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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!
【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード! 【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

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 その頃。
 文字通り、燃え尽きたモモの琴音ロボが手の空いた警備員達によって牽引されていく様子を上空から見ていたのは、再開したパレードに参加していた雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)小暮 秀幸(こぐれ・ひでゆき)であった。因みに、雅羅は、妖精のような羽付きの衣装。秀幸は「親分! アイアイサー!」とか言い出しそうな海賊の衣装を着ている。
「流石はななな少尉殿、大活躍だな」
「それって皮肉なの?」
「秀幸ー! 雅羅ー! パレードが再開するそうよ。さっき話した通りお願いね?」
 短い会話を交わす両者に、彼女たちが乗る大型飛空艇の操縦をしていた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が声をかける。祥子は海賊船の船長のような衣装であり、つばの広い帽子を被っている。
 祥子の山車は、この大型飛空艇であり、花火打ち上げを従者のニャンルー、お菓子・カボチャのばらまきをシールソルジャーとキノコマンが担当していた。先ほどの火災の余波を見事に受けた雅羅が搭乗していた山車は、周囲も首を傾げる程炎上して使い物にならなくなったのである。
「やってやるわよ!!」
 大型飛空艇に設置されたデッキガンで花火をバンバン撃つ雅羅。
「雅羅? 何か気合入ってるわね……」
 祥子がヤケクソ気味な雅羅の態度に、「何かあったの?」とお菓子をばらまき始めた秀幸に聞く。
「悲しい友との別れがあったようです。戦場ではよくある事だと思いますけど」
「ふーん」
「しかし、祥子殿。こんな上空からお菓子を投げては、受け取れず、粉々になる確率が約80パーセント程度ありますが……」
「マシュマロは割れないわよ。どのみち、私は操縦で手一杯だったから助かったわ。従者のあの子達だけだったら不安だったもの」
 祥子が秀幸と話す背後では、足元に転がる花火の玉を詰めていく雅羅が花火を次々と打ち上げていた。
「雅羅? 一応、念のために本物の弾も置いてあるから、間違えないように気をつけなさいよ?」
「わかってるわよ! そんなの、普通間違えるわけないでしょ!!」
「……うん。普通はね」

 雅羅が乗り込んでいた山車は、四谷 大助(しや・だいすけ)製作の、可愛い魔女衣装の琴音ロボに引かせる山車『お化け大樹の山車』であった。
ハロウィンパレードに向けて、その他の参加者と同じく、雅羅も大助達と連日夜遅くまで制作し、完成させた山車である。
 天性の不幸属性を持つ雅羅の影響を大助のパートナーである白麻 戌子(しろま・いぬこ)ルシオン・エトランシュ(るしおん・えとらんしゅ)が心配したり、時に二人をからかってみたりする中、何とかさしたるトラブルもなく山車は完成した。
 完成した『お化け大樹の山車』は、不気味に笑うハリボテの巨大な樹であり、その大樹から生えた枝にはお化けカボチャを釣り下げる等の飾り付けがされている、大助の完成予想図では、枝の手の上で魔女の花妖精とディーバードが踊り歌うシンプル且つ華やかな山車となる計画であった。
「……でもさ」
 イコンの格納庫で完成した山車を前に、大助たちとお菓子とジュースでプチな打ち上げ(プチ上げ)をしていた時、雅羅がふと呟く。
「パレードの道はライトアップされるんでしょうけど、ちょっとシンプル過ぎるんじゃない?」
 黒のボサボサの髪をした大助が雅羅を見て、
「大丈夫だよ」
「そう?」
「雅羅さん、知らないんスか? この山車には……モゴォ!?」
 ルシオンが何か言おうとした口に、素早く戌子が近くにあったポテトチップスを袋ごと突っ込む。
「ルシオン。山車の製作お疲れ様……ポテトチップス、一杯食べていいからね?」
「ムゥゴォォオオオ……」
 戌子とルシオンが争うのを、雅羅が不思議そうな顔で見つめている。
「大助? ……今、何か……」
「え? あぁ……ルシオンてポテトチップス大好きなんだよ」
 大助も誤魔化すように、アイスコーヒーを一気に飲み干しつつ、こっそりルシオンの腰あたりを掴んで力を込める。
「ィィイイタタッ!? 大さん!! 何をするんスか!?」
「あはは……お肉を掴んでみただけさ? ルシオン、ポテチばかり食べていると、ヤバイぞー!?」
「何してるの?」
「あ、あはは。なんでもないよ雅羅……(ルシオン、後で覚えてやがれ)」
「にひひっ。さすがの大さんも意中の人の前だと、大っぴらに怒れないッスね?」
 ルシオンが小声でそう呟くと、大助の顔色が変わる。
「本気で怒っていいのかい?」
「……冗談ス。はい、ごめんなさい……」
「オレも冗談だよ! あはは、ルシオンは面白いなぁ」
 笑う大助だが、その目が笑っていない事を戌子は見抜いていた。
「仲がいいわね。あなた達って」
「何言ってるんだよ。もう雅羅もオレ達と友達だろう?」
「……大助、昔、言ったでしょ? 私、『友達』や『親友』という言葉をあまり気安く使わないことにしているの」
「あ……ご、ごめん!」
 雅羅はやや寂しく微笑み、「そろそろ帰るわ」と腰をあげる。
「あぁ、じゃあ送って行くよ! 夜道は危ないし……」
 大助が立ち上がろうとすると、彼の申し出に雅羅は首を横に振る。
「一人で平気よ。大助」
「でも……」
「一人が好きなの……それにパレード前に大助を怪我させるわけにはいかないわ」
 そう言って、雅羅は帰っていく。
「大さん……」
 一応の空気は読めるルシオンが、去っていく雅羅を見送っていた大助に声をかける。
「当日は、協力するッスから! 落ち込んじゃ駄目ッス!」
「そうだね……ボクが山車の製作中、折角二人きりで作業させてあげたんだから。ここで諦めちゃ駄目だね」
 先輩として大助の事を応援していた戌子も、彼の背を軽く叩く。
「ありがとう……だけど、大丈夫! オレ達の山車は、夜こそが本番なんだから!!」
 大助が二人に振り返って笑う。
「よし、雅羅が帰ったことだし、オレ達も本番用のリハーサルの練習しよう!」
「おー!! 大さん、ヤル気ッスね!!」
「ま、ボクとルシオンがいれば大成功は確約されたもんだね」
 三人は、イコンハンガーの明かりを消し、何やら動き出すのであった。


