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【十二の星の華】双拳の誓い(第4回/全6回) 虜囚

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【十二の星の華】双拳の誓い(第4回/全6回) 虜囚
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「ははははっ、どけどけどけどけーい!」
 豪快に叫びつつ、黄色にペイントされた吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)のパワードスーツが突進していく。
 それを先頭に、後ろには四機のパワードスーツが続いた。それぞれ、ピンク、緑と赤のツートン、白地に青の横縞、三毛迷彩とバラエティ豊かな塗装がされている。
「一気に本丸取るぜー」
 ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)が我先にと、吉永竜司を追い越していった。
 白い霧の中に五本のくさびを打ち込みながら、装甲悪鬼と称した五機のパワードスーツは突き進んでいった。
「遅れるなよ」
 ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が、パワードスーツたちの後を追って走る。
「ラルクさーん、待ってくださーい」
 その後から、ソフィア・エルスティール(そふぃあ・えるすてぃーる)がゼイゼイと息を切らしながら走っていった。
 彼らは、一気に館に辿り着けるように思えた。
 だが、そうそう簡単に、彼らの思い通りに行くわけもなかった。彼らの突入に呼応したかのように、中庭の霧が凝縮して無数のモンスターの形になり始めたのだ。
「そうこなくっちゃッス。てええい!」
 あたるを幸いに、進路に立ち塞がる敵をパンチで薙ぎ倒しながら、サレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)が突き進んでいった。
「いいぜいいぜこれ、雑魚には無双だぜ。……はっ、まさか、あいつらまで買ってとか言いださないだろうな……」
 調子づいて敵を血煙爪で薙ぎ倒していたナガン・ウェルロッドだったが、はたと変な心配をして立ち止まった。
「うおっ、馬鹿野郎、急に立ち止まるな!」
 後から来た吉永竜司が激突して、二人でモンスターを叩き潰しながら転がっていく。
「いいねえ、どんどんS級四天王のオレのために道を作れよ」
 最後尾からのうのうと進みながら、国頭 武尊(くにがみ・たける)が高笑いをあげる。そこへ、空中から鳥のような物が襲いかかってきた。
「こ、これは……。なぜ、空飛ぶ縞パンが襲いかかってくる」
 あまりに予想外の敵に、国頭武尊が唖然とした。
「しかも、なぜ、オレにだけ……」
「大丈夫でさあ、オレの方にも襲いかかってきてるぜ」
 すかさず猫井 又吉(ねこい・またきち)が答えた。
「ようし、ちゃんと記録してるだろうなあ」
「あったりまえだぜ。タイトルは、『タシガンの神秘、エアーパンツは実在した』でどうですかい?」
「まっかせたぜ」
 お気楽なことを言っている二人であったが、増殖するパンツは、徐々に彼らをグルグル巻きにしていった。
「しまった、身動きが……」
 今さらになって、状況がやばいことに気づく。
「い、今、焼き払いますんで、ちっと我慢してくだせえ」
「うおっ、あちちちちちち……」
 猫井又吉の持つ火炎放射器でパンツを焼き払いながら、国頭武尊たちは態勢を立てなおした。
「反撃だ。これでもくらいやがれ」
 国頭武尊が、パワードレーザーのセーフティを解除した。パワードバックパックとのバイパスが確立され、エネルギーが充填される。
「臨海突破、消し飛べ!」
 偏向透過膜が解放され、ロッドで増幅されたレーザーが肩に装着した砲身から不可視のレーザーとなって発射された。館の二階の一画に命中したレーザーが、標的を蒸発粉砕しながら、乱反射で激しく発光した。
「くそ、派手でいいじゃねえか。後でくすねてやろう」
 レーザー砲をちょっとうらやましく思いながら、立ちあがったナガン・ウェルロッドは館目指して突き進んでいった。
「なんだ、敵にもパワードスーツがいるのか。おい、ゴーレムは任せたぜ」
 館の入り口で、吉永竜司とサレン・シルフィーユは、たまさかそこにいたガイアス・ミスファーンのパワードスーツとゴーレムに真正面からぶちあたっていった。
「貴様、我らは敵ではないぞ」
「細けえことはいいんだよ!」
「気にするのがすじであろうが!」
 がっぷり四つに組んで、ガイアス・ミスファーンと吉永竜司が言い合った。
 横では、サレン・シルフィーユが、ゴーレムを足払いで倒していた。
「あああ、どうか壊さないでくれ。ジーナに泣かれてしまう!」
 思わず、ガイアス・ミスファーンが情けない声をあげた。
「えっ、壊しちゃだめッスか? つまんないなあッス」
 あわやのところで、サレン・シルフィーユが止めの攻撃を寸止めする。
「ここからは、先行させてもらう」
 館の入り口まで辿り着いたところで、ラルク・クローディスが装甲悪鬼のメンバーに別れを告げた。ラルク・クローディスは、単に同行していただけである。彼の目的は、ゴチメイたちの救出にあった。伯爵の殲滅を目的とする他の者たちとは少し違っていたのだ。
「何言ってやがる。抜け駆けはさせないぜ、全機突入だぁ!」
 ナガン・ウェルロッドが、叫びながら建物の中に入っていった。
「後はこっちで引き受けます」
 菅野 葉月(すがの・はづき)が、追いかけてくるモンスターにむかって火を放ちながら言った。
「要は、霧を焼き払っちゃえばいいんだよね」
 ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)が、菅野葉月に確認した。
「降ってきたメモには、そうありましたね」
 あからさまに、モンスターを生み出しているのが霧だと分かったので、それを攻撃しつつ揺動しようというのだ。
 さすがに、数人の魔法で焼き尽くせるほどの霧ではない。それに、元から断たなければ、いくらでも補充されているような感じであった。
「とにかく、ワタシたちは縁の下の力持ちってことよね」
「そうそう。でも頑張るのですよ」
 
