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カリペロニア・大総統の館ガーディアンオーディションの巻

リアクション公開中!

カリペロニア・大総統の館ガーディアンオーディションの巻

リアクション


 挑戦者たちが大総統の館2階へと到着する。
 そこは大幹部クマチャンと2階ガーディアン候補がいる階だ。

「よ、よし。ここからが本番だ……」

 さすがに若干緊張した面持ちで、挑戦者は2階の扉を開く。
 すると、またしてもフロアは暗い。

ぐいぃーーん……

 由宇のエレキギターが低く唸り、ルンルンがリズムを取ると、由宇がハードロック調に激しくギターをかき鳴らす。
 続いてマイク越しにクマチャンの声が。

「よくたどり着いたな。大総統の館2階へ!」

 パッと明かりがつくと、中央にクマチャンと2階オーディション応募者。フロアの壁沿いにはギャラリーが盛り上がっている。
 3階への階段の前には、ダイソウが審査員して陣取る。ネネ、モモ、ハッチャン、さらに3階以上の志望者は、それぞれの階にすでに向かったようで、ここにはいない。

「またこういう演出かー!」

 挑戦者たちは続けざまのお祭り騒ぎに難癖をつける。
 しかしクマチャンは、

「甘い甘い! これは前座の演出ではないのだ。これは応募者のプレゼンの一部! 正義の戦士たちよ、すでに戦いは始まっているのだー!」
「な、なんだと!」

 またしても戸惑う挑戦者。
 そしてクマチャンの両脇には、マイクを持ったカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が飛び出してくる。
 カレンははつらつとした顔で、

「そういうわけで、大幹部クマチャンの階を突破するにはやっぱりこれ。『トークライブ対決』! 何を隠そうダイソウトウ閣下はおろかクマチャンは、シャンバラ全土の人心を鷲掴みにした、トークのプロ。ダークサイド3DSをお聞きの通りだよ。ボクたちをしゃべりで圧倒してもらわないと、3階には進めないぞ!」

 と、挑戦者たちに勝負を挑む。

「と、トーク対決か……」
「これまた難問だ……」

 誰が前に出るべきか迷っているところに、軽やかに前に進み出た雅と眠そうなタンタン。

「ここはあたしに任せて! あいつらにノリだけは負けないわ」
「ふぁ……ワタシ、トークはあまり……」

 まずは先制攻撃にマイクを握りなおしたカレン。

「いやー、どうもどうも。ハッチャンはいないけど、ダークサイド3DSです」

 カレンに呼応してクマチャンも応える。

「カリペロニア放送局ダークサイド3DS。今日は大総統の館からの公開収録! ギャラリーもこんなに来てくれてます!」

 クマチャンがマイクを向けると、わあっと盛り上がる見学者。
 そこにジュレールが、自分も頑張って盛り上げようとして、

「はっはっは。そんなわけないであろう」

 と、何もボケてないクマチャンに

ドガッ

 と鳳凰の拳でつっこむ。

「いって! ちょ、俺何もボケてないんだけど」

 脇を押さえて悶えるクマチャンに、カレンはさらにトークを続ける。

「そういえばこないだ空京の交差点でダイソウトウ閣下を見かけまして」
「ほ、ほうほう!」
「ボタン式信号のボタンをね、何を思ったか連打してるんですよ。何かブツブツ言ってるから近づいてみたら『私は名人を超える、私は名人を超える』つって、16連打の練習してんですよ」
「はっはっは! 何やってんのあの人!」
「ありえないであろう」

ゴスッ!

「ぐお、あの、マジ痛い……」
「またまたー。痛いわけがないであろう」

ボゴッ!

 こういう形でツッコミなどしたことがないジュレールは、手当たり次第にクマチャンをはたくことしか思いつかない。
 そんな様子を見て、雅はライバル心を燃やす。

「向こうの機晶姫もなかなかやるね。こっちも行くよ、タンタン!」
「ふわ……ですからワタシ、トークスキルはあまり……」
「まったまたぁー!」

 と、タンタンに元気いっぱいにツッコむ雅。

ポーン……

 関節がゆるゆるのタンタン。いつものように首が吹っ飛ぶ。その拍子に加速ブースターのスイッチが入り、タンタンの首はバヒューンと放物線を描いて飛んでいく。

「もう、眠いです……」

 コントのような飛び方に、ギャラリーは雅とタンタンのやりとりに大喜び。
 焦るカレン。

「な! い、今の面白い! ジュレ、君も首飛ばして!」
「無茶を言うな。我とあの機晶姫では構造が違う」

 雅は胸を張る。

「どーお? うちのタンタン面白いでしょ。なんたって立体映像でダイソウトウの命を救ったことだってあるんだからね」

 カレンも負けじと、

「ふーんだ。うちのジュレはカリペロニアの危機を救ったもん」
「空京放送局のダイソウトウの肖像画。あれあたしが立案したんだよ」
「あーらご苦労様。ダークサイズの宣伝担当として利用させて貰うよ」

