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【2020節分】ハチャメチャ豆撒きロワイヤル

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【2020節分】ハチャメチャ豆撒きロワイヤル
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●試合終了、最後はみんなで美味しく頂きましょう

 ミーミルが結界を破裂させてしまったので、『ハイブリッド豆撒き』は終了となり、集まっていた生徒たちは本来の豆撒きに興じたり、自発的に掃除をし始めたりしていた。皆一様に疲れてはいたが、表情には笑顔が浮かんでいた。
「さあ、恵方巻と蕎麦が出来上がりました。どうぞ食べていって下さい」
「蕎麦はおにいちゃんが打ったんですよ。私は恵方巻の下ごしらえをしました」
 バトルが一段落ついたという知らせを聞いて、それまで学校の家庭科室で料理を作っていた本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)が、校長を始めとした生徒の皆に恵方巻と二八蕎麦を振る舞う。
「蕎麦は元々、立春の前日である節分、つまり今日に年越し蕎麦として食べていたという風習があります。恵方巻もやはり縁起物ですね。皆の無病息災を食で祈るのには丁度いい二品だと思います」
 訪れた生徒に品物を渡しながら、涼介がそれらの由来を説明する。
「そういえばおにいちゃん、恵方巻はその年の恵方を向いて食べると縁起がいいって聞いたよ?」
「ああ、そうだね。今年は2020年だから……北北西やや右かな」
 それを聞いた生徒の何人かは、何やら色々と願い事をしながら北北西やや右を向き、恵方巻を口にしていた。
「はい、どうぞ。私も少し、お手伝いさせてもらったんですよ」
「わぁ、ありがとうございます。あの、ごめんなさい、何もすることができなくて」
「いいんですよ、私も途中までここで豆撒きを皆さんと楽しんじゃいましたし。今日は本当に楽しかったです」
 ミリアから恵方巻を受け取ったミーミルが済まなそうにしながら、色とりどりの具の詰まった恵方巻を口にする。
「干瓢、胡瓜、椎茸、出汁巻、鰻、田麩、三葉……どれも良いものを使ってますねえ」
「おば……豊美ちゃん、漢字なのはいいですけど、私にいちいち聞くのはどうかと思いますが」
「い、いいんです! ウマヤドを頼りにしているってことなんです!」
「はいはい……そういうことにしておきましょう」
 豊美ちゃんと馬宿が、恵方巻に舌鼓を打つ。
「こちらも、豆腐鍋が出来ましたよ。どうぞ召し上がって下さい」
 そして、先の戦いでは盾として大活躍した豆腐を鍋にして、本郷 翔が皆に振る舞う。
「いい匂いがするですぅ〜。カンナ、食べに行くですぅ」
「あら、珍しく意見が合ったわね。じゃあ行きましょうか」
「こら待て、まだ話は終わってない――」
 アルツールに正座で説教を受けていたエリザベートと環菜が、美味しい食べ物の前には意見を一致させて抜け出す。額に手を当てて呆れるアルツールも、既に仲達を誘ったシグルスに連れられて、歓談の場へと向かっていった。
「おぉ、何やらいい匂いがするかと思って来てみたら、美味しそうじゃのう。私たちもいただくか」
「ええ、そうですね、アーデルハイトさん」
「あー! 大ババ様、いなくなったと思ったらどこに行ってたですかぁ!?」
「ルミーナが何も言わずに姿を消すなんて、珍しいわね」
 やって来たアーデルハイトとルミーナに、エリザベートと環菜が問いかける。
「ま、かくかくしかじか、という奴じゃ。なあに、不穏なものではないよ。ちゃんとお互いの利益にもなっとる」
「大ババ様の言うことはいつもうさんくさいですぅ〜。年を取るとああなってしまうんですかねぇ」
「なんじゃと!? そんなこと言う口にはほれ、これでも詰め込んでやるわ!」
「止めるですぅ、大ババ様が全部食べればいいですぅ。足りないと思いますからぁ、持ってくるですぅ」
「持ってこんでええわ!」
 二人のやり取りに笑いが溢れ、会場はさらに賑やかさを増していった。

