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ブラッドレイ海賊団1~パラミタ内海を荒らす者たち~

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ブラッドレイ海賊団1~パラミタ内海を荒らす者たち~

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●第4章 VSブラッドレイ海賊団第3部隊

 接舷し、デッキが騒がしくなる少し前。
 ブラッドレイ海賊団の船へとゲドーが降り立った。
「何者だ?」
 先ほど、遊覧船に向かって名乗り上げた、この部隊の隊長、アーダルベルト・グアハルドが怪訝そうな顔をして、ゲドーへと訊ねかける。
「ゲドー・ジャドウ、俺様の名前くらいはきいたことあるだろう?」
 名乗り、訊ね返すゲドーにアーダルベルトは「聞いたことがある気がするな」と答えた。
「して、そのゲドーが何をしに来た?」
「俺様をブラッドレイ海賊団に入れないか?」
 改めて訊ねるアーダルベルトに、ゲドーは己を売り込み始める。
「ふむ、そういうことか。我が第3部隊は来る者拒まず、だ。入隊したいのであれば、歓迎しよう」
 けれど、交渉するでもなくアーダルベルトは彼の入隊を許可した。
「ありがとよ。ところで、そんなケチな遊覧船なんて狙わずとも、あっちの海賊を狙った方がいいぜぇ? あの船の大将は黒髭、おまけに体は百合園の泉美緒だ。うまくいけば黒髭を倒した名声と美緒を利用して身代金。金と名声を同時手に入れられるって寸法だ! まかり間違っても船ごと沈めるなよ? 金も名声も海の藻屑だ」
 近付いてくるもう1艘の船を指し、そう提案すると、アーダルベルトも指された方向へと視線を向ける。
「黒髭、か。かかっ、おもしろくなりそうだな」
 船の存在を認め、アーダルベルトは笑った。
「そんじゃ、まあ、俺様、今回は売り込みが目的だから」
 ゲドーはそう告げると、再び、堕天馬へと乗る。そして、アーダルベルトを初め、辺りに居た海賊たちに空飛ぶ魔法↑↑で飛行の効果を付与すると、船から立ち去った。

***

 黒髭海賊団の船から、ブラッドレイ海賊団の船へと船員たちが向かう。
「人に迷惑かける海賊は俺が退治するぜ!!」
 切込隊長の如く、勢い良く乗り込んだのは神条 和麻(しんじょう・かずま)だ。
「マスター、気をつけてくださいですぅ」
 魔鎧として、真紅のマフラーに姿を変えたエリス・スカーレット(えりす・すかーれっと)が和麻へと注意を促した。
「分かってるさ」
 和麻は頷いて、三尖両刃刀を構え直す。彼の周りには既に、海賊たちが集まりつつあった。
「そう簡単に退治されると思うなよ!」
「何か言ったか?」
 大声を上げる海賊たちを和麻は鬼のような目で睨んで見回す。
「っ!」
 彼の形相に海賊たちは怯む。その隙に、隠れ身を使用した和麻は海賊たちの視界から外れる。
 そして、死角から踏み込んで、三尖両刃刀を振るった。
「ぐぁっ」
 反応の遅れた海賊は、咄嗟のことで受け流すことも防ぐことも出来ず、大きな一撃を受ける。
 再び、視界から和麻の姿が消える。
「くっ……何処に……」
 斬られたところを押さえながら、反対の手で長剣を構え、辺りをきょろきょろと見回す海賊の死角から、強力な一撃が振り下ろされた。
「うが、はっ……」
 全く予想していなかった角度からの攻撃をまともに受けた海賊は、吐血し、前へと傾いでいく。
「よしっ、次だ!」
「マスター、左方から来ますぅ!」
 三尖両刃刀を軽く振るって血を飛ばす和麻に、エリスが声を上げた。
 視線を左へと向けると、海賊が銃を手に彼に向かって構えている。
 その瞬間、引鉄が引かれて、銃弾が飛び出した。
「痛っ」
 咄嗟に避ける和麻だが、弾は彼の肩口を掠めていく。
「次はおまえだな!」
 顔をしかめつつも銃を構えた海賊に、三尖両刃刀の切っ先を向けて、和麻はそう告げた。

(まさかヴァイシャリーも、公式に私掠船事業を遣り始めるとは思いもしなかったわ。鋼鉄の白狼騎士団もヴュルテンベルクから私掠免許を拝領して、無法な空賊や敵対勢力の商船を討伐しているから解るけど、これって意外と儲かるのよね……)
 ハヤブサの名を持つ小型飛空艇ヘリファルテなどに乗り込み、セフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)は、パートナーのオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)と共に、黒髭の船からブラッドレイの船へと乗り込んだ。
「鋼鉄の白狼騎士団前へ!」
 綾刀を手に、声を上げると、周りを取り囲もうとする海賊たちに向かう。
「この私を討ち取りたいなら、命懸けで来いっ! このインフェルミーナの姫騎士エリザベータ・ブリュメールが相手をする!」
 告げながら、エリザベータも後に続いた。
「恐れるなっ! 海賊共を切り崩せっ!」
 声を上げながら、エリザベータは手にしたブロードソードを振るい、通りを固めようとする海賊に向かって、爆炎を放つ。
「あちぃっ!」
 炎は激しく燃え上がり、海賊に痛みを与えた。
 向かってくる海賊の中に、女性を見つけたオルフィナは、その女性へと近付く。
 手にした短剣を振るい、オルフィナへと斬りかかってくるけれど、彼女は不意を打たれた一撃以外を見切り、受け流すことで受ける痛みを軽減させる。
 そしてステップを踏み、女海賊の背後へと周りこむと、両腕を前に回して、彼女の胸へと触れる。
「良い物持ってるなお前」
「きゃあ!」
 女海賊は小さく短い悲鳴を上げ、胸に触れるオルフィナの手を短剣を握ったままの拳で、離させようと殴りかかる。
「っく」
 けれど、手に拳が当たる直前で、オルフィナが避けたため、止まらぬ拳は女性自身の胸を打つ形になった。
「てめぇじゃ俺には勝てねぇよ!」
 からりと笑って、オルフィナはバスタードソードを構えて対峙する。
「ねえ、その首。落とされたくなかったら正直に言いなさい、宝物庫は何処……?」
 綾刀から放たれた聖なる光で傷つけた2人の海賊のうち、1人に向かって、その切っ先を突きつけてセフィーは訊ねる。
「っ! お、奥……一番下の、船倉だ……」
 斬られてはならないと海賊は、搾り出すような声で答えた。
「ありがと、ねっ!」
 斬り捨てはしないものの、その海賊を叩き落して、セフィーは奥を目指す。
 その道を開けるべく、エリザベータとオルフィナが辺りの海賊たちへと斬りかかった。