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クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

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クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…
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第6章 楽しければ分からなくてもいいんです

「藍さま、ここが遊園地だよ!夜までやってるんだって。だから閉館時間までいーっぱい時間があるんだよ♪」
 めいっぱいはしゃごうと鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)は、百鬼 青藍(ひゃっき・せいらん)の手を引っ張り園内を走り回る。
 実は青藍の方は、遊園地というものを知らなかった。
 24日の前日・・・。
「ねぇ藍さまー。明日、ボクと遊園地行かない?パフォーマンスとかいろいろあるんだよっ」
「氷雨・・・、遊園地とはなんだ?新しく出来た食べ物屋か、ショップの名前か?」
 その言葉を聞いた氷雨はペトリファイをかけられたかのように、カチカチの銅像の如くピキィインッと一瞬固まってしまった。
「え?遊園地知らないの!?冗談じゃなくて?」
「いや、知らないな」
「ほ、本気で言ってるのっ。うっそぉお、なんでーっ!!?」
「そう言われても、興味を惹かれないものはな・・・」
「興味ないからって・・・・・・遊園地を知らないなんて、人生の半分位損してるよ!むしろ、それ以上かもしれないよっ」
「そんなに凄いのか遊園地とは・・・」
「じゃあ、今から行こう♪」
「い、今から!?こら氷雨!手を引っ張るでない!大体、場所的につくのが遅くなるであろう!?」
 青藍は遊園地の凄さを力説する氷雨に連れてこられてしまったのだ。
「すっごいねぇ!辺り一面、雪景色だよーっ」
「ほぅ、ここが遊園地とやらか?かなり賑やかな場所だな・・・」
 人々が往来する園内を見回す。
「それにまったく見たことの無い物ばかりあるな。乗るということは、あれは乗り物なのか?」
 恐ろしいスピードで走るジェットコースターを見上げて呟く。
「藍さま乗りたい乗り物ある?特に決まってないならボクが決めちゃってもいいかな」
「あぁ、こういうものは始めてだからな。よく知ってそうな氷雨に任せよう」
「えっと、あのね。ゴンドラに乗ろうよ、ゴンドラにっ」
 氷雨はマップを広げて乗り場の場所を指を刺す。
「だ、だから引っ張るなというのにー!!」
 彼女に腕を捕まれた青藍は引きづられるように連れて行かれてしまう。
「たしかね、何か・・・言い伝えがあるんだけど。橋の下を通り過ぎる間に、お願いごとするといいんだって」
「ほう、願いとな。して、それは?」
「んー・・・大切な人のこととかを思ってかな」
「氷雨はどう願う?」
「藍さまや皆とずっーと一緒にいられますように、ってお願いするんだ!って、藍さまーなに笑ってるのさー」
 クスッと笑う青藍にムッとした表情で言う。
「ふっ、すまない。良い願いことだな」
 その言葉の後に“私も、お前達とは一緒に居たいと思うぞ”と、小声でぽつりと呟く。
「ねぇ藍さま、何か言った?」
「いや、なんでもない」
「えぇえー、教えてよっ」
「ほら。もうすぐ橋の下だ」
「本当だ!」
 ぎゅっと目を閉じた氷雨と青藍は、心の中で呟き始める。
「(今のがそうだったのか?―・・・ふむ、よく確認しなかったようだな。まぁ、あんなに嬉しそうにしているのだから、言わないでおこう)」
 ゴンドラから降りマップを確認したが、彼女に黙っておくことにした。
「さて氷雨。次は何に乗るのだ?私を存分に楽しませてくれるのだろう?」
「あのね、次はミラーハウスとか行きたいな!こっちだよ!」
 またもや氷雨は青藍の手を引っ張り、氷雪のミラーハウスへ連れて行く。
「乗り物もあるけど・・・歩くの、どっちがいいかな」
「私はどっちでもいいぞ」
「歩くとね、1時間以上かけて出る人もいるんだよ。そっちの方が楽しいかな?」
「いっ、1時間だと!?」
 彷徨わされそうな危機に、青藍は身体を凍てつかせる。
「でもー、いっぱい遊びたいから。それだと時間なくなっちゃうからね、乗り物の方にしようっ。自分で運転するみたいだね♪」
 小さな車に乗ると氷雨はハンドルを握り、楽しそうにニヤニヤと笑う。
「ふむ。そんなにスピードは出ないのだな?」
「なんかね、操縦者で変わるっぽいよ」
 彼女の言葉に青藍は“その方が安全だろうな”と心の中で呟く。
「見て見てー青藍さま、ボクがみょーんて伸びて見えるよ!2mくらい背が高くなっちゃってるみたい」
「こっちの私は横に細長く見えるな。ほう、こっちからだと縦に伸びて映るのか?何とも不思議な感じだ」
 氷の鏡に自分達の映し出され、見る角度によって変わる様子を可笑しそうに笑う。
「どっちに進んだらいいのかな?」
「ハンドルの傍の画面を見てみるのだ。進んでいる方向と、現在地から出口までの距離なども示してあるぞ」
「へぇー、ナビもついるんだ!これならいくら迷っても安心だね」
「(初心者用みたいだな。入り口の看板を見た時、上級者用と選ばせてくれるように書かれていたが。親切な従業員がこの方がいいと思ってこっちを貸したのだろう)」
 車の後ろにつけられている初心者マークをちらりと青藍が見る。
「わぁ〜。今度はボクがいっぱーい見えるよ。こうやってくねっと曲がると、捻じれて見えて面白ーーいっ」
「視覚効果を超えてなんだか凄いな」
 ありえないほどぐねんっと曲がった自分たちの姿が鏡に映される。
「すごぉおい♪」
 氷雨が両手をあげてぷらぷらさせると渦巻状に移された。
「おっとっと、ぶつかっちゃうところだった!」
 壁にぶつかりそうになった瞬間、氷雨はハンドルを掴んで曲がる。
「出口とーちゃーくっ」
 30分以上彷徨い、ようやく出口にたどりついた。
「それでね、次はね・・・!」
 幼い子供がはしゃぐように、閉館時間まで遊び続けた。