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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?

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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?
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 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)と、天穹 虹七(てんきゅう・こうな)は、吉水神社に留まっていた。日本の文化に影響を受け、たアリアは、メイド服ではなくて、割烹着スタイルである。
「ここは秀吉もお花見をしたという神社なのね…春にも来てみたいわ。ねえ、虹七ちゃん」
「私、みんなと遊びたい…」
「そうね、精霊との交流も大切よ。一緒に遊んでおいで。ねえ、精霊さん、天狗さん、みんな出てきてくださいな。一緒に遊びましょう?」
 アリアが声をかけると、結界の人間たちに興味を持っていた精霊たちが、顔を出す。木霊に、山伏の格好をした天狗にすみれ、あざみ、ヤマユリなどの花の精霊たちが、ちょこちょこっと二人に駆け寄ってくる。
「みんな、『鬼ごっこをしなさい』って行者様から言われているのかな?」
 アリアの言葉に精霊たちは顔を見合わせると、黙り込んでしまう。
「ああ、ごめんなさい。責めるつもりでもなんでもないの。せっかくだから、虹七ちゃんと遊んでくれないかしら?」
「……一緒にあそぼ?」
 精霊たちは顔を見合わせていたが、アリアの優しげな雰囲気と、自分たちと似ている虹七に心を開いたようで、首を縦にふった。
「良かったわね、虹七ちゃん。でも私から見えなくなってしまうほど、遠くに行ってはダメよ?」
「うん、わかった! みんな、私が鬼だよ。数えるよ? 逃げてね。いーちー、にー、さーん…」
 精霊たちは散り散りに逃げ出す。
「うわあ、みんな早い…」
 そういいながらも、虹七は嬉しそうに鬼として、神社の中を駆け回っている。
 虹七達が鬼ごっこを始めたので、アリアは神社の箒を借りて【ハウスキーピング】のスキルで神社の境内を掃き掃除しながら、虹七達を笑顔で見守っていた。その、後ろ姿に人影が近づいて、アリアに話かけてくる。
「お嬢さん、こんなところで何をされているのですか?」
「掃除です。私はメイドですし、せっかく吉野のお山に来させていただいたのです。お清めさせていただきたくて。…ねえ、黒鬼さん?」
「は、はい…」
 アリアの言葉に黒鬼はどぎまぎとした照れを隠せないようだった。
「おびえないでください。私はあなたを罠にかけようと思って、こんなことをしているのではありません。少しお話ししませんか?」
「あ、はい、いや、ははは」
 今までの黒鬼はどこへやら。足先でへのへのもへじを書いたり、と、落ち着きないことこの上ない様子。
「皆楽しそうですね。役小角さんもこんな修行していたんですか?」
「そ、そうですね、行者様は大変に厳しい方ですが、心の広い方でもありまして…」
「もしかしたら彼は古の契約者だったのかもしれませんね」
「…アリアさん、と申されましたね」
「はい、アリア・セレスティと言います」
「あなたは何もかも、お見通しの上、私の今の理想を体現していらっしゃいます。これ以上、鬼ごっこを続けるのではなく、私はもっとあなたとお話がしてみたい…これをお受け取り下さい」
 黒鬼はキラキラと恋する眼差しと、上気した頬で、自分の懐から仄かに光を放つ、玉を出してくる。
「これは…??」
「『だらすけ丸』でございます。あなたのような方に受け取っていただけるなら、師も私のことを許してくれるでしょう」
「…嬉しいことですが、黒鬼さんが怒られてしまうのでは? 大丈夫ですか?」
「あなたの為に叱られるなら、それも本望です!!」
 どうやら軽いMっ気があるらしい黒鬼だったが、アリアはそのようなことには気がつかず、
「ありがとうございます。とても綺麗」
 と、美しく光るだらすけ丸を手にした。
 その瞬間、吉野山に張られていた結界がすうっと消え、凍っていた鬼も、罠にかかっていた生徒たちも、全員が解放されたのだった。









