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【蒼フロ2周年記念】ちっぱい教の野望

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【蒼フロ2周年記念】ちっぱい教の野望
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●さらば同志達! ちっぱい教落日に滅する!


 カレンや明日香達ネ申の敗走は、ちっぱい教のC−Dayの失敗を決定付ける1つの要素となった。
 もう1つは、今まで動きの無かった冥弩08小隊の蜂起だった。

「お客様、紅茶をどうぞ」
「これはありがとう……って、セシルちゃん!? どうしてこないところに!?」

 冥弩08小隊の本部であるメイド喫茶を訪れた七枷 陣(ななかせ・じん)は、薔薇のティーセットで目の前で紅茶を淹れているメイドがセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)であることに気付き、思わず腰を浮かしてしまう。

「どうしてと言われましても、空京でお買い物中に声を掛けられまして、『君のような素敵なメイドが俺達には必要なんだ!』と熱心に誘われまして、そこまで言われましたらお断りするのも失礼かと思ったのですわ。隊長様を始め、隊員の皆様はそれはそれは紳士的な方達ばかりですのよ」
「なるほどな。この程良いまったりとした癒しの空間は、セシルの成せる技か……お前に目を付けるとは、冥弩08小隊はただのメイド萌えだけではないようだな。第四師団のメイド隊にも欲しいぜ」
「ありがとうございますわ。でも、私はいつか仕えるに相応しいご主人様と出会うまで、野良メイドでいたいのですわ」

 「後で奉仕してやるから協力しろ」と乗り込み、半ば強引に仲間に引きずり込もうとした朝霧 垂(あさぎり・しづり)だったが、セシルの【メイドインヘブン】で形成された癒し空間に、今ではまったりしていた。
 彼女自身シャンバラ教導団の【第四師団メイド隊長】だからこそ、セシルのきめ細やかな心遣いが分かると同時に、それを成し遂げるのが大変なことも理解していた。

「それにしても……冥弩08小隊の作ったメイド服は、ここまで従順なメイドにしてしまうのか……」
「ううん、ボクは冥弩08小隊に保護してもらっただけだもん」

 下川 忍(しもかわ・しのぶ)はセシルが【みらくるレシピ】で作った茶請けのクッキーを運んできた。
 “戦うメイドさん”を自負する忍だが、パートナーがきょぬーであったため、彼女自身きょぬー狩りには賛同せず、中立の立場を貫こうとした。
 ただ、ちっぱいである以上、ちっぱい教に与させるのは忍びないと思った旧知の親友の松本恵は、彼女を冥弩08小隊に保護させていたのだ。
 冥弩08小隊の作った、着た者を従順なメイドに変えてしまう魔法のメイド服を着せているのも、ちっぱい教に忍へ手を出させないための配慮のようだ。

「冥弩08小隊ね……何か『俺は生きる! 生きてメイドと添い遂げる!』とか叫ぶ熱血隊長がいそうやな。セシルちゃんや忍ちゃんを保護して丁寧に扱っている辺り、少なくとも悪い奴では無さそうやし、静観してるっつー事は、C−Dayをあまりよろしくないって思ってるんだろう」
「私もそう思います。セシル様や忍様、とても生き生きとご奉仕なさっていますし、良いご主人様だと思います」
「ボクも陣くん達と一緒に協力をお願いするよー。えっと……三顧の礼? とか言うんだっけ? その心持ちで頼み込めば、ボク達の味方になってくれるんじゃないかな!」

 小尾田 真奈(おびた・まな)がメイドの視点で冥弩08小隊の隊長の人柄を推し量り、リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)の後押しを受けて、陣と垂は冥弩08小隊の隊長との交渉に臨んだ。

「ちっぱいスキー、バニースキー、メイドスキーと一見それぞれベクトルが全然違う様に見えるけど、嗜好、という根源、何かが好きだ! と言う想いはどの派閥だろうとすべからく皆持ってるはずだ。そう言う意味ではアンタらは全員仲間やないか! 仲間が暴走してたら、それを止めてやらんと! それにアレを客観的に自分達に置き換えてみ? リアルにイタいやろ?」
「みんなが女の子の色んな部分を好きなのは分かるけど、それを押しつけちゃうのはどうかと思うんだ! 熱く嗜好を語るのは良いけど、行動するのはアウト。『YES、ファントーク! NO、タッチ!』だよ。ボクだって胸ぺたんこで凹む事あるけど、重要なのはそれぞれに見合った服とかを選んで自分の持ち味を生かす事だと思うんだ」
「どの勢力を取っても、一部の方から見れば変態だと罵られるかもしれません。しかし、冥弩08小隊の皆様は変態という名の紳士であると思います。ご同輩の方々の暴走を黙って看過しては、皆様の繁栄にも影を落とす事でしょう。どうか事態の終息に向けて、私達にご協力頂けないでしょうか?」

 陣が、リーズが、真奈がそれぞれの想いを隊員にぶつけていく。
 特に真奈は無意識に【メイドインヘブン】を振りまきつつ、隊長に真摯な眼差しを送っていた。
 真奈は普段からメイドとして日常を暮らしているので無自覚だったが、メイド萌えの彼からすればそれは心を揺さぶり、命を賭すと思わせるのに十分だった。

 遂に冥弩08小隊は、ちっぱい教の反勢力として蜂起したのだった!