 そして、当日。
 琴音ロボ繋がりであるためか、モモとギルティの後方を、大助の山車は行進していた。
『お化け大樹の山車』を引く琴音ロボに乗ったルシオンが後方の山車をモニターで見て呟く。
「大さん、上手くやれるっスかねー? ワンコさん?」
 ルシオンの仮装は、単純に超感覚を発動して大きな角が生え下半身が牛となったミノタウロスに変身した姿である。衣装もそれっぽく水着を着ている。その姿は、故郷の村で夏場に農業をしてた時の格好である。田んぼをノシノシと歩いていた頃が少し懐かしい。
「さぁ? でも、大助は決めるとこは決める子だからね」
 狼の耳と尻尾、爪付き手袋で狼女の仮装をした戌子がそう返す。
 二人は始めオートパイロットモードにして、山車の上にいたのだが、
「いやー、都会に来てこの姿になるのは初めて……ブヘックショオイ!! ……ワンコさん。何か着るもの無いッスか?」
 鼻水たらしかけのルシオンを見た戌子が、
「ない……ボクたちは離れて見守るに限るのさ……さぁ、ここは大助たちに任せて、ボクたちは琴音ロボの操縦ををしようではないかー! 操縦席はまだ温かいよ?」
と、琴音ロボの操縦席へ彼女を連れて戻ったのである。
「それに、ボクとルシオンには大仕事があるから」
「何かあったスか?」
「大樹の発光や妖精の粉の噴出などの演出をするって言っただろう?」
「おお! まさに大仕事すね」
 バタバタとルシオンが4つの足を動かす。
「ルシオン、キミ獣臭い。ちょっと離れてくれたまえー……」
 戌子は、琴音ロボの肩に乗った大助と雅羅の様子をモニターで眺める。
「仕掛ける頃合いは、そろそろかな?」

