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秋のスイーツ+ラブレッスン

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【ルカルカグループ】

 ルカルカ・ルーはパティシェの修行の成果を見せるため、周りにいたみんなに、ちょこちょこと味見をしてもらいながらパウンドケーキを作っていた。
 洋酒をベースに、リンゴ、葡萄、チョコなど様々なものを入れていく。
「皆が美味しいって言うものなら大丈夫よね」
 さっきグループリーダーにも選ばれたし、絶対に美味しいものを作るんだ、と気合が入る。
 具になるフルーツの煮る時間とか味付けとか、生地の仕上がり感など小さなところに気を配った。
 自分でも納得したものができると、挑戦状を叩きつけるかのように海のところへ持っていく。
「今度は自信作なんだからね」
 海は一口食べると、難しい顔をするがわずかに笑った。
「へぇ、結構美味いじゃん。まぁ、そろそろ腕も良いところだろって思ったから、あいつらもルカルカを推薦したんだろうし……俺に言わせれば合格点だな」
「ホント!? やった!」
 海のお墨付きもあってか、できたケーキは大評判だった。残りが少なくなってしまったので、材料が許す限り追加で作ることにする。



 おばあさまにケーキを食べてもらうのですわーとアンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)は張り切っていた。けれど料理はできないので、その準備だ。
笹野 朔夜(ささの・さくや)はそれを心配しつつも付いてきたのだが、ちゃんと作ってくれるのか不安だった。
「俺が教えますから、慎重にやってくださ……って、下ろして下ろして!」
 アンネリーゼは半分ほどカボチャに包丁を突き刺して、ダンっダンっとまな板に叩きつけていた。危なっかしい。
「だってこのカボチャが硬いんですもの!」
「危険ですっ」
 朔夜が手をそえて「いいですか」と切るのをサポートしてやり、ようやく切れた。
 レンジで加熱したカボチャは、その間に混ぜていたケーキ生地へと潰しながら混ぜていく。途中アンネリーゼが思いっきり混ぜたため辺りに飛び散ってしまったが……。
「変なものは混ぜてないですね?」
「だ、大丈夫ですわ! そこまで心配いりませんわよ」
 などと言うが、飛び散ってしまったものを朔夜が始末している隙に何か入れてそうで怖い。
「それじゃあ薄く焼いて、くるくると巻くんです。クーヘンですからね」
 数ミリ程の厚さの生地を焼いては、棒に巻きつけて、を2・3回ほど繰り返す。
朔夜の監視のおかげで、アンネリーゼは大きな失敗はしなかった。生地を2枚ほど焦がしてしまったけれど、少しづつの量で焼いているからマシな方だ。
「……、そうですね。まぁ食べれなくはないですが、最近の塩ブームに乗った感じですかね」
「ちゃんとしたものが作れたんですから問題はありませんわ」
 棒を抜いて、できたカボチャのバームクーヘンを食べてみると甘味としょっぱさが混じっていた。アンネリーゼは「スイカは塩をかけて甘さ増すのでしょう」って。
 おばあさまに渡す時に作るケーキまではもう一回ぐらい練習した方がいいと朔夜は思った。



「よし、はじめようっカティヤさんでも美味しくお菓子作れるんだからね!
遠野 歌菜(とおの・かな)カティヤ・セラート(かてぃや・せらーと)と一緒にチーズケーキを作ることになった。
「よろしく頼むわ、歌菜。いつも酷くなっちゃうから……」
「酷くしない! 安心して、じゃあこのボウルに入れたチーズを混ぜてね」
 カティヤは使いづらそうにへらを突き刺すようにクリームチーズの塊を潰していた。
「これ一回温めた方がいいかも……」
 と、レンジへ持っていこうとするカティヤを、歌菜は慌てて止める。
「固形のままやったら破裂しちゃうよ、それにこれ耐熱ボウルじゃないし……」
 頑張ろ、と歌菜は励ましつつ、混ぜるコツを教えた。
「……、結構混ざってきた。そっちはどう?」
「うん、クリームと豆腐を混ぜてみたの、どうかな」
 歌菜はヘルシークリームにするために、ペースト状にした豆腐を生クリームに入れて混ぜていた。四苦八苦していたカティヤも、言われた通りに着々と進めているおかげで心配はないようだ。
 そこに豆腐クリームを入れて混ぜていく。ちょっと味見してみたところ、結構いける。
「初めてまともなものできるかも……」
「ね、大丈夫でしょ?」
 型に流し込んで、後は冷やすだけ。冷蔵庫に入れて戻ってくると、調理台には月崎 羽純(つきざき・はすみ)がいた。
「今度はマシなもん作れてそうか?」
「こ、今回は大丈夫よ! 見返してやるんだから……!」
 カティヤは鼻に付く台詞を言われて言い返す。今は冷やしているだけなら、と羽純はふらっと放れて行ってしまった。

「わーわーっ、美味しそうな菓子いっぱいだね!」
クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は甘い匂いに釣られて舌なめずりをする。
「はいはい、みっともないからはしゃぎすぎるなよ」
エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はティーセットの準備をしながら、クマラを咎める。お菓子好きが黙ってはいないから、お目付け役だ。
「ちゃんと断ってからだよ、食い散らかしはだめ」
「わかってるって。作った人の思いが込められてるんだから、オイラはそんなことしないよー」
 エースとクマラは、お菓子を分けてもらいながら、そのお礼にと美味しい紅茶を淹れてまわる。上品なカップで差し出すと、甘いお菓子にちょうどいい、と喜んでくれる人が多かった。
「おいしいにゃー、お菓子の聖地だにゃー」
 のほほん、とクマラは満足気な表情を浮かべた。
「今日限りだけれどね。ルカのパウンドケーキ、もう一回もらってくるかなぁ」
「賛成!」
 そこにお菓子を食べ歩いていた羽純が話しかけてきた。
「茶、配ってるんだって聞いたから、俺も手伝う」
「それは助かるよ。俺が淹れるから、カップを渡してくれないかな」
 クマラはお菓子に夢中だし、とエースは苦笑する。羽純はお茶配りを手伝う中、途中で歌菜とカティヤのところへ戻ってきた。
「冷蔵庫からお戻りか。ほら、茶淹れてくれたっていうから飲めよ」
 言葉こそぶっきらぼうだが、お茶と引き換えに差し出されたチーズケーキを食べると、「思ったより、美味いな」と言ってお茶配りの手伝いに戻っていった。やったぁ、と喜ぶ歌菜とカティヤの声が、背後から聞こえる。