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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ!
学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

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     ◆

 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)はアミューズメントブースを物色している最中だったりする。
「ねーねー、次あっち行ってみましょうよ」
「良いけど、あんまり走ると他の人にぶつかるわよ 」
 セレンフィリティは景品らしきぬいぐるみやらお菓子の詰め合わせやらを持ちながら、後ろから着いてきているセレアナを急かし、走り回っていた。
「折角の非番だもの、やっぱ楽しまなきゃね。お祭りなんだしさ」
「だからって昼食も取らずに遊ぶのは違うと思うぞ。私は」
 セレンフィリティ以上の荷物を持っている(恐らくは持たされている)セレアナは大きくため息をつきながらセレンフィリティの後に続く。
「何? お腹減ったの?」
「そりゃあまぁ、減るでしょ。朝から色々回ってるし、もう一時過ぎてるわよ? お腹減るのは普通だと思うんだけどな」
「そっかぁ、じゃあ仕方ない。ウォウルたち、確かお店出してるよね。飲食店」
「そうなの?」
「うん」
「それ、誰情報なのよ」
「風の便り、かな」
「……………………」
 なんともざっくりした返事に返す言葉すら失ったセレアナが肩を落とし、ふとセレンフィリティから目を離すと、そこには偶然、再び客引きをしていたウォウルの姿が。
「噂をすれば何とやら、ってね。セレン、ウォウルいたよ」
「あ、ホントだ」
 セレアナの言葉でウォウルを見つけたセレンフィリティは、踵を返してウォウルの方へと向かった。
「やぁ、お久し振り」
「これはこれは、お久し振りですねぇ。セレアフィリティにセレンナさん」
「いや、名前違うし。あたしはセレンフィリティ。ちょっと惜しかったけど違うから」
「何か器用に間違えたわね。私はセレアナよ。一文字入れ替わってるからね」
「おかしいですねぇ、いやはや、すみません」
「そして相変わらずのニタニタ君なわけ、か」
「ま、それは良いとして。どう? ちょっとは順調かしら? 文化祭」
 セレアナが訊ねると、ウォウルは暫く考えてから答えた。
「まぁまぁ、じゃないですか? 僕は殆ど店番してませんから、何も言えないんですけどねぇ」
「あれ、そうなんだ。何、客引き?」
 首を傾げながら今度はセレンフィリティが訊ねた。
「えぇ、僕はこっちの方が性に合ってますからねぇ」
「確かにね。そうかも。それで? 私たち、これから君のお店に顔を出そうと思ってたんだけど、案内とかしてくれるの?」
「えぇ、良いですよ。此処からならば比較的近いのでご案内致しましょうかねぇ」
 そう言うと、ウォウルは二人を連れて歩き出した。
「お二人はどうです。楽しめてますか? 文化祭」
「まぁね。セレンたら、ご飯も食べずに遊んでたわよ」
「遊ばなきゃ損よ? お祭りだもーん」
「それ好きね」
「うしし、結構気にいってんのよね、この言い訳」
「自分で言い訳なんて認めてたら世話ないわね」
「まぁまぁ。でもセレンフィリティさんの考え、強ち外れてはいないでしたよ」
 ウォウルの言葉に興味を持つ二人。先行する彼は再び言葉を続けた。
「コンパニオンをしているお二人ならばご存じでしょうが、万博が賑わっているお陰で人が少ないようです」
「うん、知ってるわ」
「店もそれを見越して店が少なく、小さいです。だから昼食はやはり混雑しましたよ。予想外でしたが」
「そっか、ピークに行ってたらどこも満員、待ってばっか、ってことね」
「ご名答。このくらいの時間ならば昼食時のピークはどこも終わってるでしょうねぇ」
 「結局は結果オーライ、か」と呟いたセレアナ。と、ウォウルがそこで立ち止まった。何かを見付けたらしく足を止め、一点を見つめている。
「どうしたのさ、いきなり止まって」
「知り合いでもいたのかしら?」
 セレンフィリティは立ち止まったウォウルを。セレアナはウォウルの視点の先をそれぞれ見てみる。と、ウォウルの視点の先を見ていたセレアナが、そこで不思議な少女を見つける。何かを応援している様に見守っている少女、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)、その人。