「校長の魔法のかかった豆など、煮て大丈夫なのか心配だったが……問題ないようだな。後はこれをどう調理するかだが……」
 バトルで使われた食材が加工されて美味しく振る舞われている様を見遣って、ヨヤ・エレイソン(よや・えれいそん)が思案する。彼の目の前にはウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)ナーシュ・フォレスター(なーしゅ・ふぉれすたー)がせっせと拾い集めてきた豆が煮立てられていた。
「ウィル殿ウィル殿、ルナちゃんはおなかがすいたでありますー!」
「俺だって空いてんだ……っていってえ! 止めろこっち来んな、もう豆ぶつけられるわ納豆ぶちまけられるわでヘトヘト……うぎゃー!」
 無邪気にじゃれついてくるルナール・フラーム(るなーる・ふらーむ)の所為で、ウィルネストが悲鳴をあげる。自称、怪人勿体無いお化けとして、混沌と化したフィールドの中、両手に装備した虫取り網で豆を回収していたおかげで、ウィルネストはあちこち傷だらけであった。
「これで食費が浮くでござる……!」
「どう調理されるか楽しみだな。美味いものになればいいが」
 やはりお腹を空かせたナーシュと井ノ中 ケロ右衛門(いのなか・けろえもん)が、ヨヤの調理を見守る。家事一切を取り仕切っているだけあってその手際は見事なもので、鍋の中にはほのかによい香りを漂わせる調理された豆が出来上がっていた。
「む、いかん、調味料が足りんな。彼らに持っていないか聞いてみるか。……おい! 遊んでる暇があったら、とりあえずこれでも見張っていろ! いいか、何かするなよ、絶対に何かするなよ!」
 味付けの段階で足りないものに気付いたヨヤが、遊んでいるというより一方的にボコされているように見えるウィルネストを呼びつけ、自分は料理を振舞っている者たちに尋ねるべくその場を後にする。
「ま、あんな風に言われたら何かしたくなるのが道理ってモンだぜ! つうわけでナーシュ、JAPAN大好きなナーシュのために、JAPANの有名食料入れといてやるぜ!」
 悪巧みする時の表情でウィルネストが、豆撒きの最中にぶちまけられたのを回収しておいた納豆を鍋の中に放り入れ、手早くかき混ぜ蓋をする。
「おお、それは楽しみでござるな。お先に味見してもよいでござるか?」
「んー、そろそろ大丈夫か? 納豆菌って、煮た大豆に混ぜ込むだけで納豆になるくらい威力凄いらしいしな……
「? ウィル殿、どうしたでござるか?」
「ああいや、何でもねえよ。んじゃ開けてみ、きっとナーシュ好みに仕上がってるはずだぜ」
 ウィルネストの勧めで、ナーシュが蓋を開ける。直後、ナットウキナーゼが一仕事終えたばかりの、出来たてホヤホヤの納豆特有の臭いが、ナーシュの鼻をつく。
「くぁwせdrftgyふじこ!?」
「きゃうん! これすっごいくさいであります!」
 意味の分からない言葉を吐きながらナーシュがのた打ち回る。くんくん、と鍋を覗き込みながら鼻をうごめかせたルナールも、慌てて鼻を押さえて辺りを駆け回る。
「ははははは、どーだナーシュ、JAPANを堪能出来ただろ!?」
「は、謀ったでござるな!? 拙者が納豆嫌いなのを知っての狼藉……うわーん! 拙者はこんな腐った豆食べられないでござるー!!」
「そうか!? 結構いけるぞ、これ。ほーれ、うまいぞー?」
「止めろでござるー!!」
 嘆くナーシュが、ケロ右衛門に納豆をちらつかされて逃げ回り、同じく駆け回っていたルナールと正面衝突して二人ともその場に倒れこむ。
「さーて、静かになったことだし、俺も恵方巻を頂いてくるか――」

「ウィル……これは一体どういうことだ?」

 騒動をひとしきり楽しんだウィルネストが振り返ると、そこには調味料を手にしたヨヤの姿があった。
「げ、やべ――」
「どうしてこうなった……かは考えるまでもないな。ウィル、おまえがやったんだな?」
 逃げ出そうとしたウィルネストの首根っこを、ヨヤが掴まえる。家事一切を任される間に鍛えられた身体は、ウィルネストが抗おうとも決して動じない。
「おまえ、言っていたよな。「タベモノを粗末にしちゃーいけません!」と。……なら、俺の目の前でそれを実践してもらおうか。鍋を綺麗にするまで食事は抜きだからな!」
「み、見逃してくれヨヤさんっ」
「駄目だ! おまえはナットウキナーゼに醸されてこい!」
 ずるずる、と引きずられるウィルネストは、結局鍋に残った納豆を全て食べる羽目になったのであった――。

