双眸には、廊下を彷徨う人ならぬものの姿が見えているのだ。
廊下にいた生徒が、ぎょっとこちらを見る。神楽坂の瞳が、生徒と、その脇にすっと移った。
「おやおや。お2人とも こんなところで、こんな時間に……何を?」
抜け出した生徒は、自分の脇を見た。自分ひとり、誰もいない……はずだ。
脇の闇に控えていたシェイドが、すっと生徒の後ろへ動いた。
「お仕置きだよな?けじめつけるためにも」
そう一人ごちて、生徒の背後から地獄のそこから聞こえるような高笑いを響かせた。
「はーっはっはっはっはっは!!」
「うわああああああああ!!!」
深夜の寮に、別の悲鳴がまたひとつ、響き渡った。
「……シェイド、楽しそうだな。……まあ、一度恐い目見れば来なくなる気はしますから、いいのかな……」
「まだまだ、来ていただかないとね。脅かし甲斐がありませんよ」
「……そっちの、触れないほうの方にも、お引取りいただけるといいんですがね」