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【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

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【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

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「えっと、戦国武将ってたくさんいるんだよね。確か……だてまきむねさん? えっと他には……上杉かげかつ丼さんだっけ?」
「ケイラさん、合っているようで間違えてますー。伊達政宗さんと上杉景勝さんですー」
「あれ、そうだっけ? うーん、似顔絵付けてみたら覚えやすいかなー。えーっとこんな感じで……どうかな?」
「わ、特徴がよく出てますー。これなら覚えやすいかもしれないですねー」
 ケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)の持ってきたノートには、戦国武将の名前と特徴をよく捉えた似顔絵が書き込まれていった。
「豊美さんの世界だから、どうなってるのか凄く興味あったけど、何ていうのかな、思ったより普通かも」
「そうですねー。せっかく私の講義を受けに来てくれたのですから、出来るだけちゃんとしたのを教えたかったのですよー。もちろん私の知識が足りなかったり、皆さん自由にされた所ではおかしなことになってしまって、一部の人からは「こんなの歴史じゃない!」とお叱りを受けそうなんですけどね」
 あはは、と笑って、豊美ちゃんがケイラの希望である『前田利益』にまつわる逸話を追うため、『ヒノ』を光らせる。
「利益さんは1533年もしくは1541年生まれですねー。豪腕な武人、超一級の戦人というイメージが先行する方ですけど、実際にそうだったらしいですー。ですけどこの人、戦国の世の中でほとんど表舞台に出て来ないんですよー。凄い力を持っているのに、意図的に目立つのを避けた節があるんですー」
 豊美ちゃんとケイラの前に映る利益の姿は、豊美ちゃんの世界の中にあってもどこかおぼろげであった。
「実は魔法少女で、自分の存在を隠していたとか?」
「うーん、そんな話は聞かなかったんですけどねー。でも、私より凄い魔法少女な方はたくさんいるはずですから、利益さんもそうだったかもしれませんねー」
「……豊美さんより凄い魔法少女がいるの? そ、それって一振りで地球を割っちゃったり出来るとか?」
「まさか、そこまでの力はないと思いますよー。ここからは私の推測ですけど、利益さんは平和な世の中に生まれたかったんだと思います。この方は戦ってる姿より、縁側でお茶を啜ってる姿の方が、何となく似合ってる気がしますから。武将の皆さんも、本当に戦いが好きな人なんていない……とは言いませんけど、少なかったと思います。皆さん、やっぱり平和な世の中が好きだったと思いますから」
 もしかしたら、そういう見方で歴史を追ってみると、また違った考察が出来るかもしれない。
 猿真似をして皆を笑わせたり、悪戯や奇行を繰り返して周囲の人々を困らせたりした利益は、戦国武将の中で誰よりも平和な世の中を望んだ武将だったのかもしれない。

「ふむ、ではこの者にはこの薬を……こちらの者にはこの薬を……ふふ、どんな効果が出るか興味深い」
「わわ、ダメです大佐さん、勝手なことしちゃダメですよー」
 豊美ちゃんの案内の最中、毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)がこれまで豊美ちゃんの『お仕置き』を受けてノビている者たちへ自らの薬学に対する知識を深めようと手製の薬を飲ませようとして、豊美ちゃんに止められる。
「おや、よく見れば幼女ばかりではないか。こんなところで寝ていては風邪を引いてしまう、僕が向こうまで運んでいってあげよう――」
「ドサクサに紛れて変なことしないでくださいー!」
 水神 クタアト(すいじん・くたあと)が恍惚とした笑みを浮かべながら近付こうとして、豊美ちゃんの『お仕置き』を受けて吹き飛ばされた。
「うーん、凄く心配ですー……とりあえず『永禄の変』に案内しちゃいますねー」
 豊美ちゃんが『ヒノ』を光らせ、大佐の希望であった永禄の変、室町幕府第13代将軍足利義輝が京都・二条御所で襲撃され討死した事件の頃へ案内する。
「今では信じられないことですけど、この頃は時の権力者が暗殺されることは、決して珍しいことではありませんでした。義輝さんは落ちかかっていた幕府の権威を取り戻そうと頑張りましたけど、その頑張りが気に入らなかった人にやられちゃいました。この事件で室町幕府の権威はほぼ失われてしまい、信長さんが最後の将軍さんを京から追い出した1573年に室町幕府は滅亡という形になりました。『村町爆風一行涙(1573)目』とありますけど、最後の将軍さんである足利義昭さんは1588年まで将軍さんでしたー」
 豊美ちゃんの説明が続く中、大軍に攻めかかられた義輝が奥義『一の太刀』で突きかかる兵士を斬り伏せていく。義輝の奮戦ぶりは、もしここに近江六角氏の増援が到着しようものなら逃げ延びられたかもしれないほどであったが、その『もしも』は起こることなく、義輝は討ち取られてしまう。
(ほう、やはり剣聖将軍と言われただけのことはある。色々変わっている所があったようだが、ここは比較的まとものようだな)
 その光景を眺めていた大佐は、先程吹き飛ばされたクタアトが豊美ちゃんに狙いを定めているのに気付くが、放置する。大佐も、そしてクタアトも予想したように豊美ちゃんに二度目の『お仕置き』を食らって、クタアトが大佐の足元まで吹き飛ばされてきた。
「ふふ……幼女……幼女ときゃっきゃうふふ……」
(……ま、今回はこれで代用とするか。どれから飲ませようか……斑色のこれがいいだろうか。それとも金属光沢のあるこれがいいだろうか)
 日本史の講義のはずがすっかり薬学の講義の気分で、大佐がクタアトを引きずって連れて行った。

