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リアクション
「どうしたの、アイン?」
岬 蓮(みさき・れん)が更衣室から出てくると先に待っていたアイン・ディアフレッド(あいん・でぃあふれっど)が茫然としていた。
「いや、プールとはこういう大きなお風呂のようなものなのだな」
「あ、そっか。初めてだっけ。私は久しぶりだよ〜。せっかくだから思いっ切り楽しもうね!」
「ああ、そうだな」
「それじゃあさっそく……ウォータースライダーいっくよーっ☆」
蓮はアインの腕を掴むと走り出していた。
ウォータースライダーの下に到着すると、アインは一瞬固まってしまった。
「こ、これに……乗るのか?」
「そうだよー! わぁ〜。みんな大声出してて気持ちよさそう♪」
少し引き気味のアインに対して、蓮は目がキラキラと輝いている。
(楽しそうだが……怖そうだな……。一応自分は男なのだし、変な叫び声は上げないように気をつけねば。あとで蓮にからかわれる……)
そんなアインの決意も空しく、ウォータースライダーでは散々な結果となってしまった。ウォータースライダーから出てくると、アインはかなりぐったりしていたが、蓮はお腹を抱えて笑っていて苦しそうだ。
「蓮……笑いすぎだ」
「だって……だって……『うぴょ』って……くく……『うぴょ』って……ぷっくっく……」
「も、もういいだろう? ほら、お昼ご飯」
「うん……ひー……ダメ……苦しい……く……くく……」
ウォータースライダーの時とは違い、今度はアインが蓮の腕を引き移動する。
アインに連れられてやってきたのは沙幸がバイトしているお店だ。ちょうど、今はプールサイドで大変な目にあっているところだが。
蓮はカレーうどんを注文し、アインはタイヤキとぜんざい、それから抹茶ミルクのかき氷を頼んでいた。ここでもなんだか対照的な2人だ。
そして、昼食が終わると2人は流れるプールへと向かって行った。
流れるプールには大きな浮き輪を浮かべて、ぷかぷかと浮かんで流に身を任せている紅護 理依(こうご・りい)の姿があった。
「はぁ……気持ちいい……」
空では太陽がぎらついているが、冷たい水の中にいると、それすらも気持ちよく感じる。気になる事と言えば、塩素の臭いくらいだろう。
「きゃーっ!」
そこへ突然悲鳴が聞こえてきた。
「な、何!?」
理依が声のする方を見ると、蓮が顔を赤くしているところだった。アインがプールの中にいるうなぎを追い払おうとするが、うまくいっていない。
「なんでうなぎ!? って、言ってる場合じゃないよね! 助けなきゃっ!」
慌てて理依は2人に近づき、蓮のお腹や背中にすりすりしているうなぎを掴もうとするが、ぬるぬるで捕まえる事が難しい。
「えいっ!」
何度かチャレンジするが、うなぎは手をすり抜けてしまう。すると、うなぎの1匹が理依の胸にすり寄ってきた。
「わっ! 俺の方にくるな! あ! やめ……っ……ちょっ、そこは……あぁんっ!」
理依は悩ましげな声をあげ、ぐったりしてしまった。
その場はなんとかアインの機転で、2人を抱えてプールを出る事でなんとかなった。
助けられた蓮はアインと理依の2人にお礼を言う。
「助けてくれてありがとう」
「ううん、俺の方こそ……助けに入ったのに、かえって助けられちゃって……」
さっきの感触を思い出し、理依は少し顔を赤くする。
「ね! これも何かの縁だし、一緒に遊ばない?」
「それは良い考えだな」
蓮の提案にアインも賛同する。
「邪魔じゃない? デートなんじゃ……」
理依の言葉にアインは何も飲んでいないのに、むせた。そして、慌てて否定する。
「いや、違う。子と保護者だ」
「へぇ、そうなんだ? じゃあ、お邪魔じゃないのなら」
理依が頷くとさっそく蓮は理依の腕をとり、目を輝かせた。
「じゃあ、一緒にウォータースライダー行ってみよう☆」
げんなりしているアインを横目に理依と蓮はもう走り出していたのだった。