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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

リアクション


第2章


 ジャタの森の中をタイヤ痕を頼りにおやじを追いかける。


「どうやら地面のタイヤ痕の通り、西へと向かっておるようじゃ」
 ベルナデット・アンティーククール(べるなでっと・あんてぃーくくーる)は箒に乗り、上空からおやじの動きを携帯で教える。
 おやじ自体は見えないが、茂みが時々動いている。
 まだ距離はあるが、普通のバイクより遅いので追い付くのは時間の問題だろう。
「このまま西へだな、了解!」
 追いかけるエル達からは少し距離をとりトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は軍用バイクで追跡していた。


「ちっ! シーリル、そっちはどうだ!?」
 国頭 武尊(くにがみ・たける)は軍用バイクに乗りながらトレジャーセンスを使用したが、反応が捕えられない。
「こっちもダメです。でもタイヤ痕は西に向かっています」
 シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)は武尊の運転するバイクのサイドカーで同じ事をしていたが、同じく反応を捕えることは不可能だったようだ。
「見えたぞっ!」
 上空からジェイコブ・ヴォルティ(じぇいこぶ・う゛ぉるてぃ)の声が降ってきた。
 ユウガ・ミネギシ(ゆうが・みねぎし)を小型飛空挺の後ろの乗せている。
「はっはーーっ! このまま最高速度で西に飛ばして行けよ!」
 ユウガが咆哮をあげるように叫び、一緒に来ている人達に告げる……というか、自分が叫びたかっただけかもしれないが。
「今、地図で最短のルートを見ます」
 シーリルは精一杯叫んだが、上空にいるジェイコブはともかく、ユウガには聞こえていないだろう。
「騒々しい人ですね……」
 樹月 刀真(きづき・とうま)はユウガを見つめ、少しだけ眉をひそめた。
「刀真……眉がつながりそう」
 そんな様子を漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は指摘した。
「これは不可抗力ですよ」
 2人とも自分の小型飛空挺に乗り、おやじから目を離さないようにしている。
 刀真は自分の携帯で地上の武尊達におやじの位置を知らせようとしていたが、ジェイコブやユウガの叫び声で十分聞こえるのでやめた。
「呼雪? ……こっちはおやじを確認」
 月夜はいつの間にか携帯で少し離れた場所から追跡している早川 呼雪(はやかわ・こゆき)に電話していた。
「うん……まだ、追い付いてない。…………任せて」
 そう言うと月夜は携帯を切った。
「トレジャーセンスだけでダメならこれでどうだ!」
 総司は捜索とトレジャーセンスを組み合わせ、『シナモンスティック』の反応を探る。
「ん?」
 何かを探り当てたのか総司が反応した。
「正確な場所が分かりました!?」
 シーリルが総司に問うが、何故か心ここにあらずだ。
「これは……バストトップ90とみたっ!!! アンダーが細い分これは……」
「な、何を探し当ててしまったんですか!?」
 シーリルはびっくりして、地図を落としそうになる。
「私の胸ッスか!?」
 サレンは自分の胸を押さえている。
「いや……違うぜ。これは少し遠いな。今、ホイップさんがいる辺りか?」
 総司は冷静に分析をしようとする。
「早くおやじを見つけるッス!!」
「そうですよっ!」
 しかし、サレンとシーリルからツッコミが入り断念となった。
「どうやら、このまま西へと真っ直ぐ向かっているようだ。少しだけ北へ……む? また軌道修正……」
「地図では……あ、少し先に巨木があるみたいです。それを避けて通っているだけみたいですね。このままジャタの森を抜けて平原に出るとしたら……少しだけ南に行って下さい! その方が近道です!」
 総司の言葉でシーリルが最短距離を指示した。
「反応を普通に探るより時間がかかった気がするが……」
 総司の隣では乗っけてもらっているからか、大人しかった大佐が呟いた。
「……」
 上空では真剣な表情をした鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)が小型飛空艇で黙って最短ルートを進んでいく。
「黙って一点集中してる洋兵さん……かっこいい!」
 ユーディット・ベルヴィル(ゆーでぃっと・べるう゛ぃる)は箒に跨りながらそんな洋兵に顔を赤らめていた。
「……」
 ジェイコブはそんなにも怒りをあらわにしている洋兵に声を掛けようとしたが、うまく言葉が見つからなかった。
 しばらく進むと、最短ルートが功を奏しおやじを地上でも目視出来る位置まで追い詰めた。
「ひゃっほーいっ! これでも食らうが良い!」
 おやじを捕えらると思ったのだが、おやじは何か丸い物を背中越しに投げつけた。
 反応するよりも早く、それは発動し、辺り一面真っ白になってしまった。
 おやじ特製の煙幕だったようだ。
 このまま走り続けるのは危ないと一時、止まる。
 おやじのバイクの音が遠ざかっていくのがなんとも悔しい。
 上空にもこの煙幕は届いており、飛ぶのは困難だ。
 もし、間違って味方にぶつかってしまったらと思うと動けない。
「くっそっ!」
 洋兵は言葉を吐き捨てると自分が乗っている小型飛空艇を軽く蹴飛ばした。


「わっ! すごい煙です」
 少し後ろから箒で追って来ていた御陰 繭螺(みかげ・まゆら)がびっくりして声を出した。
「……大丈夫か?」
 パラミタ虎に乗ったアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)が心配して声を掛ける。
「大丈夫です」
 繭螺がすぐに返す。
「主様、このまま走っていたのでは先回り出来ませんわ。もう少し南のルートをとってみた方が良さそうですわ」
 箒に乗ったエレーナ・レイクレディ(えれーな・れいくれでぃ)がそう告げる。
 アシャンテはその言葉を信じる。
「……逃がさない……! グレッグ、頼む」
 アシャンテはパラミタ虎に合図を送ると、走る方向を変更した。
 そして、見事に先回りは成功したらしく、先に森の出口付近まで来る事が出来た。
 急いでアシャンテはスナジゴクのギャリーに指示を出した。


 少し後方ではエル達がホワイトと合流出来ていた。
 ホワイトは加速ブースターでスピードアップした箒なので、早くに着く事が出来たようだ。
「ホワイト――」
「エル、貴方の……好きな人が……大変な事になっているのでしょう? 詳しい事は落ち着いてから聞きます。今は為すべきことを為しましょう」
 エルがホワイトに詳しく事を説明しようとしたが、それをホワイトはとどめた。
「う〜ん、こりゃスゴイことになってるかもね」
「……はぁ。真っ白ですね。このまま突っ込むとこちらも被害に遭いそうです」
 箒に乗ったミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)と小型飛空挺に乗ったシェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)がおやじの煙幕に気が付き、声を出した。
「何かあったのか?」
 バイクにまたがったデューイ・ホプキンス(でゅーい・ほぷきんす)が質問をする。
「煙幕使われちゃったみたい。ちょっと迂回した方がいいかも」
 ミレイユが言うと、メンバーはその言葉に従い、少し迂回するルートを選んだ。