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「もしもし、ガイアスさん、私のビスマルクに何かあったんですか。もしもし……」
「……大丈……せず……ぐわっ……」
「えっ、えっ、何がどうなってるんですか」
 ジーナ・ユキノシタは、当初の目的を変更して部屋の外に出た。ここで待っていれば、いずれ伯爵の所に行けるのだろうが、もうそんなことはどうでもよかった。
 ガイアス・ミスファーンたちを残してきた玄関の方から、何かが激しくぶつかり合う音が聞こえてくる。
 深さを増している霧の中を、ジーナ・ユキノシタは泳ぐようにして走っていった。足下が心許ないが、構ってもいられない。
 ガイアス・ミスファーンであれば、こんなときこそ慎重さが必要と説いただろう。
 階段にむけて角を曲がったときだった。胸まできている霧の中に何かがいた。
「はうっ」
 真正面から激突してしまい、ジーナ・ユキノシタはあおむけに倒れ込んだ。
「いたたたたた……」
 新田実が頭を押さえて、床の上を転げ回った。張り切って探索だと飛び出したまではいいが、自分がすっぽりと沈んでしまうような霧の中で走り回るからこういうことになる。
「だから、廊下を走ってはいけないと……、あっ、誰か倒れていますわ」
 遅れてやってきた狭山珠樹は、ジーナ・ユキノシタを見つけてあわてた。
「ひとまず、安全な所まで移動しましょう」
 狭山珠樹は新田実と力を合わせてジーナ・ユキノシタを運ぶと、館の外へとむかった。
 
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「よし、この機に乗じて、隠し通路から突入するぞ」
 白砂司とサクラコ・カーディは、目をつけていた涸れ井戸に下りていった。予想通り、井戸の途中に横穴を見つける。
「いいぞ、どこに繋がっているか確かめよう」
「はい」
 二人は暗闇の中を進んでいった。
 
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「なんだか、急にモンスターが出てきたですぅ」
 ブンブンと野球のバットを振り回しながら、メイベル・ポーターが不思議がった。
「でも、面白いよね。ボクの力思い知ったかあ」(V)
 ホームランをかっ飛ばしながら、セシリア・ライトが楽しそうに言った。
「えー、わたくしはもう疲れましたわ。そろそろ帰りませんこと?」
 フィリッパ・アヴェーヌが、もう充分楽しんだとばかりに言った。
「そうですね、じゃあ、モンスターを叩きつつ帰りましょう」
 にこやかに、メイベル・ポーターは言った。
 
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「困ったですぅー、どうしてみんな、ゴチメイみたいに単純になっていくんですぅ。これじゃ、そっと伯爵に忍びよるなんてできないですぅ」(V)
 困ったように、神代 明日香(かみしろ・あすか)が言った。
「でも、うまく戦いを避ければ、伯爵の所へ早く辿り着けるかもしれませんわ」
 とりなすように神代 夕菜(かみしろ・ゆうな)が言った。
「もう、決戦しかないです。行くしかありません」
「そうね。こそこそっと進むですぅ」
 ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)に答えると、神代明日香は伯爵がいるという大広間を目指した。