 と、何故かダークサイズへの貢献度対決になっている。
 ぽつんと取り残されるクマチャン。

「ま、トーク対決じゃ決着つかないよなぁ……」
「隙ありー!」

 と、悠がクマチャンの油断をついて、いきなりドラゴンアーツをかます。

「あぶねー!」

 クマチャンがかろうじてかわしたところに、悠が立ちふさがる。

「調子を狂わされっぱなしだったが、そもそもオレはプレゼンだのオーディションだのに興味はない! 目的はただ一つ。ダークサイズの壊滅だぜ!」
「そうだ! 俺様達は悪の道楽に興じる気はない!」

 と、窓の外にランザーとレイオールの顔が見える。

「お前ら……結局は入れなかったのかよ」
「ワタシたちに構うな。ゆけ! パラフラガ!」

 レイオールはカッコよく仲間を送り出すが、イマイチしまらない。
 悠もがくっとくるが、

「ま、まあいい。とにかく大幹部。あんたを倒せば、2階は突破だぜ! 悪は両断する!」
「待ちたまえ。君は我々ダークサイズを悪と言ったか?」

 ゆらりと悠の後ろに現れる、ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)
 悠はハッとしてミヒャエルを振り返る。

(な、何だと。気配を感じなかったぜ……)

 悠は軍人風の男に警戒しつつ、

「ああ、言ったぜ。お前らは悪だ!」
「なるほど。では問おう。君は一体何のためにダークサイズを敵視し、討とうと言うのかね?」
「決まってんだろ。パラミタ大陸征服を目論む秘密結社。そんな極悪を討つのがオレの使命だ」
「悪? ダークサイズは悪なのか?」
「自分らで言ってるだろ! なんとかのなんとかの悪の秘密の結社って」
「確かに。しかしそれは言ってるだけかもしれないぞ?」
「え、何?」

 ミヒャエルは、悠の正義を覆すための理論展開を始める。

「我々は確かに謎の闇の悪の秘密の結社と名乗っている。しかし今までの活動を振り返ってみるがいい。空京放送局は正当にたからくじを当て、株式を買い取ったものだ」
「で、でもその前に向日葵を誘拐しただろ」
「秋野向日葵を誘拐し、空京放送局を破損したように見せかけて、放送局内の不正をあぶり出し、経営を正した」
「うっ……じゃあこのオーディションはどうだ。着々と反社会組織を作ってるじゃないか!」
「ここカリペロニアは女子部長・姉キャノンネネ殿の私有地。今日もその私有地で生放送のお祭りを行っているだけだ」
「な……くっ」

 ミヒャエルは言葉巧みに悠を追いつめる。

「我々はだれにも迷惑をかけていない! そんなダークサイズを潰すのが正義だと言うのか! さあどうした。君の言う正義とは、一体何なのだ!」
「う、うおおおお……」

 悠はついに頭を抱えてうずくまる。

「おおっ! やるねえ、ゲッペホー卿プロパガンダー!」
「ふっふふ。正義の戦士はこのように攻撃するに限ります」

 喜ぶクマチャンに、得意げなミヒャエル。
 その様子を見た向日葵は、

「まずい!」

 と、助っ人に入ろうとする。しかしそんな向日葵の肩をつかみ、アスカが止める。

「向日葵ちゃん、ここは私たちにいかせて〜。向日葵ちゃんは少し休んでねぇ」
「そ、そう?」
「うん〜。その代わり、今度向日葵ちゃんに絵のモデルになってほしいのぉ。ヌードじゃないから安心してね〜」

 アスカはルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)蒼灯 鴉(そうひ・からす)オルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)を従えて、悠の助っ人に向かおうとする。
 しかし、さらにそれに立ちふさがる九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)

