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女王陛下のお掃除大作戦!

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女王陛下のお掃除大作戦!
女王陛下のお掃除大作戦! 女王陛下のお掃除大作戦!

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第四章



「――こんな感じかなぁ。それじゃあリオン、ステージを頼むね」
清泉 北都(いずみ・ほくと)は一通りの説明を終えて、リオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)にモップを渡しました。
「わかりました。隅までしっかり、ですね」
「うん、よろしく」
頷いたリオンは気合い十分で取りかかります。教わった通りに上から埃を払い、ゴミを丁寧に掃き集めて、それからモップ掛けしていきます。
それを見ながら北都はステージを下りました。
傍の装飾品や備品を手入れしている神威 雅人(かむい・まさと)と一緒に、式典に使う花台や演説台を拭きあげていきます。
「さすがに宮殿のコンベンション会場ともなると備品も多いですね」
「ええ、凝ったものが多いから掃除も大変そうです」
その横で椅子や机の拭き上げをしていたセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、何かをちらちらと見ています。
「セレアナさん? どうしたんですか?」
「あ……ちょっと広場の方が気になって」
そう言われてステージの下の広間を見遣ると、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が床を掃除していました。
「それが何か……」
「どうというわけでもないんだけど……セレンがもの壊したりしないかなぁと」
「ああ、宮殿は高価なものが多いですからね」
「うちも心配ではありますが……備品は全て此方に入っていますのでよほどじゃない限り大丈夫でしょう」
もし壊したりしたら謝って済むことではないでしょう。ついでに言えば弁償額は相当なものになるかもしれません。
思い切りが良すぎるところのあるセレンフィリティのことですから、セレアナは気になってしまいました。
案の定セレンフィリティは豪快にモップ掛けをしています。
途中気付いてセレアナへと手を振ってくるのに振り返して、セレアナはそっと溜息をつきました。
そんなセレアナの不安をよそにモップ掛けを進めるセレンフィリティの後からは、アルカネット・ソラリス(あるかねっと・そらりす)がワックスをかけていきます。
塗り残しがないように丁寧に塗ったその後は、顔が映りそうなほどきれいに磨き上げられた床が現れるでしょう。
「やっぱり広いわね〜……こういう所で歌ったら気持ちよさそうだわ」
アルカネットは掃除をしながらそんなことを独りごちます。
会議などにも使う場所ですから音響はそれほどでもないかもしれませんが、あの広いステージで歌ったらきっと気分がいいのでしょう。
「終わったら歌わせてもらおうっと」
アルカネットはそう心に決めると、張り切って手を動かすのでした。
「――掃除のし甲斐がありそうだね〜」
「そうですわね……でも広間の中心部は他の皆さんが掃除してくれていますから、隅の方を重点的にお掃除しましょうか」
「そうだね。久々にメイド服で気合い入れたし、ぴっかぴかにするわよ!」
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)和泉 真奈(いずみ・まな)はさっそく床の隅から掃除を始めました。
モップでは拭ききれない隅の汚れを雑巾で拭きとり、隙間の埃もカードできっちり取ります。
わずかな凹凸にたまった汚れものがさず拭きとります。
元メイドであるミルディアたちは流石の手際で次々と綺麗にしていくのでした。

