天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

1ヶ月遅れのイースター

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1ヶ月遅れのイースター

リアクション



狙われた校長

 環菜救出のために影野 陽太(かげの・ようた)は未だナラカで環菜の為に奔走中であり、パートナーのノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は一人でカフェテリアに来ていた。
授業も終わり、おやつにイチゴのムースを注文しようとしてとしていた矢先に、事件に遭遇したのであった。
たまたま同じテーブルについていたセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)グラハム・エイブラムス(ぐらはむ・えいぶらむす)も、愛美が大鎌を所持したバニーガールに変身し、雅羅を襲うのを見た。雅羅が即時応戦し、愛美が色っぽい後姿をさらしつつ去ると、3人は雅羅から事情を聞いたのだった。

「マジかよ……何てこった……! ……しかしこいつぁ目の保養になるな〜。
 何でセシルはバニーガールになってないんだ! 見たかったのに!」

愛美の色っぽいバニー姿を目で追うグラハム。かてて加えてこのせりふ。セシルが真っ赤になった。

「ちょっ、グラハム様? あまり恥ずかしい事を大声で言わないで下さい!
 ……もう、そのうち着てあげますから、今は真面目にお願いしますね?」

「ほーーーーーーーーう」

語尾にハートマークがつきそうな声音でグラハムが言い、セシルはさらに赤くなった。ノーンがそんな大人(?)の話には気づかず、張り切っている。

「みんなでがんばって、早く解決するです! えーっと、なんだっけ? なんとかエッグを探すですよ。
 そしたらカフェで雅羅ちゃんともお友達になって、みんなでケーキを食べるのですよ〜」

セシルが優しく、

「イースター・エッグ……ですね。本来は赤のようですけど。
 カラフルにく塗った卵を友人に贈るのでしたわね……」

「お姉ちゃん、よく知ってるんだね〜。
 ねえねえ、一緒に校長室を探そうよ〜。ワタシ『ウサギの足』を持ってるからきっと見つかるよっ!」

 セルファ・オルドリンは真人にあっさり逃げられ、廊下にたたずんだままぼんやりと考え込んでいた。イースターバニーとして元の人格が封印されるとはいえ、思考や行動のパターンは元のものが影響するため、猪突猛進は変わらない。

「哀れな犠牲者は誰にするかぴょん……
 そーだ〜!意表をついて校長室の窓から突撃するもの面白いかもしれないぴょん」

早速行動開始である。

桜月 舞香(さくらづき・まいか)桜月 綾乃(さくらづき・あやの)はバトン・チアリーディング部の活動で、蒼空学園に練習試合の応援に来ていた……はずだった。
しかし応援席で奇妙な光に包まれ、気がつくと舞香は鉄扇を手にした、黒のエナメルのハイレグレオタードのセクシー系バニーガールに、綾乃は薙刀を手にした蛍光ピンクのふわふわキュート系バニー姿に変じていたのである。周囲の男子学生から、どよめきが沸きあがる。

が。二人もまた、猛烈に湧き上がる髪切り衝動の虜。舞香は鉄扇を一動作で開いた。

「男の長髪なんて……ロン毛茶髪なんて論外ぴょん。
 男なんて、全員坊主で十分ぴょん!!!!」

綾乃はのんびりと立ち上がった。

「これはお祭りぴょん。
 難しく考えることないぴょんね。
 本能の赴くままに楽しめばいいんだぴょん。
 というわけで〜、み〜〜〜〜んなモヒカン刈りにしてあげるぴょん!」

たちまち大騒ぎとなった。15分後。舞香は宣言した。

「ナンパ男の総本山、山葉涼司校長の茶髪をばっさり頂くぴょん!」

「いこーぴょん!!」

 火村 加夜(ひむら・かや)は近くにいたクラスメイトからうわさを聞いた。どうやらバニーガール化した生徒が、手当たり次第に髪の毛を切って歩いているらしい。事態の収束には、なんでもバニー化した生徒のの人格が封じ込められた、イースターエッグを探し出すのが鍵だという。

「あなたも早く逃げたほうが良いわよ」

「髪を切られるのは困りますけど……これ以上犠牲者が増えるのは困りますよね。
 皆さん困ってるようですし、放っておけません、私はイースターエッグ探しを手伝うことにします」

「……そっか、ファイト!」

クラスメイトは急いで教室から出て行った。

「校長室よく行ってるので、いつもと違う物が置いてあれば気付くと思いますし、行ってみましょうか」

考えがまとまったので加夜は校長室へと向かった。

 校長室では、山葉 涼司(やまは・りょうじ)が頭を抱えていた。

「毛刈りをするバニーガールだと?」

元の人格が封印されているため、倒すわけにもいかないらしい。雅羅らが捜索に当たっているようだが、校内は髪を刈られた生徒が着々と増え、混乱状態だ。そこへ、ドアがノックされた。

「ん? 誰だ? 入れ」

応じて入ってきたのは舞香と綾乃であった。

「うわ! お、お前ら!!」

「はーい、セ・ン・セ、あたしと楽しいことしないぴょん?」

舞香は体をくねらせセクシーボディを見せ付け、投げキッス。

「今それどころじゃねーだろって! てかそういう問題じゃねえ!!!」

綾乃が山葉に向かって飛び上がった。

「バニーガール・ヒップアターーーーーック!!!」」

ようはお尻による押しつぶし攻撃である。涼司がすばやくよけたため、綾乃は尾てい骨をしたたかに硬い床にたたきつける羽目となった。

「ッ!!!!!!」

手加減なしのアタックは、手加減なしの床の報復となって帰ってきた。脳天へ突き抜けるすさまじい衝撃に、綾乃はそのままあえなく失神。

「よーくーもー」

「い、いや待て今のは俺が悪いんじゃないぞっ!!」

わめく山葉。そこへ窓から、セルファが跳躍力を駆使して飛び込んできた。

「髪の毛いただきまーーーーーーす」

じりじりと迫る二人のバニー。山葉絶体絶命。

そこへセシル、グラハム、少し遅れてノーンと、校長室入り口で彼らと合流した加夜が飛び込んできた。

「あ、まだ校長先生髪の毛あった〜! 良かったね」

ノーンが言うと、セシルがおっとりと挨拶した。

「あら山葉様、緊急事態ですので失礼いたしますわ」

一瞬の間があったが、バニー二人は新たな獲物と見て、襲い掛かってくる。

「ちょっとの間ひきつけておいてください、ヒプノシスを使います!」

加夜がそっとグラハムと山葉にささやいた。グラハムが即座に啖呵を切った。

「漢は髪なんざ気にしねえ……良い男はどんな髪型でも良い男なんだぜ?
 だが、セシルの髪は何としてでも守らせてもらうっ!」

山葉も椅子を構えた。バニー二人はそちらへ向かって、背後がお留守となった。

10分後。失神一名、睡眠中2名のバニーと、校長の机の引き出しから発見されたライラック色にスミレ模様のイースターエッグが回収された。加夜は校長室の後片付けを提案し、全員で校長室を整理してから、カフェテリアへと向かった。

すべての卵が、今そろった。