「おっと。彼を助けたければ、自分らの挑戦を受けてからにしてもらうぜ」
「むうっ、がんばるぞ〜」

 ローズの挑戦に、気合いを入れるアスカ。

「我らがダイソウトウと対峙するからには、格調高い正義の味方でなければならない! それを試させてもらうぜ」
「な、何をすればいいのぉ?」
「方法は筆記試験と実技試験! 合わせて100点満点で、80点以上を取ってもらう! ダメならダイソウトウと戦う資格なし、と判断するぜ!」

 と、ローズの後ろに九条 レオン(くじょう・れおん)ヴァンビーノ・スミス(ばんびーの・すみす)『殺』・パーフェクトガイド(きる・ぱーふぇくとがいど)が現れる。
 ヴァンビーノが、

「審査はオレ達四人だ。まずは筆記試験を受けてもらうぜぇ」

 と、答案用紙をテレキネシスでふわりと浮かせる。

「う……筆記かぁ……」

 アスカが冷汗をかいたところに、

「はいやっ!」

 クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)がフルプレートの重装備で、白馬を駆って加勢に来る。

「では筆記試験は僕に任せてもらいましょう。騎士としての教養が役に立つはず! まずは勝ち抜けることが優先です」
「おっ、なかなかカッコイイじゃねえか」
「しかしよぉ〜、分担で受けるなんて、ちょっとずるくねぇかぁ?」

 ヴァンビーノはローズを見る。

「たしかに両方受けてもらわないことには……」

 と、ローズも困るが、彼の裾を、レオンがくいくいと引く。

「どうしたレオン?」
「……レオンね。早くカッコイイポーズ見たい……」

 子供にはあまりに長い待ち時間だったらしい。レオンはローズやヴァンビーノに上目遣いで目を潤ませる。
 ローズとヴァンビーノは目を合わせ、

「しょ……しょーがねえなああ〜〜」

 獅子身中の虫。レオンにあまあまなローズやヴァンビーノは、結局筆記と実技の別受験を許してしまうことになる。
 そこにヴァンビーノがさらに条件を出す。

「よぉし、あんたは筆記試験だけでいい代わりに、この攻撃を受けながらやってもらうぜぇ」

 ヴァンビーノが取り出だしたる、今回のびっくりどっきりメカ発明。

「どじゃあああ〜ん。『KAYOLOID(かよーろいど)唄子さん』〜」

 スイッチを押すと、唄子さんからローズの子守唄が流れてくる。
 クライスはひやりとし、

「な、眠気攻撃ですって! 卑怯な……」

 かくしてフル装備のクライスが机に向かってペンを走らせる。
 サフィ・ゼラズニイ(さふぃ・ぜらずにい)はクライスのすぐそばでお菓子を食べながら、

「がんばれ〜♪」

 と、雑な応援をしている。
 どうにか筆記試験を免除されたアスカは、

「よ〜し、じゃあ実技試験だぁ」

 改めて気合いが入る。
 ローズはアスカに向き直り、

「実技の方は簡単と言えば簡単だ。正義の戦士たるもの、登場シーンには格別なこだわりがあるはず。それが本当にカッコイイかどうか見せてもらう。こちらが指定するアイテムを使ってな!」

 ローズの条件は、『殺』のエレキギターとデスボイス、ヴァンビーノが調合した火薬。
 一見無茶な課題だが、アスカ達はキラリと目を光らす。

「やったなアスカ。我らが用意してきたアレができるぞ」

 ルーツがアスカの肩に手を置く。それにアスカも頷き、

「うん、みんなぁ、いっくよ〜!」

 まずは『殺』が思いっきりディストーションを聞かせたギターを鳴らし、

「ゥオールデストルォーイ! ヴィ゛エ゛ア゛ア゛ッ」

 ゴールデンタイムではタブーと言われるデスボイスを披露。このBGMで正義のヒーローが名乗りを上げるなど不可能に思えるが、そこにまず鴉がV系っぽいポーズをとり、

「悪の華が咲くならば、散らせてみせよう正義の鉄槌。ジャスティスアサシン・鴉……」

 と、あえて物憂げにうつむき加減の顔に手を添える。

「おおおっ、はかなげ!」

 ギャラリーも盛り上がる。
 続いてオルベールが指を鳴らすと、ルーツが『殺』のスピーカーを持参したラジカセに切り替え、マジカルヒロインな音楽を流す。

「闇の霧を払いのけ、愛の光を照らしましょう! ジャスティス・デーモン、オルベール♪」

 と、オルベールが投げキッス。

「かわいいー!」
「弱き者達のために東へ西へ、ナラカさえも駆け抜ける! ジャスティス・ウィザード、ルーツ!」
「きゃー! 私のナラカにも降りてきてー」
「そしてっ! きらめく希望をこの手に宿し、悪い奴は華麗に成敗〜! ジャスティス・アーティスト、アスカ!」

 最後に今日のために練習してきた、四人での群唱。

「我ら! ジャスティス・カルテット!!」

ドオンッ!

