天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~

リアクション公開中!

魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~
魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~ 魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~ 魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~ 魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~

リアクション

 
 
 しかし、そこでがたんっ、と椅子を蹴る音がした。つかつかと誰かが歩いてくる。
「ファーシー、おまえ……さっきからうだうだもにょもにょ、女々しいんだよーっ!」
 フリードリヒだ。今まで黙って聞いていたと思ったら……
「痛っ!」
 思いっ切りファーシーの頭にチョップを入れた。機械だけに、本当にビシっと音がしたようなしないような。
「ふ、フリッツ!」
 ティエリーティアがびっくりして、思わず立ち上がる。
「何するのよ!」
 ファーシーは頭を抱えて抗議した。目には涙が……いや、これは別の涙だが。
「女々しいって……しょうがないじゃない! 女なんだから!」
「こんなんに女も男もあるか! 足がどーした! そんなもんいくらでも代打品があるだろーよ!」
「…………!」
「言え! 行きたい場所があるならさっさと言え! やりたいことがあるんならそれも言え!」
「……言ったじゃない! わたしは……」
「いいや、何も言ってねー! 前のことをぐだぐだ言ってるだけじゃねーか! 結局、どうしたいんだよ、おまえはさぁ! アクアの所にも行きたいのか行きたくないのか、それだけでいーんじゃねーのか!?」
「これから何かしたい事があるのでしょう! 私は手伝いますよ! 手伝いたいのです。だから、私に遠慮なしにズバっと言っちゃいなさい、ズバっと!」
 ルイも立ち上がって、力強く言う。永太も優しく、ファーシーに言った。
「そうだよ。私は、ファーシーは、もっと我侭になって良いと思うんだ。やりたいと思ったことを、やれば良いよ」
「でも……」
「貯めこんでねーで言いたい放題言えばいいだろ、おまえクチついてんだからさぁ!」
「う、うるさいわね! わたしだって色々考えるのよ! 大体何よ、代打品って! あるならすぐ持って来なさいよ! わたしを歩かせてみなさいよ! 何よ出来ないくせに、バカじゃないの? ……きゃあっ!」
 ファーシーは突然の浮遊感に悲鳴を上げた。フリードリヒが抱き上げたのだ。お姫様抱っこである。
「バカはおまえだっつーの! 1人で歩かなくても、こうすりゃいいだけだろが!」
「ちょ、ちょっと、降ろしてよ! 嫌! 嫌だってば!」
 ぽかんとしている皆、ついでに喫茶店のマスターを見回し、ファーシーは腕の中でぽかぽかとフリードリヒの胸を叩く。すると、彼は今度は勢い良くファーシーを肩に背負いあげた。多少重くとも、レディにそんなことは言わない。
「えっ、ちょっと……!」
「これならいいだろ? 俺様がどこへでも運んでやるぁ!」
「どこへでもって……」
「1人で何もかもどーにかなる訳ないだろ? そういう時のためにトモダチってやつがいんじゃねーか!」
「……な、何よ! いきなりそんなかっこいいこと言わないでよ! 普段バカばっかりやってるくせに……! 説得力ないのよ!」
 ……もう、傍から見れば子供の喧嘩である。
「でも、本当にそうよ、ファーシー」
 ルカルカが、すっかり背が(?)高くなったファーシーを見上げる。
「1人では出来ないから仲間がいるの。私達みんな、ファーシーを手伝いたくてここに来たんだから。だから……何でも言って? まず、どこへ行きたいの?」
「…………」
 ファーシーは皆を(位置的に)居心地悪そうに眺めやると、言った。
「わたしは……とりあえず、デパートに戻りたいわ。約束してるし。それから……アクアさんの所に行きたいわ。ちょっと遠いけど……、一緒に来てくれる?」
「当然だ!」
 フリードリヒはファーシーを背負ったまま、喫茶店を飛び出した。
「きゃ、だ、だから降ろしてよーーーーっ! 謝るから! さっき言った事は謝るからーーーーっ!」
「フリッツ、ファーシーさんの車椅子はどうするんですか〜」
 慌てるティエリーティアに、大地が言う。
「俺が運びますよ、ティエルさん」
「それでは、早速デパートに行きましょう!」
 ルイが立ち上がると、ブリジットも残っていたお茶を片付けた。
「しょうがないわね……付き合ってあげるわよ」
「永太、私達も行きましょう」
 永太とザイエンデも店を出る支度を始め、ミニスもテーブルから離れる。
「あたしも行くのよね、分かってるわよ。それにしても、随分スケールの大きい話になってきたわね」
「あ、皆さんちょっと待ってください!」
 次々と喫茶店を出ようとする皆を、舞が慌てて止める。「?」と振り向く一同に、彼女は言う。伝票を持っていた。
「まだ、お金払ってません……」
「…………」
 ということで、苦笑するマスターに支払いをしてから13人は店を出た。その中で、クロセルだけが1人、歩きながら何処か思案顔だ。
「ふむ……ファーシーさんは、意外に頑固ですねえ」

 その頃、街の中では――
「ファーシーが行方不明じゃと!?」
 シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)は、黒塗りVIP仕様に改造した4人乗り4ドア飛空挺アルバトロス(エアカー)の中で愕然とした声を出した。
「そのようですね」
 助手席のガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)が言う。
「何と……! 今日こそ舎弟にしちゃろうゆうて思うたのに! しかも、原因が脚じゃとは……」
 以前にむきプリ君からホレグスリを入手したシルヴェスターは、遂にワシの時代が来た! と意味不明に有頂天になっていた。ファーシーが空京に居るときいて、ホレグスリ飲ませて舎弟化の既成事実を作れるとやってきたが、まさか行方不明とは。
「あの小生意気なファーシーが落ち込んどるとは……捜して励ましてやるのがワシの務めというものじゃな!」
「では、どうしますか?」
 ホレグスリを使って、舎弟化したファーシーを記録しろと言われていたガートルードは訊いた。困った先生だ、と思っていたが、どうやら計画は一時中止らしい。
「捜索で捜せば見つかるじゃろう!」
 そうして、シルヴェスターとガートルードはファーシーの姿を捜してアルバトロスを走らせた。