コンベンション会場の入り口の辺りを掃除していた上社 唯識(かみやしろ・ゆしき)は、ふと手を止めて掃除道具を置きました。
戒 緋布斗(かい・ひふと)が気付いて顔を上げると、唯識が何処かに歩いていくところでした。
何事かと思って見ていると、その先にいた女性に話しかけます。
「水の交換? 重いだろ、俺行くよ」
「えっ」
唯識が声をかけたのは、バケツを手にしたアイシャでした。
「階段もあるし、危ないからさ。貸しなよ」
「大丈夫ですよ、これくらい」
メイド服のアイシャは笑顔で遠慮しようとします、が。唯識もにっこりと笑って手を差し出しました。
「気にしなくていいって。他の場所の掃除もあるんだろ? これくらい手伝わせてよ」
「それじゃあ……」
お言葉に甘えて、とバケツを差し出すアイシャからそれを受け取って、唯識は手早く水を交換して戻ってきました。
「お待たせ、階段の上まででいいかな?」
「はい、充分です」
頷いて礼を言った少女に手を振って、唯識はコンベンション会場に戻ってきました。
「唯識、今の方は」
「ああ、ちょっと手伝ってきた。別にナンパしてないから安心しろよ」
「していたら大問題ですよ」
「そうか? 可愛い子だったけど」
どうやら唯識はアイシャだと気付かずに話していたようでした。
緋布斗は少し考えましたが、別に無礼を働いているわけでもなかったようなので、苦笑して掃除に戻ることにしました。
先ほどの少女が女王だと唯識が気付くのは、もう少し後のこと。

「もうすぐ終わりそうだね」
「ええ、やっぱり人数がいると早いですね」
作業がひと段落して辺りを見回した小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の言葉に、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)も頷きました。
「夕方までには終わりそうだし、折角だからちょっとした食事でも用意したいな〜」
「そうですね……皆さんお疲れでしょうし」
「うーん、私ちょっと相談してくるよ。みんなで『お疲れ様パーティ』でもしようって」
「『お疲れ様パーティ』ですか? 素敵ですね」
美羽の提案にベアトリーチェが微笑みます。
「厨房掃除してる人にも相談してみよう!」
思いつくが早いか美羽は早速許可を取り付けて、雅人たちに掃除の後の会場設営を頼むと、厨房へと走りました。
そこでは風間 宗助(かざま・そうすけ)小鳥遊 アキラ(たかなし・あきら)がシンクや銀食器を磨き上げていました。
大きな掃除などは殆ど終わったようです。
美羽が『お疲れ様パーティ』を提案すると、宗助もアキラも二つ返事で頷いてくれました。
「僕たちも皆さんに軽食を用意しようと思っていたんです」
「お掃除って体力使うし、おなかすくもんね!」
「よかった、それじゃあみんなで用意しましょう」
「ん、ちょうどよかった。それならわらわも混ぜてくれ」
ベアトリーチェと、唯斗の元からやってきたエクスも混ざって、みんなの食事を作ることになりました。
「どんなものがいいでしょうね」
「あまり大層なものを作ると洗い物を増やしてしまうことになるから、軽くつまめるものがいいよね」
「サンドイッチとか、おにぎりとかでしょうか」
「それなら椀物もつけたいな。スープなども用意するといいじゃろう」
「そうですね、それじゃあそうしましょう」
「張り切って作るぞ〜」
段取りを決めた四人はさっそく段取りを決めて、取りかかることにしました。
冷蔵庫の中を探して、使えそうな食材を取り出して行きます。
大鍋と両手鍋を用意してスープと茹で卵を作り、一方ではご飯を炊きます。
「炊き出しみたいだね、こういう大鍋って」
「そうですね、大人数で食事するなんていつ以来でしょう」
「学校の給食ってこんな感じなのかな?」
アキラが楽しそうにサンドイッチの具を用意しながら、宗助を覗き込みます。
けれど宗助は微笑するだけでした。
答えたくても、大人数で食べた経験が殆どなかったので答えられなかったのです。
けれどアキラは気にしないというように、「みんな喜んでくれるといいね」と準備に戻りました。
と、お皿の準備をしていた美羽が、厨房に入ってきた人影に声をかけました。
「あっ、翔君も手伝ってよ!」
女王やジークリンデ達にお茶を運ぼうとしていた本郷 翔(ほんごう・かける)も捕まえた美羽は、翔にも頼みました。
「そういうことでしたら、喜んで協力させていただきます」
「やった! 一仕事終えた後のお茶って格別だもんね」
「皆さんの為に美味しいお茶をご用意しないといけませんね」
さっそく、と翔も茶葉を用意しに席を立ちました。