「知り合いではありませんよ」
 そう言うと、彼は徐にミルディアとの距離を縮めていった。
「誰かの応援ですか?」
「ふぇ!? えっと……」
「あぁ、怪しい者じゃありませんよ。ご心配なさらずに」
「ニヤニヤしながらいきなり話し掛けて言える台詞じゃないと思うんだけどね」
 突然に声を掛けられ、あたふたするミルディアに対してもウォウルは弁明するが、隣のセレアナが彼の言葉に的確にツッコミを入れる。
「それはそうとお嬢さん。君は何を見ているんだい?」
「え? あぁ、今ねあらしのパートナーがあそこでやってるクイズ大会に出てるの。それの応援中だよ」
「クイズ大会? ホントだ、面白そうじゃない。あたしたちも出ようよ、セレアナ」
「無理だと思うわよ、だってあそこに決勝戦って書いてあるし」
「えー、良いじゃない別に。そんな固いこと言わないでさ」
「私が言ってる訳じゃないからね。誤解しないで」
 そうこう言っている内に、スピーカー越しに問題が読み上げられ、自然、ミルディアたちも言葉を止めた。
「それでは、最終問題です! 生物の中にある、遺伝子情報の纏められた二重螺旋はDNA。この正式名称は『デオキシリボ核酸』ですが。では、鮪の眼球等に多く含まれているDHAは、何の略称でしょうか――!」
 大会に参加しているミルディアのパートナー、和泉 真奈(いずみ・まな)は問題を聞くや、困ったような顔のままに悩み込んでいる。
「さ、流石大学のクイズ大会、ちょっと難しいわね」
「そんなに知らないし、気にしないわよ」
「あれ、でもあれってお肌に良いとかって……」
「セレアナさん、それは恐らくコラーゲンですよ。確かに鮪の眼球にもコラーゲンは含まれますがねぇ?」
 外野席の一同も(ウォウルを除く)首を傾げていると、参加者の一人がボタンを押した。
「おぉっと! 最初にボタンを押したのは我らがクイズ同好会、期待のホープ、『ジョンソン・タケナカ』! それでは回答をどうぞ!」
「ふっふっふ、これは自信がありますよ。何せ僕は高校時代、理科の成績は万年“2“でしたからなっ! 故にこの問題は僕が貰っ――」
「前置きは良いので早く答えて下さい!」
「ドコガ・ハデナノ・アタシっ(何処が派手なの!? あたし!)!!!」
「…………………………さぁ、他に分かる回答者はいるのかっ!?」
「あー、あの気持ち悪い人、無視されたねー」
「の、様ですねぇ」
 ミルディアが硬直したままの表情で呟き、それにウォウルが返事を返した。
「おっと、次は一般参加の高校生、『山本 次郎君!』」
「ドコダ・ヘイタクシー・あぁねむい」
「おっとぉ! やや近付いてきて来たぞぉ!」
「ねぇ、今のでっ!? 今のでちょっと近付いたの!?」
 司会者の言葉に驚くセレンフィリティと、すでに苦笑すら浮かべていないセレアナ。
「恐らくは最初の方だけ、という意味でしょうねぇ…」
「頑張れ真奈っ!」
 ミルディアの言葉で意を決したのか、今まで自信がなさそうにオドオドしていた彼女がボタンを押した。
「さぁ三人目! 一般参加の『和泉 真奈』さん、お答えをどうぞ!」
「え…っと、その……ど、ドコサヘキサエン酸………?」
「正解です! 今回のクイズ大会優勝者は、今大会の紅一点、『和泉 真奈』さんでしたーぁ!」
「やったー!! 凄い凄いっ! 真奈が優勝したよ!」
「良かったじゃない!」
「きっと貴女が応援していたから、彼女も頑張れたんだと思うわ」
 ミルディアと一緒になり大喜びするセレンフィリティと、冷静にではあるがセレアナは、壇上でトロフィーを受け取っている真奈に笑顔を向けて言う。
「優勝賞品として、空大文化祭、一日無料楽しみ放題券を贈呈致します。どーぞー」
「うっそっ! 良いなぁあれ! ねぇ、セレアナ、やっぱりあたしたちも出ましょうよ!」
「だから、たった今目の前で終わったじゃない……」
 再びわがままをいい始めるセレンフィリティに悩まされつつ諦める旨を伝えるセレアナ。と、壇上から真奈がやや恥ずかしそうにしながら帰ってきた。
「ミルディ、お待たせして申し訳ありません。まさか最後まで残れるなんて思ってもなくて……」
「全然良いよ! 寧ろ凄いよ! てか無料券はナイス過ぎだよー!」
「いえ、まさか賞品がこんなに良いものだったとは知らずに……と、この方たちは……?」
 不思議そうな顔でウォウル、セレンフィリティ、セレアナの三人を見やる真奈に、ミルディアが『そうだった』と呟き三人を紹介しようと真奈と三人の間に入る。