天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

葦原明倫館の食堂・秋の新めにゅ~開発企画☆

リアクション公開中!

葦原明倫館の食堂・秋の新めにゅ~開発企画☆

リアクション


第5章  御着物談義


「やっぱり葦原は雰囲気ががらっと変わるから面白いわね〜。
 お店も独特で楽しいし、創作意欲も掻き立てられるわぁ♪」

 スケッチブックとペンを手に、城下を歩く師王 アスカ(しおう・あすか)
 きょろきょろしながら、気になるものを見つけては描きとめていた。

「マスター、あまり離れないで。
 いざというときに守れない」
「アスカは相変わらずね……こういうときくらい、絵はお休みにしないと」

 自由自在に動くアスカを、ハーモ二クス・グランド(はーもにくす・ぐらんど)が追いかける。
 オルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)は、そんな2人の姿を、笑いつつ眺める役割だ。

「わあ〜着物店だぁ、どれも綺麗ね〜これぞ織物の芸術よね〜!
 ベル達が着たら似合うかもぉ」
「あら、着物?
 確かに魅力的だけど、ベル達よりアスカの方が似合うわよ」
「着物……古くから日本という国で着用されてきた和装と認識。
 情報から判断した結果、二クスの体型では効率的ではないと出た。
 マスターの体型の方が100%理想的体型と」
「え、なんで?」
「胸元が苦しくてとても着れたものじゃないからよ。
 断然、アスカの体型の方がぴったりだわ」
「胸……??」
「二クスもなかなかのサイズだけど、どう?
 お互い大きいと肩が凝ったりして大変よね〜。
 可愛い服とかなかなか着られないし、下着もしかりなのよ?」
「オルベール・ルシフェリアが言う、肩が凝るという現象はない。
 しかし戦闘の際に邪魔と認識するのはある」
「ああ〜そうよねぇ。
 2人ともおっきいもん……大変よね〜」

 見つけたものが、話題にしたものが、悪かったのだ。
 アスカのテンション、だだ下がりで……暗い。
 けどオルベールもハーモニクスも、そんなこと気がつかなくて。

「ときどき、アスカが羨ましくなるわ……凹凸が少ないと服のバリエーションとか違うもの」
「マスターほどの、抵抗が少ない控えめなサイズが望ましい」
「凹凸が少なくて……抵抗が少ない、控えめなサイズ……っ!
 ぐはっ!」
「え?
 ちょっと!
 なに落ち込んでるのよ!?」
「うむ、なぜ落ち込む?
 着物が似合う・肩が凝らない・戦闘では助かる。
 たとえマスターの体型が『貧弱』という部類に入るとしても、有利な点があるのだから落ち込む必要性を感じない」
「大丈夫よ!
 アスカみたいな慎ましやか体型でも、好むやつはいるんだから!」
「やめてー!
 慰めてるようで傷口に塩を塗りこんでるからー!
 結構ひどいこと言ってるからー!!」
「つかバカラスになんとかしてもらったらいいじゃない!」
「蒼灯鴉?
 なぜここで彼が出てくる?
 確かに、男性との接触により女性ホルモンが活性化されると聞くが」
「どうせ〜どうせ〜恵まれた体型じゃないわよぉ!
 うう……2人のバカー!」

 アスカは、精神的に大ダメージを受けた。
 このターン、泣きながら逃走。。。

「あの子……そんなに気にしてたのね。
 ま、いっか」
「馬鹿?
 ……理解不能」

 オルベールったら、哀れみの視線を投げかけて、けど、近くの甘味屋へ行ってしまった。
 あきれたハーモニクスも、アスカを追うよりあんみつを選んだのである。

「ふう……平和だ。
 やっぱり葦原に来たならここの店の茶を飲まないとな……」

 ところ変わって、お茶の葉屋の軒先。
 まったりと、蒼灯 鴉(そうひ・からす)はお茶をたしなんでいた。

「しっかし、女って買い物とか好きだよな。
 別行動にしてもらってよかった……ある程度くつろいだら、あとでゲイルに組み手でも頼むか……」

 自分は興味ないからと、独りでの時間を楽しんでいたのだ。
 なのに。。。

「ん……?」
「鴉ーー!!」
「どうしたアスカ?
 女悪魔達といたんじゃ……」

 突然、向こうから駆けてきたアスカにある意味、邪魔をされた。
 訊ねつつ、鴉はお茶を口に運ぶ。

「い……て……っ」
「いて?」
「いますぐ私の胸大きくしてっ!」
「ぶっ!?」

 突拍子もない訴えに、思わずお茶を噴いてしまった。
 誰もとおっていなくて、よかったね。

「いきなりなんてことを言うんだ!?」
「ベルが言ってたもん!
 鴉になんとかしてもらえって〜!」
「あの女悪魔……あとで殺す……」
「あれか、もむのか?
 もんでもらったらいいのかぁ!?」
「頼むから公衆の面前でそんなこと言うんじゃねえ!」
「なによ!
 そもそも鴉が全然私に触ってくれないからじゃない〜!」
「逆にお前がムード読み人知らずだからこっちも手が出しにくいんだろうが!?」
「やっぱり男は巨乳がいいのねぇ……こんっな貧弱よりそりゃ触りがいがあるもんよ〜ええ……」
「いや、俺は胸とかどうでもいいんだが……」
(こいつ、一体俺がどこまで我慢してると……っ。
 なんかいじめたく……)
「え?
 あれ?
 なんで鴉そんなに笑顔なの……?」
「……別にいいぞ。
 その代わり、後悔させてやるから……逃げたら泣かす。
 帰ったら、覚悟しておけ?」
「覚悟って……胸大きくするのに覚悟ってなに!?」

 アスカの物言いに、悪どい笑顔を浮かべる鴉。
 今夜は、長い夜になりそうだ。