 最後にヴァンビーノの火薬が背後で破裂。ちょうど四色の煙が上がる。

「か、かかか、かあっこいいーーー!」

 ローズとヴァンビーノは血糊を口に含んで、盛大に吹いてみせる。

「ぶはああっ!」

 血糊の使い方が分からないレオンは、

「えっと……」

 と戸惑った後、ぽてんとその場に倒れる。
 『殺』は懐から薔薇の花びらを撒き、華麗にそこに倒れる。
 ローズがアスカを見上げ、

「み、見事だ……お前たちはダイソウトウ閣下の元へ向かう資格がある。し、しかし! 我々より強力なガーディアンがお前たちを待っているぞ……がくっ」

 と、最後に見事な散り際を見せた。

「やったあ〜、ガーディアンを倒したよぉ!」

 喜ぶアスカだが、

「待て待て待て!」

 クマチャンとミヒャエルが止める。

「勝手に勝ったことにされても困るよ」
「そうだ。私もガーディアン候補。忘れてもらっては困る」
「せや! 私かておるんやさかいな!」

 と、ようやく出番を名乗り出てきた穂波 妙子(ほなみ・たえこ)。彼女はボンテージファッションにハイヒール、パピヨンマスクに鞭という出で立ちで登場する。
 早くも刺激的なビジュアルを見れて、男性を中心にギャラリーも沸く。

「私のプレゼン、やらしてもらうで! 私からの勝負は!」

 妙子は長いロープのつながった手錠を取り出し、

がちゃん

 と、クマチャンの手にはめる。

「え?」

 クマチャンのリアクションもつかの間、妙子はロープを天井の梁を通して強くひき、哀れクマチャンはフロアの中央に宙づりにされる形になる。

「ええええ! ま、まさかこの展開はー!」
「せや、クマチャン。お察しの通りっ」

ビシイッ!

「いてー!」
「クマチャンといったらいじり尽くすに限るやろ。3分勝負でどれだけ悲鳴を上げさせるか勝負や! 直接攻撃は鞭のみ。口撃はいくらでも可や!」
「俺もともとはこういうキャラじゃねえんだけど!」
「なるほどぉ、じゃあ私の勝負と似てるわねぇ。『そこに愛はあるか? リーダーに対する悪口対決』! お互いにリーダーの不満を言って、耐えられなくなった方が負け!」

 と、アスカも同時に勝負を提案する。
 妙子はパピヨンマスクに手を添え、

「なるほど。しかしええんか? この勝負、負けた方は服脱がされて、下着姿を披露するんやで!」
「ええ〜、なにそのルールぅ!」

 妙子の個人的な罰ゲームに、さすがに顔を赤らめるアスカ。

「な、アスカの下着姿……だとっ」

 鴉が無意識に拳を握る。

「鴉、あんた今わざと負けようと思ったでしょ」
「な! 何言ってんだ。そんなわけ……」

 オルベールが鴉に指摘するが、鴉の目は泳いでいる。
 妙子はびしっと鞭をしごき、

「よーし、じゃあ不満を言いながらクマチャンをしばく! これでいくで〜」
「よかろう。では我から」

と、ルーツが妙子の鞭を取る。

「アスカ……絵具が足りないからって我をパシリに使うな!」

ビシイッ

「いって! あーもう何かこれすげえ理不尽だな!」

 続いて妙子。

「私を2階のガーディアンにせんかい!」

ビシイッ

「いって! それ不満じゃなくて願望だろ!」

 次はオルベール。

「アスカ。いいかげん化粧も覚えなさい。女の子でしょ!」

ビシイッ

「言っとくけど俺こういうの気持よくなっちゃうタイプじゃないからな!」
「そもそも私のプレゼンはどうなったのだ!」

ビシイッ

「こらゲッペホー卿! お前便乗してんじゃねえよ!」

 続いて鴉が鞭を取る。が、

「……」
「どうした鴉?」
「あ、アスカへの不満は……」

 ぽとりと鞭を落とす鴉。

「い、言えない……っ」

 膝をつく鴉に、ルーツとオルベールが寄る。

「何を言っている鴉! 昨夜あれほどアスカの悪口を言い合ったではないか。チビとか貧乳とか鬼女とか」
「ふ、ふう〜ん。鴉ってば私のことそんな風に思ってるんだぁ……」

 勝負外のところで悪口を言われ、口元がヒクつくアスカ。
 オルベールがハッと気づく。

「ま、まさかあんた。本当にわざと負ける気じゃ……」
「な、何だと鴉! アスカの下着見たさに裏切る気か!」
「うぅ、お、俺だって……俺だって一人の男なんだあああっ!」

