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第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~

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第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~
第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~ 第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~

リアクション

 2.S字型の並木道
 
 
 はらはらと枯れ葉が落ちて行く。
 風に吹かれて、時折はらはらと。
 閑静な住宅街の、隠れた名所。
 沿道の広葉樹は色づきはじめ、車道には落ち葉の塊もみられる。
 
 延々と続く、赤と黄色が織りなす「秋のコントラスト」!
 
 その美しさから、生前の御神楽環菜が物思いにふける際、必ず歩いた道――と言われているが真偽は定かではない。
 なぜならこの道はS字型のカーブが続くため、交通事故が多く、とても考え事をしながらでは歩けないから。
 
 道をのぞいてみよう!
 沿道には学生達の姿がちらほらとみられる。
 
 紅葉の美しさをめでるもの。
 環菜を偲ぶ者。
 そして、バイクを乗り捨て、木によじ登りつつ、時折道の彼方を気にかける人影――。
 
 ゴオオオオオオオオオオッ。
 
 地平線の彼方から、風を切って参加者達の一群が現れる。
 第1ポイント「S字カーブが続く並木道」での攻防開始だぁっ!
 
 ■
 
 まず、「レッサーワイバーン」の集団通過!
 下馬評通りの強さだ。
 次点に、「小型飛空艇」の集団。
 影野陽太が一歩リードしている。
 のこりの「箒系」から「人力系」までの集団は、大差なく固まって移動している。
 しかし、おおっと!
 ここで、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が集団から離れて行くぞ!?

「よいのだ」
 中継用のテレビカメラ目線で、ダリルは冷静に言った。
「要修繕箇所を確認する。
 それが、私がルカルカから受け継いだ使命なのだから」
 そういって、角度と倍率を変え何枚かずつ撮影する。

 しかして、そこにはレロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)が木の上から狙っていた。

「20分も前に出発したのですよ!
 これで勝てなかったら、おバカさんです!」
 レロシャン、ダリルにジャンビング・キック!!
 ドゴォッ!
 ダリルはキックをまともに食らって、その場に伸びた。
「殺気看破もなしに、いまどき道草食うようなレーサーはいないのですよ!
 では、ごきげんよう!」
 レロシャンはふわぁ、と欠伸をしつつ、去って行った。
 その後彼女は最後まで走って、結局「ルール違反」で失格となる。
 2つ以上の乗り物に乗ってはならないのだ!
 ついでに乗り物の無いダリルも、その場で失格となった。
「まあ、これだけ資料を集めれば……。
 しかし涼司のためにしたことで、涼司から罰ゲームとは……いやはや……」
 複雑な面になるダリルなのであった。
 
 ■
 
 さて、レースへ。
 
 紅葉の並木道は美しい。
 整然と盾一線で並んでいた集団は、ここにきて「乗り物」のレベル差に関係なく混ざりはじめてくる。
 
 ■
 
 トップは、九条 イチル(くじょう・いちる)だ。
 レッサーワイバーンの「ハル」に乗っての出場である。
 だが早くも、2番手の涼介選手に抜かれてしまいそうだ!
「だって! 並木道だよ! 紅葉だよ?
 見て行かなくちゃ、損じゃない?」
 原因は、こいつのようだ。
 わあ、と低空飛行で広葉樹を見上げている。
 
 次の注目株は、光る箒の乗った五月葉 終夏(さつきば・おりが)
 技師ゴーグルをつけ、カエルのぬいぐるみを抱え、と個性的なスタイルが観客達の人目を引いているぞ!
「じゃ、更にカッコイイことやってみよっかなぁ?」
 それっ!
 紅葉の下で『風の鎧』を使う。
 色とりどりの落ち葉を巻き込んで、シックな『落ち葉の鎧』が完成した。
「やっぱ、見てくれから入らなくっちゃだよね!」
 
 同じく、空飛ぶ箒で参加の宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は、殺気看破に女王の加護と、準備に余念がない。
「何でもありでしょ?
 危険察知用のスキルが無くっちゃ、妨害行為や攻撃に対応出来ないわ!」
 
