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古代兵器の作り方

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古代兵器の作り方

リアクション

     ◆

 ショッピングモールの外。既にモール内から人々が逃げ出し、逃げてきた人々が集まっている場所に、御凪 真人(みなぎ・まこと)セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)の姿があった。
「あー! ビックリした! いきなり何よ、って感じよね」
「そうですね。何事か全く放送でも言っていなかったですし………何か事件でも――っと?」
 防火シャッターが次々に閉まっていくショッピングモールを見ながらに真人が呟くと、そこで彼は携帯を取り出す。画面には『ウォウル・クラウン(うぉうる・くらうん)』の文字が表示されていた。
「ウォウルさんから、ですね」
「アンタ…………いつの間に連絡先教えたのよ」
「……………………………セルファ?」
「な、何よ………」
 画面を見た真人の表情が徐々に険しいものになっていくのに気付いたセルファは、思わず言葉を選びながらに返事を返す。
「色々と、不味いかもしれません。俺の気のせいでなければ」
「どういうこと?」
「ウォウルさんの身に何かあったのかもしれない、と言う事ですよ」
「へっ!? ま、まさかぁ! あの人がそんな……うん。どうせ何かがあってもまたどっきりとかで――」
「確かに前はそんなことありましたけど――まさか此処までやりますか?」
「………………………」
 暫く考え込んでから、彼女は真人の携帯を覗き込んだ。そこで彼女は――絶句する。
「――っ!?」
「ヤラセならば俺たちにくらいネタばらしがあって良いはずじゃないですか? 幾ら本人とメールしたことの無いセルファ、あなたでもわかるでしょう。これは色々と不味いことになってると、そう考えるより他ないんじゃないですか」
 二人は何とか人を掻き分け、ショッピングモールまで目と鼻の先まで近付く。
「どうするの!? あの感じからして――ウォウルさん、怪我してるんじゃ……」
「可能性は高いですね。ただ、メールにある通り、今は逃げ遅れた人を救助するのが先決でしょう」
「そっか、そうよね……大丈夫だよね、あの人なら」
「確かにたどたどしい文章ではありますが、本文にも『私は無事です』と書いてありますし、彼の言葉を信じましょう」
 力強く頷いた二人。が、此処で問題が生じた。勿論、二人は直ぐ様その問題に直面する事となる。
「でもさ、待ってよ。あそこも――此処も、あっちも………シャッター閉まっちゃってるよ?」
「侵入経路、ですね。問題は。このシャッターだって、必ず意味があるはずですし、無闇に警備員さんに開けては貰えないでしょう。生憎今日は武器も持ち合わせてないのでシャッターを壊して――と言うわけにも…………」
「そうね、どーしよ。メール貰ったは良いけど、今のままじゃ身動きが取れない……って、真人? 真剣に考えてる?」
 腕を組みながら考えていたセルファは、何かに気をとられ、立ち尽くしている真人に声をかける。が、彼とて何も意味もなく黙っていた訳ではない。
その視線の先には――。
「セルファ。俺たちだけが、果たして救助をする人間だけでしょうか」
「えっ? 何言ってんの? だから困ってるんじゃ………」
 徐に真人の向いている方に目をやったセルファは、その先にカイ、渚、柚、三月たちの姿を見つける。と、同時に、何処からか合流してきたレン、静麻、海の姿も発見する。 どうやら二人の第一関門――『ショッピングモール内に入る』と言う課題は、クリア出来そうだ。





     ◆

 場面は空京に移る。この日、散歩をしていた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、突然に携帯が鳴った事に首を傾げながら、ポケットから携帯を取り出してディスプレイを眺める。
「あれぇ? ウォウルさんからメールだ。どうしたんだろ」
 その言葉には、彼女の隣を歩いていたベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)も首を傾げる。歩いていた二人は道の端に寄り、二人で携帯の画面を見やった。
「…………『いま くうきょうのち かくにいる人へ  みなさんのちから をおから したあで――』…………うん?」
「全文平仮名………ですね。変な空白とか、入力ミスが目立ちますけど………」
「うーん、何か変だね。電話したら、出るかなぁ?」
 そう言うと、美羽はメールを全文読まないまま、通話ボタンを押して電話を耳にあてがう。暫くの呼び出し音の後、電話が通じると美羽は不思議そうな顔をし、ベアトリーチェは不安げに美羽を見つめた。
「もしもし、ウォウルさん? あたしだよ――うん? あたし! 美羽だよ! ウォウルさ――」
 と、そこで、彼女は言葉を止めた。唖然としたままの表情のまま、突然瞳から涙を溢す。
「………美羽さん?」
「何処!? 今何処に居るの!?」
 懸命に電話のスピーカーを耳に押し当てているが、なかなか思うように聞き取れないのか、何度も謝りながら聞き直す美羽。袖でゴシゴシと顔を拭いている為、既に若干ではあるが目の回りが赤くなっている。
「美羽さん………替わりましょうか?」
「…………………ごめん、ベアちゃん。お願い……」
「もしもし、いきなり替わりってしまってごめんなさい。ベアトリーチェですけど………ウォウルさん!?」
 ベアトリーチェが聞いたのは、受話器の向こうから聞こえる、空気の漏れ出ている音と、僅かに聞こえるウォウルの声。故に彼女はひたすら押し黙り、ウォウルの言葉を聞いた。
「ショッピングモール内でラナさんが――はい。わかりました、今から行きます! はい、それでは――」
 電話を切ったベアトリーチェは、美羽にそれをそっと手渡すと、今自分が聞いた言葉を簡潔に美羽へと説明した。事態が把握できたからか、はたまた落ち着いたから、既に美羽の涙は止まっている。
「ウォウルさん、怪我をしているみたいです。ですが『そこまで傷は浅くない、それより逃げ遅れた人かラナを頼みたい』だそうです」
「でも、あの感じだと……そんなに平気そうじゃなかったよね」
「えぇ。私もそう思うんです。だからまずはウォウルさんの元へ。どちらにしてもラナさんを探すための手懸かりを見付けなくては」
「わかった」
 しゃがみ、靴ひもを縛り直す美羽。心なし、その手に力が入っていた。
「……行こう! ベアちゃん! 私たちで止めないと! ウォウルさんを助けて、ラナさんを止めるんだ………っ!」
「えぇ、行きましょう!」
 固い固い、決意を胸に、二人は全力失踪で駆け抜ける。風かと紛うばかりの速度でもって駆け抜ける。友が為――二人はショッピングモールへと向かった。走りながら、美羽は並走するベアトリーチェに謝罪する。
「ごめんね、取り乱しちゃって」
「仕方がないです。私でも美羽さんの立場ならああなってしまいますよ」
「そうかな、ベアトリーチェ、強いなぁって、そう思ったよ」
「いいえ。私はそこまで強くはないです。美羽さんが困ったとき、私が貴女を支えなきゃいけないと思ってます。私がいつもしてもらっている事をお返ししたまでですよ」
「……………そっか」
「えぇ」
 それっきり、二人に会話はなかった。それ以外に、二人に会話は必要なかった。という表現が最も適切であるのは、此処に述べるまでもない。