 外の喧騒が響く中、人影の消えた医務室で、ベッドに寝かされていた女子生徒が目を覚ます。
「ん……」
「あら、目が覚めましたの。気分はどうかしら?」
 聞こえてきた声に反応しようとして、女子生徒は自分の身体に違和感を感じる。そして、自分がベッドの上で手足を包帯で縛られているという事実と、自分を悩ましげな眼差しで見つめる佐倉 留美(さくら・るみ)の存在に気付く。
「な、何ですか? どうしてわたしがこんなことに!?」
「わたくしが、戦闘不能になったあなたをここまで運んで差し上げましたの。……あら、ここに痣が出来てますわ」
 言って留美が、指を女子生徒の肌に添わせる。ぞくり、と駆け上がる感触に女子生徒が身体を震わせる。
「やっ……やめてくださいっ!」
「つれないですのね、わたくしはかわいいあなたとお近付きになりたいだけですのに」
 何かを言い返そうとした女子生徒の口を指で塞いで、留美が自らのスカートに手をかける。ぱさ、とスカートが足元に落ち、ベッドに上がった留美の姿を見て、女子生徒が恥ずかしさに目を手で覆う。
「今日は節分、豆をいただく日だとか。……ではわたくしは、こちらのお豆をいただきますわ」
「そ、そんな……ああんっ!」
 二つの身体が一つに重なり合い、そして熔けていく――。

 ちなみに、『ハイブリッド豆撒き』バトル結果は、何とドロー。
 というわけで、二人の校長を始めとして、バトルに参加した生徒たちは修練場の掃除に追われたのであった。
「リベンジはならなかったけど、まあ、いいわ。私の額にケチつけた生徒は、後で制裁を加えるつもりだけど」
「ふふ、ほどほどにして下さいね。後でそのおでこ……額の治療をしないといけませんね」
「ミーミル、あなたの力で綺麗に出来ないですかぁ?」
「ダメですよお母さん、みんなで楽しく、ですよ?」
「私、腰が痛くなってきたんじゃがのう……」
「ウマヤド、動かないでくださいねー」
「おば……豊美ちゃん、これは一体何の真似ですか!?」
「エリザベートさんと環菜さんに迷惑をかけたそうですねー。勝手な真似をした悪い子には、お仕置きです!」
「お待ち下さい、話せば分かります――」
「問答無用ですっ!」
 ……こうして、節分の日は過ぎていくのであった――。

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

 ……最後(付近も)のオチがあれかい!
 とセルフツッコミをしたところで。

 どうも、猫宮・烈です。
 あんなの書いたことが豊美ちゃんにバレたら、問答無用で極楽浄土行き決定ですね。
 
 ……いや待てよ、そうなる前に豊美ちゃんをソッチの方向に染めてしまえば……!
 
 というわけで、有志の皆様、その手のネタを是非ともお待ちしております。
 豊美ちゃんは攻められると弱いはずです――



 「ドサクサに紛れて変なこと言わないでくださーい!!」



 ……ふう。
 こんなこともあろうかと、予備の身体を用意しておいて正解でした。
 
 話を元に戻しまして、節分の日のハチャメチャな節分、お届けします。
 ハチャメチャ過ぎました、反省します。

 バトル結果ですが、これは自分も驚きましたが、本当にドローでした。

 イルミンスール……生徒8、校長5、退場10
 蒼空学園……   生徒8、校長3
 (生徒1、校長5、退場−1としてポイント集計。案山子は生徒に含める)
 
 イルミンスール退場多過ぎです。らしいといえばらしいですが。
 まあ、この前も僅差でしたし、大差がつくことはないかなと思っていたのですが、こんな形で現れるとは。
 なんだかんだで仲良しな気がする二校です。

 豊美ちゃんも、随分と絡んでくれる方が増えました。
 イラストが追加された暁には、豊美ちゃん(と馬宿君)メインのお話が動き出すことでしょう。
 色々と要素は散りばめたつもりです。

 その内、魔法についての考察もしてみましょうかねえ……
 まあ、猫宮さんのシナリオは「こうです!」と言い張ったものが大体通るようになっているので(それが正しいことなのかは……まあ、特異ではあるでしょう。TRPGらしくないと言われるとそれまでですが、決して判定が有利になるようなことにはなってないです。カッコよく書かれているのは、それ以前にアクションの内容が充実しているからです。要はやりたいことを効果的に伝える、その想いが大切だと思います)、その辺りは皆様の想像力に委ねます。
 もし必要があればその時にコメントすることにします。
 
 それでは、次の機会にまた、よろしくお願いいたします。