 機晶バイクで参加の浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)は、ヘルメットやライダースーツ、皮手袋等をきっちりと準備しての参戦だ!
「見かけだけじゃないですよ!」
 トップスピードのまま、コーナーをシャープに曲がりつつ解説。
「財産管理でコース計算をし、特技『運転』を用いてこその、この技術!
 これで上位入賞は頂きです!!」
 
 プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)は「運転」と「追跡」で好位置をキープだ。
 バイクの小回りが効く特性を生かして、マシンと一体になって進んでいく。
「この日のために、ベストコンディションで臨んだのです!
 悪いですが、勝たせて頂きますよ!!」
 
 青島 兎(あおしま・うさぎ)は大型の「バイク」での参戦だ!
 フルフェイスヘルメットに大き目のライダースーツ、シークレットブーツに詰め物をし……と何だか物々しい恰好だぞ?
「体格が分からないように、わざとこうしているんだからぁ〜!
 しゃ、しゃべらせないでよぉ〜!」
 そのまま沿道ぎりぎりを削るように攻めて、カーブを切り抜けていく。
 
 空飛ぶ箒で参加のルツ・ヴィオレッタ(るつ・びおれった)は、先に行ったはずのイチルと遭遇してしまったようだ。
「イチル!
 何をもたもたしておるのじゃ!」
 怒りの声を上げる。
「サッサと行かんか! それ!」
 ハルのしっぽに火術を放つ。
 ハルが暴れ初めて暴走する。
「わあああああああああああっ!
 何て事すんだよ! ルツのバカぁ!」
 ……そのままイチルは地平線の彼方に消えていく。

 ■
 
 レースに夢中の選手もいれば、そうでない選手もいるようだ。
 先頭集団から、彼らの様子を覗いて行こう!
 
 ■
 
 影野 陽太は小型飛空艇を順調に飛ばしながら、物思いにふけっていた。
「朔さん、お気遣いありがとうございます……」
 ぼそっと呟いて、並木道をぼんやりと眺めている。
「御藝神社のお守り」5個を片手で弄びながら、カンナ様を偲んでいるのか?
「ええ、環菜さんが愛した道だそうですから。
『記憶術』で懐かしむには、ここしかないですよね……」
 
 ミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)と2人乗りで、紅葉を堪能していた。
「綺麗な紅葉ですね、ミルフィ♪」
「本当ですわねお嬢様♪ さ、しっかり捕まっていて下さいまし!」
 秋の陽光の中、何だか2人はとても楽しそうだ。
 
 ミルフィ達の遥か後方では、レッサーワイバーンのトライブが風のように駆け抜けていく。
 スピード超過で曲がり切れないS字は、バーストダッシュで強引に曲がりきったぞ!?
「速さだ……速さを一点に集中させて、どんな障害も打ち貫いて見せる!
 お前らに足りないもの、それは! 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さetc……何よりも、『速さ』だっ!!」
 
 そのトライブを、わわっと避けて自転車をこぐのは岬 蓮。
 蓮は他の速い乗り物を捨て、自転車での優勝を目指しているらしい。
「やっぱり、レースは熱血と根性で勝負! だよね☆」
「ふむ。しかしせめてバイクくらいのレベルでなければな。
 さすがに正攻法での優勝は難しいと思うぞ! 蓮」
 併走するのは、アイン・ディアフレッド(あいん・でぃあふれっど)
 彼はバイクでの参戦だ。
 ブツブツ呟きつつ、はっ! と用いるスキルは『氷術』。
 道を凍らせての「妨害」らしい……が。
「私達が最後尾だよ! アイン。
 そんなことやってないで、急がなくっちゃ☆」

 ■
 
 ……以上が、並木道での攻防の全容だ。
 レースはレッサーワイバーン組僅かにリードのまま、次なる難関「底なし沼」へと突入して行く。