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【海を支配する水竜王】捕らわれた水竜の居場所を調べよ

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【海を支配する水竜王】捕らわれた水竜の居場所を調べよ

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第2章 資料室へ・・・

 上の階へ行こうと食堂内に隠れて機会を窺っていたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、1階の通路の様子を見る。
「地下の方に兵が走っていったようね」
「動くなら今のようだよ」
 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は食堂から1階の廊下へ出る。
「昨日みたいに爆弾で破壊されて建物が燃える匂いがしないし。生徒が倒したゴースト兵たちの血の匂いもそんなにしないから、少しは敵の匂いを探知出来るかもね」
「派手な騒音もしないから、相手の足音も聞こえるであろう」
「敵が光学迷彩とか使ってたり隠れ身で忍び寄って来られたら、さすがに分からないかもしれないけどね」
 こくりと頷いたローザマリアは彼女と共に慎重に進む。
「奥の方から足音が聞こえるわ」
 進もうとするグロリアーナを止め、ゴースト兵が離れるのを待つ。
 特に異常はなさそうだと思った兵は、来た道へ身体を向けて戻る。
 視界から離れていき相手の足音が聞こえなくなったのを確認し、ゆっくりと歩き始める。
「さっきのやつの匂いはするか?」
「今のところ匂いはしないわね。でもあまり遠くまで探知出来るわけじゃないから・・・」
 ローザマリアは周囲を警戒しながら小さな声音で話す。
「静かだから余計に音が響くわね。ゴーストたちに気づかれないように注意しないと・・・」
 靴音を立てないように階段を1段ずつ上る。
「水路・・・厄介ね」
「なんだか流れが速い上に、水しぶきが凄いのだよ」
「えぇ、その影響で相手の匂いや、近づいてくる音も探知しづらいわ」
 水しぶきでゴーストの匂いが薄れたり、遠くにいるそいつらの匂いが探知出来る可能性がかなり低いのだ。
 加えてゴォオッと動力水路を流れる音で、接近してきていても聞き取りづらい。
 口に片手を当てて水路を通り抜けるまでは喋らないでおこうという仕草をする。