【第2章 色気より食い気、誠意より胃袋】




「天河神社は、弁財天をお祀りし、芸事、芸能の神様としてもよく知られているんだ。また、神様に選ばれた人ではないと、なかなか参拝するチャンスにも恵まれないとも言われている、日本のパワースポットの一つと言えるね、また、空気の圧力が母体内に似ているらしいとも言われていて、非常にリラックスできる場所でもある…」
 赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)は、引率者として天河神社の説明を行っている。
「『こおりおに』ってなんでありますか」
 美しい機晶姫、アイリス・零式(あいりす・ぜろしき)が霜月に質問する。
「じゃんけんなどで、『鬼』と『子』を決めて、『鬼』が『子』をタッチすると、『子』が動けなくなっちゃうって遊びですよ。他の凍ってない『子』にタッチして貰えば、凍った『子』も動くことができるんです」
「よし、ボクは山の幸をゲットするためにも、黄鬼を捕まえてやるぜ! 霜月、お弁当を持ってきてたよな! それで黄鬼を捕まえてやる!」
 メイ・アドネラ(めい・あどねら)は鬼ごっこというよりは、山の幸と温泉に興味津々なようだ。
「言葉遣いが乱暴だよ、メイ。そうだね、自分の作ってきたお弁当があるから、それをみんなで食べようか。楽しそうにしていると、黄鬼が来る可能性もあるしね。まあ、ゆっくりと天河を楽しもう」
 アイリスが歌を歌いながら、黄鬼を探して境内の中を散策して回る。
「あれはなんですか?」
「五十鈴だよ。五十鈴は、天河神社独特の神器で、天宇受売命(あめのうずめのみこと)があれを持って踊り、照大御神が天岩屋戸から出ていらしたという経緯があるんだ」
「…凄いですね。地球の神社って不思議なところがいっぱいであります」


「よおっし! 黄鬼さんはさっさと捕まえて、この神聖な天河神社散策を楽しんじゃいましょう! 黄鬼さんもなかなかデブ…いや、ふっくらボディで可愛かったもんね! お友達になってウクレレ弾いて貰いたいなー」
 蒼空学園の段ボール・ロボ、あーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)はそのボディに「度梨不の雷様3人衆」をペイントし、意気揚々とお弁当を広げていた。
「うまそうじゃのう」
 筐子の師匠、一瞬 防師(いっしゅん・ぼうし)が手を出そうとする。
「師匠、いけません!」
「ケチなことを言うのう、筐子」
「それはただのお弁当ではないです。睡眠薬たっぷり、食べたら即、ナイトメアの世界へ飛び立てる代物なのですよ…師匠の体のサイズの人が食べたら、睡眠を通り越してあの世に行ってしまうかもしれません」
「な、なんと! 幸せな家庭を築く前にあの世に行っては何にもならん!! 南無南無〜」
「せっかく奈良まで来たって言うのに、鬼ごっこなんて…ひょっとして、三鬼を使役して私たちの実力を試してるのは役小角なのかしら? 黄鬼を捕まえたら、誰に命令されたのか問い質してみたいですわね。とはいえ、私は料理下手…ここは『おやつにはバナナははいりますか』『おやつは300円までです』って一連の下りでもめたシャンバラのおやつ、黄鬼に差し出しましょう。…黄鬼さーん、美味しい異国のおやつですよ〜」
 アイリス・ウォーカー(あいりす・うぉーかー)も、色とりどりのお菓子をシートの上に広げ、見栄えが良くなる工夫をしている。


「ふふ、おぬしらも同じことを考えておるようじゃな」
 そこに和装の美人と黒い瞳の美形が姿を現す。悠久ノ カナタ(とわの・かなた)緋桜 ケイ(ひおう・けい)のエキゾチックインスミールコンビであった。
「手作りのお弁当に、異国のお菓子…うむ、確かに黄鬼の心をときめかせるやもしれぬ…しかし、黄鬼は黄色。コレには特別な意味があるはずじゃ!」
 カナタが綺麗な顔に似合わぬ言い方で、かっと刮目すると、その場にいた連中はみんなその迫力に押されてしまう。
「…な、何が言いたいのかしら…」
 筐子が我に返って、カナタに質問し返すと、カナタがにやり、と笑う。
「あやつの色は黄色! ジャパニーズトクサツムービーにおいて、黄色と言えば食いしん坊! そして好物といえばカレー! 黄鬼も食いしん坊という点で合致しているし、きっとカレーも気に入るに違いないぞ。ここは丁度、土産に買っておいたカレー味の八橋でやつを釣ってみるとしようぞ!!」
「ま、まあ確かにね…」
「そうじゃな…」
「カレー味の八つ橋ってあるんですのね…」
 筐子やアイリス、一瞬 防師は自信満々のカナタに返す言葉もない。
「すみません、みなさん…日本のオタク文化に久々に触れて、カナタはちょっとテンションが上がってるみたいなんで。どちらにせよ、俺たちもここで黄鬼をおびき寄せるのに、参加させてもらっていいっすか?」
 ケイはいそいそとカレー味の八つ橋を広げているカナタのフォローをする。
「もちろん、構わないわよ! なんだかキミたち、かわいいし!」
 筐子がきゃ! っとハートマークを飛ばして、OKサインを出す。