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不思議な花は地下に咲く

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不思議な花は地下に咲く

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不思議そうな顔で、辺りをきょろきょろと見回しながらに、呟く。
「そういえばさ、マナは?」
「まだだよ、まだ見てない。朝一番に彼女に百合の花をプレゼントしようとしたが、まだ姿が見えなくてさ」
 エースはそう言いながら、胸ポケットから百合を取り出して少し残念そうに視線を百合へと落とす。
「あれ?誰かくるよ?」
 と、エースの横からひょっこりと顔を出した芹 なずな(せり・なずな)がその場の全員に聞こえる様に声を上げた。再び全員でなずなが指差す方に目をやると、美羽、ベアトリーチェ、未沙が来た方とは反対側から六人、人影がやってくるのが見える。
「あれは――……?」
「此処からじゃ……見えないねぇ」
 リオンの言葉に対して、北都が苦笑する。しばらく皆が目を凝らしてみていると、ようやく六人の姿が鮮明な輪郭を持ち始めてきた。
レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)カムイ・マギ(かむい・まぎ)長原 淳二(ながはら・じゅんじ)佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)スノー・クライム(すのー・くらいむ)の六人である。
 彼等が近付くにつれて話している声が微かに一同に届いてきたが、どうやら“幻の花”の噂について話している様だった。と、歩く六人も一同に気付いたらしく、話を中断して一同を見やる。
「お?なんかみんなこっち向いてるね」
 彼らの視線に気づいたアニスはそういうと、一同に向かって手を振る。
「どうやら、俺たち一番遅かった感じですかね」
淳二の言葉を聞いた和輝は、少し考えてから何かに気付いたらしい。隣を歩いていたアニスとスノーを交互に向きながらに言った。
「なら、こんなに悠長に歩いてるわけにはいかないですね。アニス、スノー。急ぎましょう」
「そうよね、待たせてるみたいだし」
 スノーが落ち着いた口調のままに歩調を早める。
 当然、彼らと共に歩いていたレキは彼らのやり取りを聞き、首を傾げながらにカムイへと言った。
「この流れって……ボクたちも急いだ方がいいんだよね?」
「ええ、それはまぁ。僕たちが待たせてるみたいですしね」
 レキの言葉に、随分と冷静な返答を返したカムイは、淳二を向いた。
「少し急ぎましょう。噂の事は、道々話してみるのもいいでしょうし、何よりこれからそれを確かめに行くんですから、真偽はそこで」
「明らかになりますね」
 淳二が言い終ると、六人は互いの顔を見合わせ、皆が待つ公園へと急いだ。
互いに楽しみを、互いに喜びを求めて、故の笑顔を浮かべて。

 集合場所で待っている生徒たちが増える中、しかし彼らは未だに待ち人を待っていた。
と――。
「なんだ。時間通りに来たはずだが、もうみんないたのか」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)がそんな事を言いながら現れる。
「まだ、マナが来てないけどね」
 今やってきたエヴァルトにそう言いながら、再び辺りを見回して愛美の姿を探す未沙。
「それにしても遅いわねぇ……小谷さん」
 呟くラナロックの声は落ち着いているが、眉間に若干の皺を寄せながらに言う辺り、まだ不機嫌なままなのだろう。近くにいたエースと真人、セルファは思わず彼女から距離を置いた。
「まぁまぁ、そんなにカリカリなさらずに」
 周囲が彼女から少しずつ距離を離していくのに対し、そう言ってラナロックを諌める中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は一人、特に何と言った様子もなく、ラナロックに向かって行った。
「へぇ、機嫌の悪いラナを怖がらないなんて、君、なかなかやるねぇ」
「私、ご覧の通り目隠しをしていますので、表情等は見えませんの」
 ウォウルの言葉に返事を返す綾瀬。と、隣にいるリオンが首を傾げながらに尋ねた。
「見えないのならば、何故ラナロックさんの機嫌が悪いと?」
「あらあら、これは少し、言い過ぎましたかしら」
 綾瀬は特に何と言う事はなく、からからと体を揺らして笑った。と、そこに声がする。
遠くから聞こえる声の主は、ほぼその場の全員が知る人物。そして――彼らが待っていた人物のものである。
「みなさん、ごめんなさい!お待たせしました」
「遅い!すごく遅い!お待たせ、じゃないよね!」
 レキは近付いてくる彼女に聞こえる様に大きな声で、しかし特に声を荒げている様子もなく言った。
「やっと揃いましたね。これで」
「全員、でいいのかなぁ?彼女たちいれると」
淳二の言葉に続けて北都が言うと、ウォウルは辺りをざっと見回してから少し考える。
「多分、これで全員だろうね。僕は知らないんだけどさ」
 待ち人来れり。と、言う事で、一行はワイのワイのと話し始め、しかしこうして本日のメインイベントは始まるのだ。
「……ちょっと遅いんじゃないの?愛美」
「ごめんね、レアムさん。彼女たち二人に、今日一緒についてきてくれないか頼んでたんだよ。ぎりぎりまでさ」
 言いながら、愛美は自分の隣を黙って歩く辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)と、にこにこと歩いている堂島 結(どうじま・ゆい)に目配せをする。刹那はルクセンに軽く会釈だけすると、特に会話をするわけでもなく、進行方向へと目を向けるのみだ。
「ふぅん……なんかクールな人ね」
「だよね! そう思うよね! あぁ、そうだった。私は堂島 結って言うの。よろしくね!」
「ルクセン・レアム。よろしくね、結」
結とルクセンが歩きながらに握手をする。
「今日はみんなで力を合わせて、一緒に頑張ろうよ!」

 愛美は笑顔でそう言うと、前方で楽しく繰り広げられる会話へと入って行った。