「休憩したし、そろそろ上の階へ行くか」
 資料室へ行こうとエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)たちは会議室から出た。
「ゴースト・・・いない・・・よね・・・・・・」
 クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)はビクビクしながら辺りをキョロキョロと見る。
「何かいたらヘルさんとアリシアさんが気づくはずですよ」
 傍らにいるエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)が優しく声をかける。
「必要以上のことはあまり喋らない方がいいね」
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)の言葉にクマラはコクコクと何度も頷く。
「どうしてもという時に、小声で話す感じですね」
 彼の注意に浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)が付け足すように言う。
「あっ、注意事項を言っておくね?動力水路の階は反応が遅れるかも。皆、気をつけてね」
 探知出来る範囲をアリシア・クリケット(ありしあ・くりけっと)が説明する。
「水場では相手の匂いが消えていたりする場合もある。探知出来てたとしても、正確に分かるわけじゃないからな」
 強盗 ヘル(ごうとう・へる)がアリシアの説明に付け加えるように話す。
「親しいやつの匂いや足音は誰か分かるが、そうじゃないのは他の生徒とゴーストか確実に判断するのは難しい・・・」
「分かりました。もし探知したら念のため教えてください」
 彼らの言葉に頷いたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は、近くにいる相手がゴーストかどうか関わらず教えて欲しいと言う。
 了解したとヘルが頷く。
「ここを上れば2階か」
 階段を見つけた虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)が仲間の方へ片手を振って呼ぶ。
 幸いほどんの兵が地下へ向かったおかげで2階へたどりつけた。
「(地下と違って明かりは点いているようだが。水の流れる音のせいで、周囲の音が聞き取りづらいな・・・)」
 水路を流れる水音に、涼は顔を顰める。
「人数的にあまり近づきずぎて歩いているとかえって危ないかもしれませんね・・・」
 襲撃されても対処しやすいようにザカコは少し距離を取り歩く。
「―・・・何か来る。もの凄い速さで近づいているわ」
 突然アリシアは足を止め、超感覚で何者かが這い回る音を探知する。
「ど、どこです!?」
 彼女の声に翡翠は星輝銃を構え、周囲を警戒する。
「くぅっ、水音で聞き取りづらいわね・・・」
 なんとか聞き取ろうとアリシアが耳を澄ます。
「翡翠、避けろ!」
 ゴーストの匂いを嗅ぎ取ったヘルが叫ぶ。
「ぁぐあっ!?」
 天井を這うキラーパペットに首を捕まれ、亡者の手から逃れようと翡翠が銃を乱射させる。
 銃弾でゴーストの両腕が千切れ落ち、首を掴んでいた手から逃れた彼も床へ落ちた。
「グギャェエエッ」
 両手を失いベタンッと床へ落下したゴーストは奇声を上げながら、狙った標的を仕留めようと身体をヘビのようにくねらせ襲いかかる。
 ザカコはアルティマ・トゥーレの冷気をカタールに纏わせ、ターゲットの首を斬り裂く。
 断面からブシャアッと赤黒い血が吹き出て、通路の上に頭部がゴロリと転がる。
 そうなってもまだ動こうとするゴーストに止めを刺そうと、ヘルがアーミーショットガンのトリガーを引く。
 放たれた銃弾が亡者の頭部を破壊する。
「やっぱりゴーストと遭遇せずに進むのは無理だったみたいだな」
 破壊した衝撃で頭蓋骨が飛び散り、服についた破片をヘルは指で摘み床へ捨てる。
「奥にある階段を上れば3階か・・・。他のゴーストが来ないうちに急ごう!」
 エースたちは新たなゴーストと遭遇しないうちに進もうと階段を駆け上がる。
「手頃なロープとかあるといいんだが」
 3階の資材置き場についたヘルは、手頃なサイズのロープがないか探す。
「どれも短すぎる・・・。仕方ない、結んで使うか」
 見つけた短いロープを結ぶ。
「ありましたか?」
 ザカコが資材の置いてある部屋を覗き込み、目的の物が見つかったか聞く。
「端と端を結んで長くしてみたが、1本分にしかならなかったな」
 部屋から出たヘルは、結んだロープを彼に見せる。
「それで試してみましょう」
 ロープを受け取ったザカコは、仲間と共に階段を上る。
「向こう側までギリギリ足りそうな長さですね」
 1つ目の床を見てロープの長さが足りそうか確認する。
「このロープを持って向こう側に渡ればいいんだな?」
 ザカコからロープを受け取った涼が確認するように言う。
「それが成功したら、氷術で橋を作るんです」
「俺がバーストダッシュで何とかしてみよう」
 彼と作戦を確認し合い頷き、バーストダッシュで廊下を渡ろうと飛ぶ。
「う・・・うあぁああ!?」
 半分の距離も飛ばないうちに床へ落ち、斜めに傾いた床に足を滑らせ、3階へ落ちてしまった。



「イッたた・・・無理だったか」
 3階へ落ちた涼は痛む足を擦り、床から立ち上がる。
「今の凄い音・・・あんただったのね」
 ドタンッと涼が落下した音を聞いたローザマリアが駆けつける。
「バーストダッシュで廊下を渡ろうとしたが、失敗してしまってな」
「あの廊下か・・・。わらわたちも通ろうとしたのだが失敗してしまい、落ちてしまったのだよ。2人だけじゃ通れそうにないようなのだ」
 グロリアーナたちも4階から落ちてしまったらしく、どうしたものかと悩んでいたようだ。
「10回以上チャレンジしたけど無理だったわ・・・」
 ローザマリアは落ちた衝撃で傷ついた足を擦りながら言う。
「だったら一緒に通らないか?ちょうど仲間も4階で待っているし」
「そうしてくれるとありがたい」
 協力し合って進もうとグロリアーナが頷く。
 3人は仲間が待つ4階へ戻ろうと階段を上る。
「戻って来ましたね、お怪我はありませんか?」
「あぁ大丈夫だ」
 落下した衝撃で涼が怪我してないか心配していたザカコに言う。
「こうなったら地道に進むしかないな」
 エースはクマラと手をつなぎ、斜めに傾く廊下を進む。
「誰かもう少しこっち側へ・・・あぁあっ、落ちるー!!」
 グラリと傾いた廊下に足を滑らせ、彼らは全員3階へ落ちてしまう。
 ドサドササッ。
「うーん、痛いよー」
「おやおや、傷を見せてください」
 エオリアがヒールでクマラの腕の擦り傷を癒してやる。
「立てますか?」
「んー・・・なんとか」
 彼の手を引き、床から立たせた。
「―・・・左右どっちかに片寄ると、すぐに傾いてしまうな。バランスを取って進まないと、かなり難しいな」
 仲間たちと4階へ戻ったエースは廊下を見つめてため息をついた。