「鳴かないホトトギスで織田信長さん、豊臣秀吉さん、徳川家康さんの性格を現したものがありますよね。メイベルさんの希望にもありましたので、では実際に鳴かないホトトギスを目の前にしたらどうするかを見てみましょー」
 豊美ちゃんの『ヒノ』が光り、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)たちは陽光の下、とあるお寺の前に案内される。
「わー、楽しみですぅ」
「ふーん、これからどうなるのかな? あっ、メイベル、お菓子とお茶をもらってきたよ、食べる?」
 敷かれた茣蓙にメイベルが腰を下ろし、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)がお饅頭とお茶を用意して、見学の準備は万端といったところである。
「なんでしょう……初めての場所ですのに、何かよからぬ気配を感じますわ」
 訝しげな表情のフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)がそう感じたのは、ここが1582年の本能寺であることを情報にあげれば納得がいくであろうか。
「あー、そうですねー。でも昼間だから大丈夫だと思いますよー。では、いってみましょー。果心居士さーん、よろしくお願いしますー」
 何とも根拠のない言葉を口にして、豊美ちゃんが果心居士――鳴かないホトトギスを三人の天下人に“見せる”ために豊美ちゃんが呼んだ――に進行を促す。しかし、いつになってもホトトギスが現れる気配がない。
「あれ? どうしましたー? すみません、ちょっと待っててくださいね」
 首をかしげた豊美ちゃんが現場に向かってみると、術を行使しようとしていた果心居士の周りを、ナーシュ・フォレスター(なーしゅ・ふぉれすたー)がまるで尻尾を振る犬のようにまとわりついていた。
「ししょー! 拙者に忍術を教えてほしいでござる!」
 どうしてここに果心居士が現れることを知ったのかは謎であるが、本物の忍者に会いたい思いが引き合わせたのだろう。
「ナーシュさん、果心居士さんが困ってますー。見学は構いませんけど静かにしてくださいー」
 ナーシュの無邪気な瞳に見つめられ、黒装束姿で表情を隠した果心居士は居心地が悪そうにしていた。
「むぅ、師匠の術を邪魔するつもりはなかったでござる。そうというなら拙者、師匠の術をとくとこの目に焼き付けるでござる!」
 こうして、ナーシュも見学人に加わり、そして果心居士が術を行使すれば、どこからともなくホトトギスが現れ、三人の天下人が滞在する寺へと飛んでいくのであった――。
 
 『なかぬなら殺してしまへ時鳥 織田右府』
「む、あれはホトトギスにあるか」
 ホトトギスを目にした信長だが、ホトトギスが一向に鳴き出そうとしないのを見て取ると、突如弓を持ち出し矢を引き、ホトトギスを射抜いてしまう。
「と、殿! 何故にそのようなことを」
 臣下に問われ、視界から消えたホトトギスに言い放つように、信長が口を開く。
「鳴かぬホトトギスはホトトギスにあらず。天下を取るべく者が取らぬは、愚かなり」

 『鳴かずともなかして見せふ杜鵑 豊太閤』
「おお、ホトトギスじゃな」
 ホトトギスを目にした秀吉が、ホトトギスが一向に鳴き出そうとしないのを見て取ると、面白い顔をしてみせたりしてホトトギスを鳴かせてみようとする。
「殿、何故にそのようなことを?」
 臣下に問われ、しきりに首を動かすホトトギスを見つめて、秀吉が口を開く。
「鳴かぬホトトギスを鳴かせてみせようとするくらい、天下を欲しなければ、手が届かんからの」

 『なかぬなら鳴まで待よ郭公 大權現様』
「おお、ホトトギスじゃな」
 ホトトギスを目にした家康が、ホトトギスが一向に鳴き出そうとしないのに構わず、腰掛けたまま静かにホトトギスを見つめる。
「殿、何故にそのようにいたす?」
 臣下に問われ、やがてホー、ホーと鳴き出すホトトギスを見つめて、家康が口を開く。
「鳴かぬホトトギスも、いずれ鳴くようになる。天下も必ずや一所に収まるもの。その時まで目を離さずにおることが何より大切よ」

「一般には、信長さんは短気で気難しい、秀吉さんは好奇心旺盛でひとたらし、家康さんは忍耐強いという評価です。そこに私の推測を加えると、信長さんにはそうあるべきと真っ直ぐ進む力強さが、秀吉さんには無心に何かを求める純粋さが、家康さんには夢をあきらめないひたむきさがあったんじゃないかなって思いますー」
 あるいは、皆が皆これらを持っていたからこそ、天下に手が届いたのかもしれませんけどね、と豊美ちゃんは締めくくった。