 鴉は意外な自分を発見し、それを押さえられないことに涙があふれ出す。

「ふ〜っふっふ! どうやらこの勝負、私の勝ちみたいやなぁ。この一撃で3対2。2階ガーディアンは私のもんやー!」

 妙子が鞭をふりあげる。

ビシイッ

「いー! たくない……?」

 クマチャンは音と共に痛みを感じないことに驚き、目を開く。

「ああ〜! ルンルン! 何してるのぉ〜!」

 由宇は隣にいたはずのルンルンが、クマチャンの前に立ち、鞭を食らっていることに驚く。

「な、なんやのん、この子! まさかクマチャンをかばっ……」

 見ると、ルンルンは顔を恍惚とさせ、ニヤニヤしている。

「……ってない! この子、わざと……? ちょ、どきいな!」

 妙子は別角度からクマチャンに鞭を振るうが、

ビシイッ

 ルンルンは見事に動きを合わせ、鞭を食らいに行く。

「ぅふふふふ……」
「ルンルン! ルンルン戻って来てぇ!」

 由宇の声むなしく、ルンルンは妙子の鞭を全て受け入れる。どうやらクマチャンがしばかれるのを見ているうちに、彼女の中の強烈なマゾが目を覚まし、無意識に飛び出してしまったようだ。
ついに膝をつく妙子。

「だ、ダメや……クマチャンに一発も当てられへん」

 クマチャンにダメージを与えるのが勝負ではないのだが、あまりの出来事に敗北感を感じる妙子。

「この勝負……引き分けや……」

 お互いに味方の行動によって勝利を逃した妙子とアスカ。

「ふ、しゃーないなー……」

 と、妙子はボンテージのジッパーを自ら下ろす。
 たちまち妙子は見事な胸の下着姿に。長い髪をほどいており、色気もいつもの5割増しだ。

「お、おおお〜」

 泰輔のカメラが妙子の胸にズームアップ。

「ど、どこ移してるんですか泰輔さん!」

 レイチェルが慌ててカメラの向きを変えさせる。

「さあ、あんたも腹くくって脱いでもらおか。ダークサイズの戦闘員に脱がさしてもええんやで」

 妙子は立派な胸の谷間を惜しげもなく晒しながら立っている。
 見学者の中で、数人がナインにひそひそ話しかける。

「戦闘員になりたいだァ? お前さんも好きだねェ」

 妙子の趣味が、戦闘員獲得に一役買うことになった。
 一方アスカは、

「ええ〜。モデルさんじゃないから、そんな人前で……」

 と、渋っている。するとオルベールがアスカの肩を支え、

「いいのよアスカ! あなたが恥をかくくらいなら!」

 と、オルベールが身代わりとなって、自慢の肢体を披露する羽目になる。

「おお〜!」

 見学者の中からは何故か喝采も漏れてくる。

「あのー、閣下。個人的には2階のガーディアンは妙子とルンルンをセットで」

 巨乳派のクマチャン。ダイソウに個人的な願望を口にする。
 しかしダイソウは、

「2階でお色気シーンなど、早すぎるのではないか?」

 と言う。
 ミヒャエルがクマチャンに寄って来て耳打ちする。

「痛い目はあの娘にあわせて、巨乳娘をそばに置きたいだけですな? 大幹部殿」
「ば、ばらすなよぉ〜、ゲッペホー卿ぉ〜」

 クマチャンはにやにやしながらミヒャエルの肩をバシッとはたく。
 とにかく2階での戦闘は、1勝1敗2引き分け、という結果が出る。

「あ。あれで私は勝利と判定されていたのか……」
「あの、僕の筆記試験は意味あったんでしょうか……」

 イマイチ釈然としないミヒャエルとクライス。

「では次は、3階オーディションだ。皆階段を進むがよい!」

 ダイソウは悪のボスと言うより案内役のように、全員を促す。