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夢のクリスマスパーティ

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夢のクリスマスパーティ
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夢の中であなたと

『香鈴の催眠術』

 そういう看板を立て、催眠術をやりに来る人を待っていた香鈴の元にクラーク 波音(くらーく・はのん)が一番乗りしてきた。
「プレナお姉ちゃんとの夢を見せて欲しいんだ!」
 波音は青く大きな目をキラキラさせ、香鈴に頼んだ。
「はいはい、良いですアルヨ〜」
 香鈴は波音にプレナの事を聞き、催眠術をかけた。

 すると、夢の中で波音は、美しく装飾を施されたクリスマスツリーの前でプレナと待ち合わせをしていた。

「こんにちはぁ。今日は寒いね」
 雪の降る夜の街で、プレナが微笑む。
 姉のように慕っている大切な人の微笑みに、波音も思わず笑みが零れる。
「ちょっと寒いけど。でも、プレナお姉ちゃんとホワイトクリスマスを一緒に過ごせて幸せ!」
 ぎゅっとプレナの腕にくっつき、波音はプレナと一緒にクリスマスツリーを見上げた。
「とっても綺麗だねえ」
 キラキラとした電飾に照らされ、二人は微笑みあう。
「そうだ、これ、クリスマスプレゼント……」
 波音が可愛らしい包装紙で包まれたプレゼントを渡す。
 手作りの品なので、自分で包装をしたため、あまりうまくいかなかったな……と思った波音だったが、プレナはそんなことは気にせず、渡された包みを大事そうに受け取った。
「開けてみていいかなぁ?」
「うん、もちろん!」
 波音が頷くと、プレナは包みを開けた。
 すると中には波音が編んだ毛糸の手袋があった。
「わぁ、かわいい。ありがとう」
 プレナが波音の頭を優しく撫で、波音はうれしそうに笑った。
「そうだ、一緒にケーキ食べようかぁ。大きなクリスマスケーキ買ってあるんだぁ」
「行く行くー!」
 波音は満面の笑顔になり、プレナについていくのだった。


 鬼院 尋人(きいん・ひろと)が目を閉じると、そこには魔物に囲まれた黒崎天音の姿があった。
 いつも余裕そうな笑みを浮かべている天音が、リターニングダガーを手に、珍しく長い黒髪を乱して戦っている。
 前衛型ではない天音は、魔物を倒すことも、その囲みを破ることもできず、隙を窺いながらも動くことができず、じりじりと追い詰められていた。
「黒崎!」
 そこに白馬に乗った尋人がランスで魔物をなぎ払い駆けつけてきた。
 尋人が手を伸ばし、天音の手を取って、自分の白馬の後ろに乗せ、魔物の群れから脱出した。
 白馬が魔物が追いつけないほどの速さで駆け抜ける。
「ありがとう、鬼院」
 背後の天音の腕がきつく尋人を抱きしめる。
 憧れていて、でも、遠くて。
 触れたいと思いながら追いつけなくて。
 その天音が今は自分を頼るように抱きついてくれている。
 その事実に嬉しさと恥ずかしさがこみ上げて、尋人はドキドキと胸が高鳴った。
「黒崎……」
 彼の名を呼び……尋人はふと自分の腰の辺りに何かが当たっていることに気づいた。
「ん……」
 視線を後ろに向ける。
 すると、そこには肩に制服をかけた天音の姿ではなく……。
「鬼院、さあ君もそんな鎧を脱ぎ捨てて私と一緒に全裸になろう! さあ!」
 薔薇の美しいマントだけを羽織った、変熊仮面の姿があった!
「うわああああっ」
 思わず叫び声を上げ、尋人が目を覚ます。
「大丈夫ですアルカ?」
 香鈴が尋人を心配して駆け寄ってくる。
 尋人の近くでは、波音が「こんなに大きなクリスマスケーキを、プレナお姉ちゃんと食べられるなんて……えへへへ」とニヤニヤしながら寝ていたが、尋人は汗びっしょりだった。
「……なんなんだ、この催眠術は。話が違う!」
 顔を真っ赤にして怒り、尋人はその場を立ち去った。
 しかし、廊下を歩きながらふと、尋人は思い直した。
「……常にすべてを曝け出している強さに、どこかで憧れているのかな……?」
 気負って、強くなりたいと願って、騎士の鎧で身を固めても、それは真の強さではないのではと、尋人は思った。
 だから、変熊の強さを認め、それに心のどこかで強い憧れを抱いているのではないかと。
 そう思ったのだが……。
「あれー。11月11日生まれの薔薇学の先輩っていうお話だったアルのにな〜」
 尋人がいなくなった後、香鈴がそんな風に首を傾げているのは……尋人は知らぬことだった。