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リアクション
4.
宝箱から離れた森の奥で、源鉄心(みなもと・てっしん)はハンターに遭遇した。
「おっと、危ないわんっ」
なるべくハンターに遭わないよう走っていたのだが、気配を察知した途端に相手が現れた。
最初の一撃を交わした鉄心は銃を取り出し、相手へ向ける。
「……ゲームといえど、手加減はしないこん」
と、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は鉄心を睨む。犬耳としっぽを着けた鉄心の後ろには同じく犬耳としっぽを装着したティー・ティー(てぃー・てぃー)の姿があるが、エヴァルトは彼女を狙うつもりはなかった。
「こっちだって手加減する気はないわん」
と、鉄心。犬と狐がまっすぐ睨み合う。
ティーは周囲に他のハンターが隠れていないか探りつつ、チャンスがあれば鉄心に加勢するつもりでいた。相手が一人なら、さっさとしっぽを奪って先に行くのが良い。時間制限だってあるし。
とはいえ、男たちはどちらも本気だった。言葉通り、手加減する気などまったくない様子だ。
「行くこん!」
再び攻撃を仕掛けてきたエヴァルトに、鉄心はヒプノシスをかけてみた。だが、空蝉の術で交わされてしまう。
「させないわん!」
死角を突いてくるエヴァルトをギリギリのところで避け、後退する。
「俺の機動力を甘く見るんじゃないこん!」
と、隙を与えず突撃するエヴァルト。さすがは忍者といったところだろうか、鉄心は避けるのが精一杯だった。
その様子を見ているしかないティーだったが、ふと別のところで何かが光るのを見た。光術だろうか、眩い光がこちらまで届いてくる。
――他の人たちもがんばってるんですね、わん。鉄心も、勝たなきゃなのですわんっ。
「いつ襲われるか分からないなんて、ドキドキしちゃいますわん」
と、御茶ノ水千代(おちゃのみず・ちよ)は隣を行くセシル・レオ・ソルシオン(せしるれお・そるしおん)へ言う。
「大丈夫だ、まだハンターには遭遇していないわん」
と、セシルは返す。殺気看破と禁猟区を使用しているため、未だに邪魔者と遭遇していなかった。
「地図によると、もうそろそろ宝箱が見えてくるはずわん」
「よし、気を引き締めて行くわん!」
と、セシルが千代へ笑いかけると、千代も「はいですわん!」と、微笑み返す。
すっかりいちゃらぶモードの二人を、セルマとリドワルゼは遠くから見つめていた。
「先に攻撃されたら厄介にゃ。一撃必殺で行くにゃ」
「了解、わん」
セシルははっとした。
「来るっ」
千代の手を取り、襲い来るドラゴンアーツを避ける。
「させません!」
背後の気配に気づいた千代が片方の手で拳銃を取り出すと、リドワルゼがしっぽを奪うのを諦める。
すかさずアルティマ・トゥーレでリドワルゼへ冷気を放つセシル。
「くっ、やられたか……」
行動が制限されたリドワルゼを見て、セルマが二人の前へ姿を現す。
「やっぱり一筋縄ではいかないようだにゃ」
セシルは千代の前へ立ち、セルマを睨み付けた。しかし、次に彼のした行動は予想外だった。
「これを見るわん!」
と、取り出したのは手の平サイズの愛らしいテディベア。
「店頭販売10個限定の、超レアなテディベアだわん!」
「……げ、限定……!?」
セルマの意識がテディベアに向いたのを確認し、セシルはそれを遠くの方へと放り投げた。
「ああ、何てことをっ……!」
と、テディベアを追いかけていくセルマ。セシルは千代へ振り返ると、にやっと笑った。
「行こうぜ、千代」
「はいっ」
しかし、走り出そうとした千代は何者かに引っ張られて地面に尻もちをついてしまう。
「きゃうっ」
「大丈夫か、千代!?」
立ち上がろうとした千代だったが、その尻からしっぽが消えていた。
「仇は取ったぞ、セルマ……」
と、呟くリドワルゼ。これでゲームオーバーだ。
セシルは千代の隣へ腰を下ろすと、無意識に溜め息をついた。
「まさか、こんなところでやられるなんてな」
「……でも、素敵でしたわ。セシルさん」
と、千代。宝箱にはたどり着けなかったが、時間はまだある。
「どうせですから、後はゆっくりしていましょう」
「ああ……そうだな」
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