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第5章 終わりなきバイトライフ

「オルフェたちが何でこんな煤だらけの場所を掃除しなきゃいけないんですか。もうちょっと違う働き場所はないんでしょうか」
 重労働しか思いつかなかったオルフェリアは御影と一緒に、空京にある銭湯の煙突掃除をして必死に稼いでいる。
「ご主人が簡単に騙されるからにゃ。にゃーもご主人のこと言えないけど・・・」
 御影はしょんぼりしながらブラシでゴシゴシと掃除をする。
「起こってしまったことはどうしようもないんです」
「そうにゃ、そういうゲームだと分かってて参加したんだし」
 騙した者を怨むことなくオルフェリアたちは黙々とキレイにする。
「他の場所も探して見ましたけど、ミスなく手っ取り早く稼ぐには重労働がいいのですよね」
「これが終わったら工事している道路の近くの交通整理があるにゃ」
「はい・・・」
「アパートの窓拭き掃除もあるにゃー」
「―・・・うぅ、はい」
「買い物や部屋掃除の家事代行の仕事も山済みにゃ!」
「ひぇええんっ」
「この仕事を毎日全部こなすにゃ。そうだ、楽しいと思えばいんだよ!―・・・365日毎日・・・毎日・・・ずっと・・・・・・」
 彼女たちはどよーんとしたオーラを纏い掃除を続ける。



「くそーっ、どうして俺がこんな仕事をしなきゃなんねぇンだよ」
 引越しの配達員のバイトをしているナインがブツブツと文句を言う。
「しっかり働け新人!減額されたいのか」
「チッ、やればいいんだろ。やれば!この箪笥重てぇえっ」
 バイトの先輩に怒られた彼は足をプルプルさせながら車の中へ積む。
「この仕事、日雇いだからってなめるなよ」
「(何かムカツクぞ。うーっ、これも借金を払うためだ。我慢だ我慢・・・)」
 キレそうになりながらも、家の中の荷物を車へ運ぶ。



「ちょっとツカサ、赤ちゃんが泣いてるわよ。泣き止ませなさいよ」
 シオンは司がバイト先から逃げ出さないように監視と称して、人の家のリビングでくつろぐ。
「あわわっ。ミルクの時間ですよね。ほらほらご飯の時間ですよ」
 ベビーシッターをしている司は赤ん坊を抱きかかえ、哺乳瓶を咥えさせて飲ませてやる。
「まったく、もっといいバイトはなかったの?こんなやかましいところをわざわざ選ぶなんて」
 顔を顰めてテーブルにあるお菓子をシオンが勝手につまむ。
「そんなこと言われても、自給がいいっていたらこういうものがいいかなって」
「もっとらくーに稼げるやつもあるんじゃないからしら?たとえば、何かの運び屋とかテロリストに狙われている要人のボディーガードとかね」
「い、いやですよ!どっちもリスクが高すぎます。それに運び屋なんて犯罪くさいじゃないですかっ。刑務所行きなんてごめんですよ!」
「あら。ツカサが考えているものいがい、まっとうなの沢山あるわよ」
「(シオンくんの言うまっとうなんて、絶対まっとうじゃありませんっ)」
 犯罪に手を染めてなるものかと、シオンの言うことを無視する。
「ちょっとー聞いてるの?地味でつまらない仕事より、もっといいのがあるわよ」
「これでも地味じゃないですし、それなりに大変ですよ」
 司は赤ん坊の背をとんとんと叩き、けふっと言わせる。
「えー、本当なのに」
「(平和に稼ぐのが一番です・・・。)」
 これ以上恐ろしい目に遭いたくないと、彼女の話しに乗ってはいけないと司は心の中で耳に蓋をする。