天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

大規模模擬戦

リアクション公開中!

大規模模擬戦

リアクション



6


 勝利は目前かのように見えた。
 だが、皆が忘れていた存在がある。
 クレアの欺瞞情報によって分断されていた1/3の敵部隊である。
 彼らは欺瞞情報に気が付き、戦場を一直線に学生側の背後に向かってやってきた。学生たちは挟み撃ちを受けることになった。
「ボス、接敵まで120秒!」
 エイミーが叫ぶ。
「各小隊、前衛は前方の敵に接近戦で対処。後衛は後ろの敵に遠距離射撃!」
 とっさのクレアの戦術判断。これは実は一見滅茶苦茶のようでいて、的確だった。
 接敵までのタイムラグがある上こちらは即座に迎撃ができる状態。対して敵は移動中であり遠距離から攻撃を加えるには一度動きを停止しなければならなかった。
 つまり無防備な姿を一瞬晒すことになる。
「戦況分析! こちら【ゲイボルグ アサルト】。【イロドリ】へ。データを転送しますぇ。ポート662を開放しておくれやす」
「了解! こちら【イロドリ】。情報網更新。敵の位置データと戦況が更新されるわ。リカイン、オペレート手伝って」
「了解! データ転送完了」
(OKです、御空。ポイント2・2・7の周囲に射線を集中。それで敵に穴が開きます)
(わかった……)
「全機、ポイント2・2・7に射線集中!」
「照準セット! 撃てー!」
 そうして前衛では白兵戦を繰り広げつつ後衛では大型ビームキャノンやマジックカノン、スナイパーライフルなどで砲撃を集中させていく。
 ルカルカのマジックカノンが、加夜のマジックカノンが、杏の大型ビームキャノンが、御空の大型ビームキャノンが、一哉の大型ビームキャノンが、紫音の二門の肩部マジックカノンが、茉莉のスナイパーライフルが、裁のマジックカノンが、和葉のマジックカノンが、理知の大型ビームキャノンが、10の火線がひとつのポイントに集中する。
 密集隊形で進む敵は誘爆を受けて2機、3機と撃墜されていく。
「よし、スティンガーを出せ!」
 ジェイコブが指示をすると射程5000メートルの個人携行対空ミサイルが用意される。
「あれだけぼろぼろになったイコンならこいつでも行けるだろ。風穴開けてやる!」
 氷結地獄で装甲がボロボロになった前方集団の敵イコンに、ジェイコブの分隊はスティンガーを発射する。
 果たしてそれは狙い通りに上空のコームラントを撃墜した。
「おー。よし、コームラントといえども装甲がもろくなってはただの棺桶じゃ。今こそチャンスであろう」
 ライザはそう言うとレッサーワイバーンを駆って宝剣ブリタニアを片手にコームラントに近づいてゆく。
 頭部バルカンは八艘飛びで破壊済み。敵の随伴飛行歩兵ももういない。ライザを阻む敵は存在しなかった。
 そんなこんなで戦局は学生側有利で進められ、最終的にコームラントの大型ビームキャノンが上空から敵の基地を破壊する。
 その途端、彼らの意識は戦場から現実世界へと引き戻され、シミュレーターのヘッドセットを取り外す。
「よし、よくやった。今回は諸君の勝利だ。見事な戦術の連携だった!」
 教官が褒める。
「教官、これで停学解除ってことは……」
「残念ながら私の権限ではない」
 聡の言葉に教官は本当に残念そうに言うと、聡は「サクラちゃーん……どうにかしてよ」
 と桜の胸に顔をうずめて泣き出した。
「大丈夫ですよ、聡さん。そのうち学校の方も理解してくれます」
 サクラはそんな聡を愛おしそうに抱きしめながら頭を撫でるのであった。
「みんなー、あとで反省会開くから待っててね。で、涼司、ちょっと話があるんだけどさ……」
 ルカルカがそう言って涼司に意味ありげに近づいてくる。
「あ、火村さん涼司を奪おうとか、そんなことは考えてないから。あたしにも恋人はいるし。ただ、親友として聞いておきたいことがあってね……」
「あ、うん……」
「なんだ? ルカルカ……?」
 ルカルカは言葉に出しにくそうで、何度か言いよどんだ。
「え……とね。ロイヤルガードになったのよ」
「そうか。めでたいじゃねえか」
 涼司は友人の出世を素直に喜んでいるようだった。
「うん……ありがと」
「どうした? 歯切れわりーな」
「教導は国軍だから今までと基本的には同じだし、ルカはルカって頭では分かるの。戸惑うなんて、らしくないね……」
 そんなことを言ってルカルカは自嘲的に笑う。
「ね、涼司は突然校長に任命された時どう感じた? どう”校長の自分”に慣れた?」
「オレは環菜の遺言で校長に任命されたからな。どう感じたか、っていうより、「あいつの蒼空学園」を「みんなの蒼空学園」を守りたかった。それ以外のことは考えられなかったから、他のことを考えてる余裕もなかった。そう言われるとただひたすら目標に突き進むのも悪くないと思うぜ」
 涼司のその言葉を聞いてルカルカは笑った。
「ふふふ……そうだよね。涼司の場合は、そうだったよね。そっか、ルカはルカの目標に向かって進めばいいのよね……でも、目標ってなんだろう?」
「さあな? それこそこれから探せばいいんじゃねえのか? 一朝一夕に見つかるものでもないだろ」
 その言葉を聞いてルカルカは吹っ切れたようだった。
「そっか。ありがとう、涼司。やっぱり涼司は涼司だ」
「なんだよそれ?」
「涼司が友だちでよかったなってことよ……」
「なんか褒められてる気がしねー」
「そんなことないわよ。ちゃんとありがとうって言ってるじゃない」
「それもそうか」
 と、そこにリカインがやってきた。
「ルカルカくん、私にも涼司くんを貸してもらっていいかな?」
「あ、いいよいいよ。あたしのお悩み相談はもう終わったから」
 ルカルカは快諾し、涼司の隣をリカインにゆずる。
「じゃあね、涼司。リカインさんも、何かしらないけど負けないんだよ」
「うん。ありがと」