「……綺麗ね」
「はい……」
 ピーターパンの仮装をした大助と妖精の仮装をした雅羅が、琴音ロボの肩に並んで座っているそこは自分たちの山車や前を行くパレードまで全てを見渡せる特等席である。
 二人の前には山車の大樹から生えた枝の手の上で、魔女の花妖精とディーバードが踊り歌っている。
 時折、観衆に手を振る二人の間には、何か奇妙な空気が流れていた。
「大助。私と友達になろうなんて駄目だからね」
 ルシオンと戌子が去った時、何かを感じたのか、そう雅羅が切り出した一言がその始まりだった。
「オレは……!」
 すかさず反論しようとした大助だが、今はパレードの最中。痴話喧嘩等をして良い時ではない。観客達は楽しいハロウィンパレードを観に来ているのだ。
 行進していた大助の山車『お化け大樹の山車』が止まる。
「あら? 止まったわ?」
「……違うよ、雅羅。動き出すんだ……」
「え?」
 その時、山車の大樹に仕掛けた無数のイルミネーションが一斉に点灯する。まるで真っ白に光る花で大樹が満開になると同時に、妖精の粉と祝福の花びらが大樹から噴出、ライトアップした光に照らされキラキラと輝きながら振りまかれていく。
「綺麗……」
 舞い上がり、手に落ちてきた花びらを見て、雅羅が目を輝かせる。
 怪しさ満点だった山車は、うって変わった幻想的な光景を彩り出す。
「こんな仕掛けがあったなんて……」
 大助が照れ臭そうに笑い、
「これを雅羅に見せたかったんだ……ネバーランドへようこそ、なんてね」
「大助……どうして、私にそこまで優しくするの?」
 雅羅の金髪が風に揺れる。
 大助は彼女の青い瞳を見て、意を決して言葉を紡いだ。
「オレ……! 雅羅のことをもっと知りたい。雅羅の親友になりたいんだ!!」
「……親友……大助、前にも言ったでしょ? 私は駄目なのよ。人を不幸にしてしまうの。近しい人なら尚更……」
「オレは不幸でも構わない!!」
「!?」
 普段は少し頼りない大助の急変に雅羅が驚いた顔をする。
「一緒に笑いあうだけが親友じゃないだろう? 泣いたり、喧嘩したり……それだって親友のはずだよ!! だから……」
 光の中で見つめ合う二人……。

―――ドォオオオオーーンッ!!!

「な、何だ!?」
 爆発音に、大助が前を見ると、先を行ってたモモの琴音ロボが炎上している。
 そして、その火の粉が大樹から出ていた祝福の花びらに燃え移り……。
 ボウッと大樹に延焼していく。
「大さん! 火事ッス!! 後退するッス!!」
 ルシオンの叫ぶ声が聞こえ、琴音ロボが方向転換しようとして、グラリと揺れる。
「あっ」
 短い叫び声と共に、バランスを崩した雅羅が足を踏み外す。
「雅羅!!」
「大助!!」
 大助が手を伸ばすも、その手は彼女の指をかすめただけである。
「雅羅アァァァァーーーッ!!」


「……イコンから落ちてよく生きてたわね?」
 話を聞いていた祥子が言うと、雅羅が頷く。
「ジャック・オー・ランタンに助けて貰ったの」
「ああ。アレね。そういえば一言も喋らなかったけど、誰なのかしら?」
「さぁ、でもとても無口な人で有ることに間違いないわね」
 落下する雅羅をセントリフューガに乗って助けたのは、ジャック・オー・ランタンに扮した小次郎であった。
 ドスンッと落下した雅羅を、地面すれすれで受け止めた小次郎は、礼を言おうとする彼女に、フルフルと首を振り、「これは一人乗りです」とジェスチャーで伝える。
 小次郎が喋らなくても、その事は速度の出ない円盤に乗った雅羅にもわかった。
「私の体重が重いってわけじゃなさそうね」
「(……コ、コクンッ……)」
「今、躊躇ったわね?」
「(フルフル!!)」
「出来たら大助達のところに戻りたいんだけど……」
 首を横に振る小次郎。
「危ないから駄目ですって? まぁ、それも一理あるわね」
「(コクンッ)」
 小次郎がふと上を見上げる。
 そこには祥子の大型飛空艇が浮かんでいる。偶然甲板に顔を出した祥子がそれを見つけ、彼女を救助した。尚、雅羅を祥子に渡した小次郎は、相変わらず一言も喋らずにまた何処かへ飛んでいった。
 その後、大助達が辛くも全員無事だったのと、山車の延焼も大した事はなかったらしい。と、聞いた雅羅は、祥子に誘われるがまま、彼女のパレードの手伝いをしていた。

「結局、私には不幸以外友達いないんだわ」と呟きつつ、花火を撃ちまくる雅羅。
「雅羅殿! あまりそのように乱れ撃たなくても……」
 秀幸が雅羅をなだめる様子を、舵を切る祥子が見て「ヤバい展開ね……」と呟く。
「不幸な私だって、花火くらいあげられるわよ!!」
 雅羅が手元にあった弾を大砲に詰める。
「!?」
 秀幸が見ると、それは祥子によって分類分けされた『実弾』であった。
「雅羅殿!! それは花火じゃなく実……!?」
「え?」
 ドーーンッという音を残し発射される実弾。
「せめて人に当たらないように祈りましょうか……」
 祥子はそう呟き、何処で雅羅を下ろすかを思案し始めるのであった。