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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ!
学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

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「おっはよー」
「おはようございます。皆さん、こんな早くからご苦労様です」
 現れたのはティセラとセイニィの両名。ヒラヒラと掌を翻しているセイニィと律儀にお辞儀をするティセラを見て、一同はやや驚いた様子を浮かべている。
「二人とも忙しいんじゃないですかぁ」
「だよねだよねっ! ボクも思った!」
 舞衣奈、結衣奈の二人の言葉に、二人はにっこり笑って答える。
「あたしらは平気だよ。気にしないで。ま、あたしの場合は仕事、昨日で終わっちゃったし。……今日もあるにはあるんだけど、それは午後だからね」
「ですわよね。わたくしも今日の展示品は昨日の段階で準備が出来ていましたし、朝ならお手伝い出来ますの」
「じゃあさ、ちょっと紅茶の美味しい淹れ方、教えてくれないかな」
「あら、祥子さん。えぇ、わかりましたわ、わたくしでよろしければ」
 そう言うと、ティセラは早速祥子の元へと向かっていった。
「それにしても何か徐々に良い匂いしてきたわね、流石飲食ブースって感じ!」
 セイニィは何やら目を輝かせながらにそう言った。
「可愛らしい協力者さん方。お名前、伺っても?」
 セイニィの隣にいたラナロックは、懸命にカレーを作っているネージュたち三人にそう声をかけながら鍋を覗き込む。
「あ、うん……ネージュって言うの。お姉さんは?」
「あたしは舞衣奈なのです」
「ボクは結衣奈!」
「あらあら、元気が良いですわね。私はラナロックと言いますわ。今日はよろしくね」
「「「はぁーい!」」」
 三人は元気よく挨拶をし、ラナロックは笑顔で頷いて袖を捲った。
「ねぇねぇ、ラナロックお姉ちゃんはカレー好き?」
「えぇ、大好きですわよ」
 舞衣奈の質問に答えたラナロック。その答えを聞いたネージュ、舞衣奈、結衣奈の三人は何やら気合いを入れてカレー作りを続ける。
「エイニィさんとリオンさんは僕と会場作りをしましょう」
「セイニィだってばっ! あんたいい加減人の名前覚えなさいよ! 昨日から間違えすぎ! わざとじゃないでしょうね!」
「可能性は……否定出来そうにないですね」
 ウォウルの言葉にご立腹のセイニィと、それを宥める形で苦笑するリオンは会場の設置や、装飾をし始めた。
「ウォウルさん、ちょっと良いかな。相談があるんだけど」
 北都の声に反応したウォウルが彼に向かって行く。
「この豆、一応焙煎はしてきたんだけどちょっと自信なくてさ。さっきの紅茶の感じだとウォウルさん、珈琲も知ってそうだから、ちょっと確認お願いしたいなぁってね」
「趣程度ですけど、お役に立てれば――」
 それぞれが分担し、着実に支度を進めていく。賑やかに、しかし無駄なく。
自然、彼ら、彼女らの表情に笑顔が灯った。