 沈黙。

「で、どうしたーよ?」
「今回戦況の変化に合わせてオペレーティングするっていうのを【イロドリ】さんと一緒にやってみたわけだけどさ、カノンくんの奪還作戦のこともあるし、うまく機能したから天御柱に転校してみようかと思ってるんだけど、涼司くんとしてはどう思う?」
「……寂しくなるな、そうなると」
「まあ、二度と会えなくなるわけじゃないさ。合同の作戦なら、顔を合わせるさ」
「それもそうか」
「それで、どうだろう?」
「リカインの意思次第じゃねーのか? 俺にはどうこういう権限はねーよ。ただ、天御柱に行っちまうと俺のサポートは受けられなくなるぜ。あいつのパートナーはあいつが事前に天御柱から蒼空学園に転校していたから俺の権限で何とか保護してるが、そうじゃなかったら裏切り者の仲間として吊るし上げられてたかもしんねー。そう考えると、俺の手の届かないところに行かれるのはちょっと寂しいな」
「大丈夫。私だって生身でイコンと戦えるだけの力は持ってる。そう簡単なことでやられはしないさ」
「うーん。そう言うなら転校してみるのもひとつの手かもしれねーな。なんでも、イコンの覚醒ってのは天御柱の生徒で、超能力を持ってないと無理らしいから、天御柱で超能力を勉強してみてもいいと思うぜ。あ、これは機密な。一応、覚醒に関しては切り札としてあまり外に漏らしちゃいけねーことになってるから」
「うん。私も言いふらしたりはしないよ」
「それに、情報網を構築するなら、【イロドリ】みたいに戦場に出たほうがいいな。三機くらいのイコンが合同で情報網を形成すれば、今回よりもいい情報網が築けるはずだ」
「そっか……まだ心は決まらないけど、考えてみるよ」
「おう。悩め。次の作戦か、飛行空母の建設計画の時にはまた天御柱に行くつもりだ。もしリカインが転校してても、その時に会えるさ」
「そうだね。ありがとう……あ、火村くんが待っているよ。女の子はあまり長いことまたせていると、他の男のところに行っちゃうよ? 寂しくてね。カノンくんのこともあるけど、環菜くんも無事復活したことだし、すこし彼女との仲を考えてみてはどうだい?」
「ああ、そうする。んじゃーな」
「じゃ、先に反省会に行っているよ」
 そう言ってリカインは去っていった。
 そして、加夜がやってくる。
「涼司くん……おつかれ」
「おう。加夜もおつかれ。今回は獅子奮迅の活躍だったな。剣舞、格好良かったぞ」
「そう? ありがとう」
 加夜はそう言うと憂いを秘めた横顔になった。
「カノンちゃんには……妹だ、って言っちゃったね」
「ああ、言っちまったな」
「あれで、良かったの?」
 恐る恐るといった様子で加夜が尋ねる。
「ああ。あれでいい。どっちにしろいつかは言わなきゃなかったことだ……あいつは俺にとって、世界一大切で、誰よりも守りたい、妹みたいな存在だ。でも、あいつじゃパートナーにはなれない。あいつは俺の横には立てない。どんなにあいつが強くてもだ」
「ねえ、私は涼司君の隣に立てる?」
「……ああ。立てる。というか立ってほしい。俺を支えて欲しい。俺一人じゃ、やっぱり駄目だ。花音が手伝ってくれるし、環菜も復活したけど、やっぱり俺一人だけじゃ大変なことは色いろある。というか、よくもまあ、環菜はこの激務をひとりでやっていたもんだよ。俺には絶対無理だ」
「そっか。じゃあ、私はこれからもずっと涼司君の隣にいるね」
「ああ、頼む」
「手、握っていい?」
「……ああ」
 加夜はそっと涼司の手を握った。暖かさが伝わってくる。加夜はなんだか泣きたくなった。
「……うう。ひっく。カノンちゃん、可哀想だよ……せっかく大切な人のことを思い出したのに……また、洗脳されて、鏖殺寺院に連れていかれるなんて」
 涼司はそっと加夜の肩を抱いた。
「大丈夫だ。あいつには騎士様が付いてる。あいつならなんとかカノンの心も守ってくれる」
「そうだといいね……」
 と、そこに花音がやってきた。
「涼司様、そろそろ反省会です」
「そうか、分かった」
 そうして涼司と加夜と花音は反省会の会場へと入っていった。

 総括。連携が非常に取れておりとても良い演習だった。次回の第二次カノン奪還作戦の際にも同様の連携を期待する。




担当マスターより

▼担当マスター

樹 和寿

▼マスターコメント

 お疲れさまでした。非常に連携が取れており素晴らしいアクション内容でした。
 相談掲示板が動かないので心配していたのですが、チャットのほうでやっていたのでしょうかね?
 次回はカノン奪回作戦第2回。そのつぎが全三回のイベントシナリオかキャンペーンシナリオで飛行空母建造計画になります。合間に何度かカノン奪還作戦とかミレリアとの戦闘とかS@MPのステージを入れながら進めたいと思います。宜しくお願いします。
 なお、今回は個別コメント及び称号の付与はありません。


▼マスター個別コメント