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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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6-02 魔物国
 
 砂漠の小国グニジァは、陥落寸前であった。もともと状況において劣勢と思われた三国が共同して立ち上げた国であったのだが、太刀打ちできなかった。彼らを攻め立てる相手国は……
「今回はみんな逃がしちゃだめなんだって!
 みんなお友達になって戦いごっこできるよー
 楽しみ! 楽しみ!」
 操る獣人を出入り口に回し、完全に封鎖する。「ミネルバちゃんのお仕事お仕事!」
 オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)は吸血鬼の指揮を執り、市内の襲撃を実行、吸精幻夜により民を吸血鬼化していく。
「兵もたくさん死んでいるねぇ。これなら事足りそうだよ。
 死体も残らずに集めるんだよ!
 おっと、兵が来たねぇ」
 攻囲に耐え切れず、民への攻撃に怒り兵が出てくる。「ファイアストーム!」
「うわぁぁぁ」
「ふふん。骨になったのはスケルトンにしちゃえばいいしぃ。それ以外はレイスだね。
 れっつネクロマンサーぷれい!」
「いぇーい!」
 ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)もオリヴィア以上に派手に暴れまわっている。
「あーそびましょー? ミネルバちゃんあたーっく!」
「ミネルバあまり死体をめちゃくちゃにしちゃ駄目よぉ〜」

 こんな彼女らもまったく考えなしに地獄の国作りをしているわけではなく、スケルトン、レイス化による食糧等のコスト低下、また、暑さに耐久性のあるだろうスケルトンを利用した砂漠の農耕などを描いているのである。無論、人間達にとってはまったく地獄でしかないが……。
 グニジァは陥落した。
 人々は残らず、スケルトンかレイスとして、桐生 円(きりゅう・まどか)の待つ本国に連れ帰られる。吸血鬼、獣人も二人に続く。
 


 
 ヒラニプラのなかでもとりわけ魔物の流出に歯止めの利かなかった、という南部地域。
 一説には、この魔物国がその元凶であった、とする書物もある。
 
「……」
 城の尖塔から、何もない砂漠を見渡す桐生円。平和だ……!
「暇ーひまひまー」
 オリヴィアもミネルバも出ていっちゃったし……「することなーい。……そう言えば」円は後ろを振り返り、扉を開けると城内に戻っていく。階段をつかつか下りて、「今まで城の中捜索したことないから探すよ」
 何を探すかはわからないが、とにかく探してみた。
 書庫。
「あったあった」
 ここは、御誂え向きになるが……まあそういう物が出てきた。「さすが古城だね!」
 円は片手にこの国や砂漠の歴史が書いてあるらしい分厚い歴史書を、片手に埃に塗れたいかにも妖しい魔道書?を手に取る。
「ふむふむ。何。
 "なぜこの古城が砂漠という環境が悪い所に建っているかといえば……
  遥か昔 戦争に勝つがために 自国民を全て犠牲にしてまで召喚した獣によって 自国もまた滅んでしまった時の名残で……"
 ……って本当かよ。で、それで
 "……その獣は巨大な羊、そしてぬいぐるみだった。"
 ……。(南部戦記の更に記されざる記述。)
 "我が国は辛くも勝てたがもう滅びるしかないだろう 国民も緑豊かな大地も無くなってしまった 一族の長は自身を生贄とし封印した だがこの術は子孫に残そうと思う この恐るべき力を使いこなせるのであれば 我が一族は返り咲くだろう"
 ……」
 歴史書を床に放り捨て(埃が舞った)、魔道書?にじっくり目を通す。
「……暇だし。
 ふむふむ。なるほどね。わかった」
 読み終えると魔道書も捨てる。
 円は、城の中心部にあたる一室で、何かを床に描き始めた。円の捨てた魔道書の中にあるのと同じ魔方陣だ。
 円は古い魔道書にあった呪文を唱える。
「召喚魔法……か。やっぱり何も起こらなくない?
 ……だめか」
 円が背を向けたそのとき、部屋の暗闇のなかで何かがうごめき、あふれ出して……そこから出てきたのは巨大な羊ではなく、大量の魔物たちであった。