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太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編

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太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編
太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編 太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編

リアクション

「真にいちゃん、ヒパティアちゃんに見せてくるね!」
「ああ、いってらっしゃい」
 ヘッドセットを受け取って目を閉じれば、もう蒼はわふわふとデータを担いで、ぽてぽてと電脳空間に駆け下りている。星空を内包する図書館へ飛び込んで、その中にいるヒパティアを呼ばわった。
「ヒパティアちゃん、いるーっ?」
「いらっしゃいませ、どうされました?」
「みてみて、列車の中でながすやつなんだけど!」
 ヒパティアに掲げたのは、真といっしょにがんばってつくった、列車の中で流す予定のムービーである。
 ぱちんと展開して流れ出す映像は、上空写真や車窓から見えるだろう風景を編集して、ちょっとした地歴資料にもなり得るだろう。
 レールの3D映像を加工して、映像のタイムラインを操作してタイミングを合わせてある 。本番では列車の現在地でムービーの内容を入れ替える予定なのだ。
「列車からはこう見える予定なのですね」
「ほんとはタイムウォーカーにのって撮ったんだけどね。他にもこんなのがあるんだよー」
 魔列車にまつわる出来事のムービーも列車内のモニターに流すのだ。
「これ、ここの名産なんだって。たべてみたいなあ…」
 蒼は画面にポップアップされてめまぐるしく切り替わる地元の名産品に目を輝かせ、おいしそうな食べ物が出てくるとテンションをあげた。
「もし食べられたのなら、どのようなものかお教えくださいね」
「うん、わかったあ!」
 ヒパティアは、実際に『食べる』という感覚を得ることはできない、他者の記憶や経験を電脳で追体験して、はじめてそれだとわかるのだ。友達がこうしてやってきてくれることは、なによりのお土産になるのだった。
「まだまだふえる予定だから、楽しみにしててねえ」
 笑顔を残して、蒼は上に戻っていった。





 レールと魔列車が完成した数日後、ようやく駅舎や噴水、待合室にライブズテージも完成した。
 建築担当した者たちはさすがにへとへとになってしまい、ぐったりとしている。
 咲は完了具合をチェックし、優斗の方は環菜に全ての工程を終えたとネット電話で伝えた。
 知らせを聞いた彼女は夫に小型飛空挺エンシェントを操縦してもらい、ヴァイシャリー湖南へ向った。
 エリザベートやラズィーヤに静香、この計画に参加した者たちが、ライブステージの前で御神楽夫婦の到着を待っている。
「皆、待っていてくれたのね。ありがとう」
 飛空挺から降りた環菜が素直に、協力してくれた彼らに礼を言う。
「熱発電機に燃料を入れてきましたよ」
「では、改札の電源を入れるぞ」
 エリセルが改札の前にやってきたのを見た理王が、セキュリティの電源を入れる。
「地下の扉のロックも正常ですね」
 扉が閉まる様子を白竜がチェックする。
「さぁ、環菜さん。一言どうぞ☆」
 シャンバラ・レールウェイズの開通式をしようと詩穂がマイクを手渡す。
「大変な作業ばかりだったと思うけど。何度お礼を言っても足りないくらいね…」
 環菜が喋り始めると話し声が止み、草花で造られたアーチがそよ風に、僅かに揺れて擦れ合う音と、彼女の声しか聞こえなくなった。
「だけどこれが終わりじゃないわ。パラミタ横断への道は始まったばかりなのよ。それで…これからも…その……」
「急に声が小さくなっちゃったわよ?もっと大きな声で言って!」
「そうですよ、環菜さん」
 美羽に続けてベアトリーチェも、一言大きな声で言ってくれればいいと、笑顔を向ける。
 皆は環菜をじっと見つめ、言葉をかけてくれるのを待つ…。
「―…これから、私に協力してもらいたいの!…お願い……します!!」
 彼女はふぅ…と深呼吸をすると、大きな声で皆にお願いをし、深々と頭を下げた。
「もちろん協力するわっ」
「はい!いろんなところへ旅をしてみるのも楽しそうですし」
「パラミタ横断かー…どれくらいの距離になるんだろうか?」
「距離か…。まぁ、1年とかで終わりそうにない気がするけど。次はどんな感じの駅になるのか楽しみだな」
 優斗と隼人はレールの距離や、どんだけ時間がかかるのか想像してみたり、駅の雰囲気について考える。
「皆、並んで!」
「カメラ?」
「記念撮影するみたいな!」
「今日この日は、環菜が鉄道王を歩み出す一歩でもあるけど。皆も一緒に、パラミタを横断するのよね」
 月夜は完成を祝うべく、魔列車の前で計画に協力した者たちをカメラに写した。





 出発が30分後ほど…ということで、じっくり駅舎の中を見に行く者もいれば、待合室に入ってみたりする者もいる。
「これってコテージ?」
「ちょっと違うみたいですよ、北都。ドアがありませんし」
 ただ出やすいように出入り口をなくしたのだろうか、とクナイが首を傾げる。
「壁のスイッチを押すと、両サイドからガラスの壁が出るんです☆」
 詩穂がそれを指差し説明してやる。
「扉もちゃんとあるんですよ」
「雨の日も安心だね。寝泊り出来るように、ソファーもあるし」
「折りたたみ式のテーブルも用意してあります♪」
「ここでランチを食べるのもよさそうですね」
 噴水を眺めながらゆっくり過ごすのもよさそうですね、と待合室から外の景色を眺める。
 隣の待合室では出発時間までのんびりしていようと、歩夢たちはソファーに座りくつろいでいる。
「皆や私と…アゾートちゃんとの共同作業で沢山の人と、その幸せを乗せて運べる…そう思うと何だか素敵だね」
「いろんな土地に、遊びにいきたいっていう人がたくさんいそうだね」
「私達も、いつか新婚旅…あっ!?ううん、その…りょ、旅行できたらいいね!」
 未来の願望を口に出してしまい、ソファーにしがみつくように、真っ赤な顔を隠す。
「旅行…?面白いことがいっぱい見つかるなら、それもいいかな」
「そ、その時は私もお供しますっ」
 その言葉を耳にしたエリセルが、すかさず2人の間に割り込む。
「うん、大勢でいったほうが楽しいかも」
「アゾートさんに…け……け…結婚だなんてまだ早すぎますしっ。ただ…友達と旅をするという感覚がいいと思います。一緒にいたいと思っている人は、たくさんいるでしょうから…。あれっ、私ったら何を…」
「(はぁ…いいかげん自分の気持ちに気づかないものかしら?)」
 歩夢をライバルのように見てツンとした態度を取ったり、結婚の言葉に反応して阻止しようとしている時点でそれはもう…と、トカレヴァが心の中で呟く。
「だから…その、私は…っ」
「はっきり言ってくれないとわからないよ?」
 エリセルが何を言いたいのか、さっぱりわからないといった様子で、ずいっと彼女に顔を近づける。
「ひゃっ、ああぁあああ!!?
 驚いた彼女はパッとアゾートから離れ、改札の方へ駆けて行った。
「(何で逃げるの!?)」
 せっかくちゃんと言うイイ機会なのに!とトカレヴァはパートナーを追いかける。
 アゾートの方は、まだ自分の言葉に恥ずかしがっている歩夢と残され、どうしてエリセルが走り去ってしまったのか理由が分からず、唖然としている。
「わ、私…アゾートさんのことを、友達だと思ってしましたのに…。どうしてこんな…す……す…あぁあ言えませんっ」
 エリセルは自分の気持ちに気づき始め、酷く動揺しているようだ。