 「でっきたーっ!」

 それから三十分弱。ネージュが何とも嬉しそうな声をあげる。
「最後、皆で味見してみましょ」
「やったっ! 動いたからお腹空いちゃったし、喉もカラカラなのよね」
 祥子の提案にセイニィが一目散とばかりにやって来て、彼女から差し出された紅茶のカップを受けとり口に運んだ。
「わぁー、美味しー! 紅茶ってこんな美味しいものだったんだ」
「うん、流石だねぇ。この味。僕も紅茶の淹れ方、勉強しようかな」
「なら、私も頑張ってみますよ」
 北都とリオンもティセラ、祥子からカップを受けとり、一口飲んでから言う。
「こっちの紅茶はすっごい甘いですよぅ! 何ででしょうかね?」
「ほんとだ、美味しい!」
「ねぇ、ボクにもちょうだーい」
 舞衣奈、ネージュが目をキラキラさせ、結衣奈は懸命にカップを受け取ろうと背伸びをしている。
「それは『ジョルジ』って銘柄のお茶なの。甘味があるから飲みやすいはずよ。って、あら、ほんとに美味しい」
 三人に茶葉の説明をしていた祥子本人も、一口飲んで思わず驚いた。
「淹れ方一つで此処まで違うのね」
「えぇ、愛情込めて淹れてあげれば、お紅茶は素敵な持て成しをしてくれますのよ」
 笑顔で祥子に言うティセラも、一口飲んで小さく頷いた。どうやら合格点だったらしい。と、一同の視線がウォウルとラナロックへと向いた。
「まぁ、美味しいですわね」
 ラナロックは本当に驚いた顔をして紅茶を啜っている。
「…………祥子さん」
 ふと、ウォウルがいつにもなく真剣な面持ちでそう切り出した。
「は、はい…………(何言うのかしら、この人)」
「………後でこれを何処から入手したのか、店を教えて貰いたいんですがね」
「へ?」
 思わぬ、と言った発言に、一同がぽかんと口を開けたままでいる。勿論、それは祥子も含まれる訳で。
「やはり良い! この風味、苦味にあとから来るほのかな甘味! 素晴らしい! にしても、貴女は紅茶を淹れる才能がおありですね」
 なんとも真剣な顔つきで、ウォウルはそんな事を言っているのを、彼らはどう返していいか迷うより他になかった。
「じゃ、じゃあさ。次はあたしたちのカレー食べてよ!」
 慌ててネージュが切り出すと、一同は当然ながらに賛同する。
「皆さん、召し上がれぇ! ちゃんと辛さの種類があるから言ってくださいね」
 待ってましたっ、とばかりに舞衣奈が鍋の前にたつと、人数分のご飯をネージュがよそい、素早く結衣奈がスプーンとナプキンを全員に手渡した。
「凄い連携ね」
 思わず感心する祥子。
「うん、カレーも美味しいね」
「北都、私たちのお昼御飯、彼女たちのカレーを頂きましょう! これは幾ら私と言えど譲れないですよ」
「あれ…リオン。いつからカレー好きになったの?」
「これは特別です!」
 彼はキラキラした目できっぱりとそう言い放った。
「ちょうど良い辛さだね、美味しい」
「ですわね。でもセイニィ? 頬にご飯粒をつけるのははしたないですわよ」
「!!!!!!!!!!!!」
 本当にお腹が空いていたのだろう。彼女の頬にはティセラが言うようにご飯粒が着いていた。セイニィは顔を赤らめながら懸命にそれを取っている。
「美味しいですね。これならば今日の文化祭は期待できそうです。ほら、ラナ、いただくと良いですよ」
「えぇ、そうさせて貰いますわ」
 ウォウルから手渡されたカレーを受け取ったラナロック、「いただきます」と三人の方へと向き、小さく一口分程度よそって、口に頬張った。と
「…………あれ? ラナロックさん、様子おかしくない?」
「ですね。顔が真っ赤です」
 ふと異変に気付いた北都と、それを冷静に見ていたリオン。一同もふとラナロックを見ると、彼女の顔が尋常じゃない程に赤くなっているのがわかった。
「うん? ウォウルさん。彼女辛いのは平気なの?」
 ウォウルが持っている皿へと徐に顔を近付けた祥子が尋ねる。
「ウォウルさんが食べてるのは超四つが付くほどの激辛ですぅ。平然と食べてるからあたしもちょっとビックリだけど」
「あぁ、これは辛口でしたか。ラナは辛いのが全くといって良いほどに駄目なんですよ。お寿司のワサビで倒れますからねぇ、あっはっは」
 何とも愉快そうに笑うウォウルの隣、例の彼女は音を立てて崩れ落ちた。顔面を真っ赤にして倒れるラナへと駆け寄るネージュがウォウルに言う。
「ええええっ! ちょ、笑い事じゃないよぉ!」
「お水お水っ!」
 慌てふためくネージュと、急いで水を持ってきた結衣奈。隣では心配そうに舞衣奈がラナの顔を覗き込みながら呟いた。
「ありゃ……ネーおねえちゃんの前にラナ姉さんをオーバーキルしちゃったみたいなのです……あはは…」
 舞衣奈のその、ある意味物騒な発言を聞いていた者は恐らくいない。