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モンスター夫婦のお宝

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モンスター夫婦のお宝

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その5 新婚さん、さようなら 

 
「と、いうわけで、周囲の人たちも困っているんだよ」
 大きな椅子の上で両手に赤子を抱く飛影に、ファーニナルがなにやら口にしていた。
「この洞窟のモンスターも、どことなく荒れていたしね」
 ロゼが言葉を補足して付け足す。
「あいつらにはここに近づくなって思いっきり言っておいたからなあ。しゃーねんだ、突然もよおしたわけだからなあ」
「もよおしたって……」
「予定日の一月前だぞ? こんな早くなるとは思わなくてなあ」
 飛影は息を吐いて口にした。
「落ち着ける場所がねえかと思って必死に探したんだよ、そしたら、ちょうどいいとこに洞窟があったじゃねえか」
 かっかっか、と笑って飛影は言う。
「おかげで出産は大変でしたわ。侍女たちがいろいろと手を回してくれましたので、なんとかなりましたけど」
「あー、すまん、美影、この通りだ」
「もう、そのことはいいですわ」
 結構な身長差がある美影に向かって、大きく頭を下げる飛影。なんともシュールな光景だった。
「まあでも、こいつらもだいぶ落ち着いたからなあ」
 結構な早産だったらしいが、赤ちゃんは見る限り健康そうだ。ころころと丸く、わずかに赤いみずみずしい頬。半獣人の飛影たちの子らしいが、正直、人間の子供と大差ないくらいだ。
「お前らの言うこともわかる。そろそろここから出ることにすっかな」
「行くあてとか、あるんですか?」
 カルが聞く。
「まあ、俺たちにも住んでたとこってのはある。こいつらが大きくなるまでは、放浪生活するわけにいかんだろう」
「そうですわね。落ち着けるところで、この子たちを育てたいですわ」
「そうだな」
 飛影と美影はそう言って笑い合い、赤ちゃんの顔を見つめた。飛影がかっかっか、と笑い声を上げると、赤ちゃんの片方が目を覚ましたのか、ぎゃあぎゃあと泣き始める。
「うお、おい美影! どうすりゃあいいんだ」
「はいはい、こっちですよ」
 美影は飛影から赤ちゃんを預かり、ゆっくりと揺さぶる。
「はあ……可愛いなあ」
 美影の隣で、朋美が覗き込んでいる。
 雅羅と歌菜も、目を輝かせて赤ちゃんを見ていた。
「確かに可愛いでありますね。……一銭にもならないですけど」
「物騒なことを抜かすな」
 吹雪の言葉に夏侯惇が突っ込む。
「モンスターだからって、悪さしてないのに宝奪うのは良くないと思うんだ☆」
 裁が吹雪の近くにしゃがんで口にする。
「やかましいですよ。奪われる方が悪いんであります」
「ま、確かにそうだよなぁ! 盗まれる状況で盗まれるものを持ってる方も悪いし、それを守る力もないやつも悪い、ってな」
 なぜかゲブーが同意した。
「人からものを盗むなんて、最低の人がやることだわ」
「その通りだぜ! てめえら、いくらなんでもんなことすんじゃねえぞ!?」
 が、雅羅が口を開くと意見を正反対に変える。
「なんて都合のいい……」
 夢悠が呆れたように言った。ゲブーはがはは、と、笑い声を上げた。




