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アトラス・ロックフェスティバル

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アトラス・ロックフェスティバル

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TRACK 13

「さすが後半戦、いきなりとんでもないバンドじゃのう」
 総スパンコールのロングドレスを身にまとったシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)が唸った。ドレスは肩紐で吊るすタイプで、体のラインが出るタイトな物だ。アクセサリ代わりに、ダミーのシロヘビを体に巻きつけている。
「今回は勝つよ。特訓してきたんだからな」
 ガガ・ギギ(がが・ぎぎ)がドラムスティックを打ち鳴らしながら言う。衣装は昭和50代風のもので、黒地にピンクやオレンジの鳥の羽の図案があしらわれている。
「今度こそトップを取ろうぜ」
 ガガのパートナーである弁天屋 菊(べんてんや・きく)も強気だ。このあたりは言うなればパラ実生にとってホームグラウンドであり、観客の心をつかむ上では有利なのだ。菊の衣装は紫のチャイナドレスで、下にはさらしを巻いている。
「一度こうやってバンドを組んで、大きなステージに立ってみたかったのです。さあ、いよいよです」
 シルヴェスターの弟子、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は興奮を隠せない様子。黒いスーツで、ベースを構えてステージに出る。
 ガガのドラゴニュート奏法によるドラムで曲が始まった。


『一番☆のブルース』

作詞作曲:シルヴェスター・ウィッカー



キマクの荒野に風が吹く  日暮れと共に影が消え
空に輝く一番☆は   影を出すには足りないが
ヒャッハ〜 ヒャハアアァ〜  輝く星を見ていたら
影がないのも悪くない

シャンバラ荒野を駆け巡り  埃まみれの俺だけど
空に輝く一番☆に    そんな俺でも憧れる
ヒャッハ〜 ヒャハアアァ〜  三下役の俺だけど
分かる奴がいるはずさ


 昭和50年代のロックブルースだが、ボーカルの菊は演歌風のこぶしがまざっていて、それがレトロな雰囲気を強めていた。
 ここから菊によるギターソロが続き、それに合わせてシルヴェスターによるメンバー紹介が行われる。
「よく集まったのう、野郎ども!(歓声)
 わしらが『トラック野郎一番☆』じゃ!(歓声)
 それじゃメンバーを紹介しちゃるけん。
 
 まずはドラム、キマクのドラゴン、ガガ・ギギ!
 ベース、ボルサリーノ?ことガートルード・ハーレック!
 ギター! シャンバラの紅弁天、弁天屋・菊!
 そしてこのわし、メインボーカルのキマクのシロヘビ、シルヴェスター・ウイッカーじゃあ!!」


パラミタ大陸うろついて  切った張ったの立ち回り
空に輝く一番☆は   盗みたくても盗めない
ヒャッハ〜 ヒャハアアァ〜  輝く星を見ていたら
こんな俺でも安らぐさ

ヒャッハ〜 ヒャハアアァ〜  輝く星を見ていたら
こんな俺でも安らぐさ


 これはパラ実生以外にはおおよそ不評だった。
 しかし“パラ実生”のなかには学生と呼ぶにはだいぶ年長の層もあって、そこからは熱烈な支持を受けることになった。