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ポージィおばさんの苺畑

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ポージィおばさんの苺畑
ポージィおばさんの苺畑 ポージィおばさんの苺畑

リアクション

 
 
 貼り紙の効果 
 
 
 校庭にある蒼空学園の掲示板。初夏の陽射しが貼られた掲示物に反射している。
 その中に、片隅に苺の小さなイラストが入った白鞘 琴子(しらさや・ことこ)の貼り紙もあった。

 蒼空学園を訪れていた草刈 子幸(くさかり・さねたか)は、ふと貼り紙に目を留めた。子幸があまりに熱心に読んでいるから、草薙 莫邪(くさなぎ・ばくや)もその内容を覗き込んでみる。
「苺狩り? 子幸はこういう催しに興味があるのか?」
 ごはん大好きな子幸のことだから、果物に興味を示すのは意外だと莫邪は聞いてみたが、その声も耳に入っているのかいないのか、子幸はこうしてはいられないと莫邪を振り返り。
「すぐに準備に戻るであります!」
「子幸? ちょ、待てって」
 急ぎ足に戻り始めた子幸を、莫邪は慌てて追いかけていった。
 その2人と入れ替わりのように掲示板に目を留めたのは、蒼空学園から下校しようとしていたセルマ・アーヴィング(せるま・あーう゛ぃんぐ)。貼り紙に気づかずに歩いて行ってしまう藤ノ森 夕緋(ふじのもり・ゆうひ)に、これ読んでみてと呼びかけた。
「苺狩りだって。行ってみようよ」
「苺なんてそのへんで買ってくればいいだろう?」
「でも、採りたての苺はきっとおいしいよ」
 そう言われても、味の微妙な差異には疎い夕緋は苺狩りなんかにまったく興味が持て無い。
「だったら行って来い。俺は家で休んでるからな」
 疲れることまでして苺なんか狩りたく無い夕緋だったけれど、
「だって、1人で行くより夕緋と一緒に行く方が楽しいんだもの」
 そう言ってセルマが向けてくる笑顔にうっと反論を呑み込んだ。秘密にはしているのだが、夕緋がセルマと契約したのは一目惚れしたが故。にっこりと笑顔を向けられては断れない。
「……俺は同行するだけだからな」
「ありがとう。じゃあ詳しいこと、聞きに行こっか」
 これも惚れた弱みか。足取り軽く校舎へ引き返してゆくセルマの後を、夕緋はしぶしぶのようについて行くのだった。
 
 貼り紙の前で足を止めるのは、苺狩り目当てのものばかりではない。
「苺のスイーツかぁ」
 貼り紙を見上げるミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)の頭の中では、苺のスイーツの数々が浮かんでは消えてゆく。ケーキ、ムース、タルトにパイ。スイーツを主とした料理に熱を入れているミルディアとしては、この企画は素通りできない。これは参加しなければ。でも苺のスイーツといってもいろいろある。一体何を作れば良いのだろう。
「定番のケーキとかは他の人も作るかな? 苺のスイーツ……あ、そうだ!」
 良い案を思いついたように右手拳で左手の平をぽんと叩くと、ミルディアは準備の為に動き出した。
 そしてまた、作る方ではなく食べる方に興味のある者も貼り紙の前で足を止める。
「ほう、スイーツフェスタとな?」
 よっこらしょ、と腰に手を当てて掲示板を見上げるのはグラン・アインシュベルト(ぐらん・あいんしゅべると)
「苺スイーツとはまた、心惹かれるイベントじゃのう」
 料理の腕は壊滅的なグランが、スイーツを作ると言い出すのではないかとアーガス・シルバ(あーがす・しるば)は僅かに眉を寄せたが、グランの目的はそちらではないようで。
「これは是非、賞味しに行かねばならんのう」
「拙者もご一緒するでござる」
 オウガ・ゴルディアス(おうが・ごるでぃあす)が即座に同意する。グランの言うことなら何でも立てねばならないと思っているのと、自分もスイーツを食べたいのと両方だ。
「では皆で参るとしようかの」
 ふぉっふぉっと笑うと、グランたちはまたのんびりと歩き出した。