「ま、これでこの洞窟の怪物どもも落ち着くだろう」
 数日後、洞窟から出る飛影たちを、皆で見送りしようという話になり、洞窟に再度、雅羅たちは集まっていた。
「美影さん、これ、荷物が増えてしまって申し訳ないんですけど……」
 朋美はおむつやらなにやら、おめでたのお祝いをいろいろと美影に渡す。美影は優しく笑って例を言った。
「めでたいことは、陽気にお祝いしたほうがええわいな、ええ?」
 トメは一升瓶とコップを取り出し、周りのメンバーに配って歩いている。シメも文句を言いながらも、トメについて回った。
「未成年者はお酒はダメだよ。さぁ、代わりに蒼汁を飲むんだ☆」
「…………なんです、それ?」
 裁は怪しげなドリンクを配っていた。ロゼがそれを匂いだけ嗅いで険しい顔をする。
「次は最後の一枚まで勝負しようぜ、兄弟!」
「おうよ! 次は一方的に負けんじゃねえぞぉ?」
 ドリル・ホールは飛影に拳をぶつけて言った。
「うちのドリルが、いろいろとすいませんでした」
 カルが頭を下げる。
「なに、いいってことよ。こういうのは楽しんだもん勝ちなんだからよ」
 飛影はかっかっか、と笑って口にした。
「お前らもな。ちゃんと互いを大事にしやがれよ」
「はい!」
 少し離れた場所で、歌菜が嬉しそうに頷いた。羽純も、小さく「ああ」と答える。 
「それじゃあな、てめえら。楽しかったぜ」
「ごきげんよう、ですわ」
 侍女たちを携え、飛影たちは歩いていった。しばらくはこちらを向き、手を振る。皆がそれに、手を振り返していた。
「ふう……解決ですね」
「お疲れ様です、ファーニナル大尉」
 ファーニナルとカルが、ねぎらい合う。
「はあ……新婚さんかあ。いいなあ」
「朋美、あんたかていつか、ええ人が現れますわ」
「ええっ!? ぼ、ボクはそんなの、まだまだ先だよ!」
 シメの言葉に、朋美が顔を赤くした。
「赤ちゃん、可愛かったわ」
「雅羅、もし子供が欲しくなったら、いつだって俺様の元へ……あべしっ」
「セクハラだよ」
 妙なことを言い出したゲブーの頭を夢悠がチョップする。
「ごほん。まあでも、雅羅さんもきっと、将来的にはそういうことがあるだろうからね。ええと、実はオレ、結構小さい子には好かれるんだよね」
「………………」
 ちょっと顔を赤くして言う夢悠に、雅羅は恥ずかしそうに顔を赤く染め、
「もう、いつもいつも、困らせるようなこと言わないでよ!」
 そう言って夢悠に背を向け、歩いて行ってしまった。
「あ、雅羅さん!?」
「てめえこそセクハラじゃねえか」
「うるさいよ! そっちこそ!」
 口ではそうやって言い合いをしながら、夢悠とゲブーは笑う。
「雅羅! おーい待ってくれよ!」
「雅羅さーん!」
 そして、並んで雅羅の背中を追った。
「……ねえ、羽純くん」
「なんだ?」
 飛影の背中を見ていた羽純に、歌菜が話しかける。
「羽純くんは……その、子供とか、欲しかったりする?」
「こどっ……」
 羽純が顔を真っ赤にして振り向く。歌菜もわずかに頬を染め、伺うように羽純の表情を伺っていた。
「あー、えっと、子供……子供ねえ」
 羽純は頬をぽりぽりと小さくかいて、向こうをむいたりあっちを向いたりとせわしなく視線を動かしてから、
「……まあ、将来的には?」
 羽純が答えると、歌菜は赤くなった顔をますます赤くして、
「……うん」
 ちょっとだけ嬉しそうに、答えた。
 わずかに身を寄せて、羽純に向かって指を動かす。羽純は歌菜の指に指を絡め、やがて、二つの手は一つに繋がった。
 二人は遠くの景色を、並んで見つめる。
 いつの間にか、飛影たちの姿は見えなくなっていた。
 彼らが去った方向へ歌菜は小さく「ありがとう」と口にし、二人は並んだまま、歩き出した。

担当マスターより

▼担当マスター

影月 潤

▼マスターコメント

 みなさんはじめまして。
 この度、リアクションを書かせていただくことになりました、影月 潤と申します。
 まず言い訳から入って申し訳ないのですが、今回、リアクションの執筆は初めてとなります。新人です。ペーペーです。三流です。
 みなさんくらいのレベルになるとたくさんのマスターの方にいろいろな作品を書いてもらっていて目も肥えているでしょうから、僕の作品をいざ読んだとき、おそらくいろいろと感じることがあるかと思われます。
 正直な感想として、いかがだったでしょうか。何度も見直ししたので矛盾などはないと思いますが、楽しんでいただければ、本当に幸いに思います。
 もちろん、辛口な評価もあるかと思われます。もっとこうして欲しかった! とか、あたしのキャラはこんなんじゃないわよ! とか、思ったでしょう。
 そういった意見、是非とも今後の参考にさせていただきたいです。もしよろしかったら、ご意見ご感想やその他もろもろ、よろしくお願いいたします。

 さて、新人とはいえマスターとして参加させていただいている以上、今後も活動を続けていく所存です。
 今回の話がよかった、と思う方は是非とも次回もお付き合い頂きまして、今回はよくなかった! という方は僕の成長を見守っていただいて、末永くお付き合いいただけたら幸いです。
 今後とも作家、影月潤を、ぜひともよろしくお願いします。

 
 http://www.geocities.jp/junkagezuki/  僕のHP、『影月 潤の伝説の都』です。
 
 役に立たない日記とかもあるので、もしよろしければどうぞ。


 個別コメントは、皆さまへの簡単な感謝の言葉とアクション等への感想となります。
 それと、皆様に称号を贈らせていただきました。
 どうもまだコツと笑いどころを掴んでいないのですが、喜んでいただきますと幸いです。