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ぼくらの実験記録。

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5.解毒

たぱーん!


「え?」
 温泉に浸かっていたアルコリアは驚いて音のした方を振り向いた。
 ぷかりと、何かが浮かんでくる。
「ハエ……」
 ゆらゆらと水面に佇む。
 よく見ると身体がぴくぴくと痙攣している。
 氷雨だ!

「だだだだ大丈夫!?」
 氷雨を岸に引き寄せ、水を吐き出させる。
「う……うぅ〜ん……」
「気付いたよ!」
 ラズンが声を上げる。
「あれ? ……ここは……」
 氷雨が気付いた。
 佃煮を食べて復活した、第一号だった。

たぱーん! たぱーん!


 また落ちてきた。
 今度は夏菜と勿希だ。
 歩と円が慌てて近付く。お湯の中では中々思うように進まない。
「大丈夫? しっかりして!」
「何があったの!?」
「──…おーい! 落ちてきたかっ!?」
「すごいおとが聞こえましたです!」
 落ちていく瞬間でも見ていたのか、息を切らしながらヴァーナーと禰子がやって来た。
「しんじゃダメです〜!」
 引っ張りあげるのを手伝う。
「前面が痛いです……思い切り腹打ちしました…」
「お姉ちゃん、痛い〜…」
 疲れた様子で夏菜と勿希が言った。

たぱーん! たぱーん! たぱーん!
 

 祥子と朱美のわずか数センチ先に、波音とアンナとララの三人が落ちてくる。
 ぷかりと浮かびあがり、まるで水死体のようだ。
「こ、怖かった〜! あともう少し近かったら、こっちも死んでたわ」
「こっちもって……彼女達まだ死んでないから……」
 朱美の突っ込みに、祥子は照れ笑いを浮かべた。
「…く、クワガタムシになるはずだったのに……」
「私はカ…カブトムシです…」
「ラ…ラはアゲハ蝶…に」
 岸に上げられた三人はそう呟くと、再び意識を手放した。
 背中の羽は既に消えている。

「もしかして、まだ落ちてくるんでありますか?」
 お湯に浸かったまま、剛太郎は天井を仰ぎ見ていた。
「ぶつかるのは、わし嫌じゃ」
 藤右衛門も必死になって残りのハエを探す。
「……今落ちてきた人達は、佃煮を食べた人達でありますよね?」
 剛太郎の問いかけに、ラルクはハッとする。
「ハエが温泉にのみ落ちてきて正気に戻る……このお湯には、佃煮を食べた連中を覚醒させる性能が含まれてるんじゃねえのか!?」
「そうと分かれば!」
 お湯を入れられるような物を求めて、皆は駆け出した。