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偽ロリ教師と盗賊とさらわれた子供達

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偽ロリ教師と盗賊とさらわれた子供達

リアクション

「いたいけな子供に! いたいけなショタに! なんて事をするんですのー!?」
「ぐはぁっ!」
 退紅 海松(あらぞめ・みる)の一撃が、ひとさらいを沈黙させる。
 今日この場にやってきた中でも、海松は相当に特殊な部類だった。
「連絡してきた子はいたいけなショタだとか……なんていう事ですのー♪ 今すぐにでも私、海松がお助け致しますわよー!」
「はぁ、まぁ、どっちでもいいんですが。犯罪だけは犯さないで下さいね。僕が迷惑なんで」
 目をキラキラとさせている海松を、フェブルウス・アウグストゥス(ふぇぶるうす・あうぐすとぅす)が冷めた目で見ている。
 どの子が電話を持っているショタ……もとい子供なのかは分からないが、一塊になって逃げていた集団を海松達は保護していた。
 とはいえ、目が少しばかり危険な海松を怖がったのか、一緒に居たロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)の元へと子供達が行ってしまうのが、海松は少し寂しかった。
 一方のロレンツォやアリアンナとて、これだけの人数の子供を連れて歩くわけにもいかない。
 怪我をしている子から治療していき、逃げるためのルートを教えるのが最良の方法だった。
「経路はこの通り。みんな、走って!」
「助かる、と信じて下さいよ?」
 一通りの治療を終えると、ロレンツォとアリアンナは子供達を別方向へと走らせる。
「ああ、貴重なショタが……」
「まだ言いますか」
 海松にフェブルウスが冷めた目で突っ込みを入れながらも、新たにやってきた珍客へと視線を戻す。
 ロレンツォ達が子供を逃がした理由の一つが、ここにある。
「なんだかやけに動きのいいゴブリンがいらっしゃるようですが」
 海松の言葉に、フェブルウスも頷く。
「……なんであんなやけに動きがいいんですかあのゴブリン。多分五分でやり合おうなんて思わない方がいいですね」
 そのフェブルウスの所見は、正しい。
 類まれなる近接格闘センスを所持したゴブリン相手に、わざわざ近接格闘で挑む道理はない。
「……目を瞑っていてくれますか?」
 そこに、ロレンツォとアリアンナが前に進み出る。
 何をするつもりなのかを悟った海松とフェブルウスは、その合図で目を瞑る。
「……ロレンツォ」
「一瞬です」
 ロレンツォが引き出したのは、光条兵器。
 最高出力の眩さにゴブリンがひるんだ、その瞬間。
 海松の放った寺院の弾丸が、ゴブリンに叩き込まれる。
 倒れて眠りにつくゴブリンを眺めながら、海松は笑顔を浮かべる。
「どんなに動きが良くても獲物は拳でしょう? 近距離の弱点は、遠距離だと言う事をお忘れなくですわ♪」
「……言ってる事はまぁ、確かにそうですが。遠距離の弱点も近距離だと言う事を忘れないで下さいね」
 フェブルウスの言葉に、アリアンナはクスリと笑う。
 近接戦闘になれば、ロレンツォの手を汚させてしまう事になるので、なるべくならそれは避けたいと思っていたのだが……この場に、海松達がいてくれてよかった。
「さあ、行きましょう。ショタっ子ー!」
 海松の後を追うフェブルウス。
 その後ろ姿を、ロレンツォとアリアンナは顔を見合わせながらも追うのだった。

 そして、そことは離れた場所。
 ひとさらい達が財宝をため込んだ場所を、目ざとく見つけた一団がいた。
「これなど高そうでありますが……」
「確かに即物的な価値はあるな。だが、こっちのツボを見てみろ。これは、300年ほど前にだな……」
 高そうなネックレスと古いツボを抱えてああでもない、こうでもない、とやっている二人。
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)上田 重安(うえだ・しげやす)である。
 吹雪は高そうなものを、重安は面白そうな美術品を薀蓄を述べながら探している。
 二人の価値観がぶつかり合わないのは幸運なのかもしれないが、こんな所で宝探しをしている時間がもう一人……コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)には惜しくてたまらなかった。
「もういいでしょう、ニ人とも。さっさと子供達を助けに……」
「しかし、この王冠など高そうでありますよ?」
「まあ、待て。その王冠は確かにでかい宝石がはまっちゃいるが、芸術的な価値という視点から見ればだな」
「ふーたーりーとーもー」
 この三人の中では、唯一の常識人という自負もあるコルセア。
 人の話を聞いちゃいない吹雪と重安をどうやったら説得できるのか悩んでいたが、答えが出ない。
 無理矢理連れて行くしかなさそうだが、どうしたものか。
 いっそ、宝物を全部持っていかせれば話は早いんじゃないだろうか?
 コルセアが悩む間にも、吹雪と重安はああでもない、こうでもないと価値談義を続けている。
 これもまた、他の仲間を信じているが故の行動ではあるのだろうが……コルセアの心配ももっともだった。
 何故なら、ひとさらいの親玉はまだ、洞窟のどこかにいるのだから。