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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

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●第3章 旗艦――船長と右腕と大男

「雅羅!」
 船底の穴の様子を見に来た海賊たちを蹴散らして、甲板へと出てきた唯斗は声を上げた。
「唯斗!?」
 周りの船が襲撃に合い、構えていた船長・エヴァンジェリンたちの傍で、逃げようにも逃げれずに居た雅羅が、思わぬ救いの手に声を上げ返す。
「襲撃者たちの手の者ね!?」
 唯斗を睨むエヴァンジェリンは、銃を構え、引鉄を引く。
 それを避けつつ、唯斗は彼女の後方、雅羅の元へと駆けつけると、その手を取って引き寄せた。
「あちらへ下がっていてください!」
 旗艦へとボーディングしてくる“黒髭”海賊団の船を指して、唯斗は雅羅の背を押した。
「そういうワケにもいかないわ! 毎度毎度巻き込んでくれた礼は返すのよ!」
 告げた雅羅は、バントラインスペシャル雅羅式を構え、海賊たちに立ち向かう。
 唯斗も強化光翼を広げて、甲板が見渡せるほどの高さまで飛び上がると、先ほどの魔力を集中させた一撃とは反対に、細かく分散させた魔力を雨の如く、甲板に降らせた。
「うおっ!」
「お嬢!」
「きゃあ!」
 アーダルベルトは魔力の雨に当たらぬよう飛び退き、エセルバートはエヴァンジェリンを庇うように立つ。

(特に脅威なのは、隊長とキャプテンと、キャプテンの取り巻き10人ほどの船員。残りは、多分普通の雑魚なんじゃないですか?)
 そう考えたリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)は、雑魚と呼んだ1番隊所属の海賊たちの間を通り抜け、旗艦へと一直線にやって来ていた。
 奥に見えるのは雅羅とアーダルベルト、それに男女1人ずつ。
(彼らが隊長とキャプテン……そして、この甲板に居るのが、取り巻きですね)
 特注ダンベルほどの重さのある、修行用の数珠を手に巻きつけたリリィは手近な海賊に向かって、殴りかかった。
(本来は、このようなことをするモノでは無いのですけれどね)
 数珠の扱いが違うことについて自分自身呆れつつも海賊へと殴りかかる手は止めない。
 もちろん、海賊も殴られるだけでなく、短剣を手に、彼女の手元を狙い、数珠の玉を繋ぐ糸を斬ろうと試みている。
 リリィの読みどおり、今まで三番隊、二番隊に居た海賊たちよりは手ごたえを感じられるほど、目の前の海賊の動きは良い。
 彼の振るう短剣に数珠を斬られないよう避けると、時折切っ先は腕を掠めていく。
 切り傷の増えていく腕に痛みを覚えながらも、リリィは目の前の海賊を殴り続け、終いにはその男を気絶させた。

 旗艦へと死角から小型飛空艇を駆り近付くのは、セフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)と、パートナーのオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)だ。
 直ぐ傍から急に高度を上げて甲板の上に出た彼女らは、小型飛空艇から飛び降りて、周りの海賊たちへと一振りずつ攻撃を仕掛けると、エヴァンジェリンの下へと向かった。



「美緒ちゃん外なのね! 前線ね! 頑張っちゃうわよー!」
 “黒髭”の後を追うように旗艦へと乗り込んだルルール・ルルルルル(るるーる・るるるるる)が張り切って声を上げる。
「今度こそ最後まで燃焼してえ! もう一度勝負しやがれ、アーダルベルト!!」
 甲板に集う海賊たちの奥に目当ての男――アーダルベルト・グアハルドの姿を見つけた夢野 久(ゆめの・ひさし)が声を荒げた。
「おまえか。面白い、再戦と行こうか!!」
 アーダルベルトも久に気付いて、二振りのカットラスを構える。
「海賊対海賊。うん、良いね。こう言う連なった着想元もまた赴き深い。三部作にして画図に描いて見たいものだ……その為にも、今はこの戦を味わい尽くさないとねえ……」
 頷きながら佐野 豊実(さの・とよみ)は、海神の刀を抜く。
「邪魔にならないように周りの子を掃討してるわね」
 任せなさい、と胸を張って、ルルールが久に告げる。
「じゃあ、この一撃以降は任せたぜ!」
 告げて、久は必殺の拳で、周りの海賊たち全体へと痛みを与えていくと、後を2人にを任せて、アーダルベルトの元へと駆けて行く。
 ルルールは酸の霧を発生させて、周りの海賊たちを包み込み、痛みを与える。弱ったところを豊実が斬りつけ、更に痛みを重ねた。
 そうして周りの海賊たちを2人が引き受けることで、久とアーダルベルトは一対一で向き合うことが出来る。
 聖杭ブチコンダルを振り上げた久は、音速を超えた一撃を振り下ろす。
 けれど、ガキンと鈍い音と共に、交差されたカットラスで受け止められてしまう。
「一撃で決まるたぁ思ってねえさ。当たるまで何度でもブチかましてやる!」
「ああ、何度でもかかってきやがれ!」
 久の言葉に、アーダルベルトは答えながら、受け止めたままの聖杭ブチコンダルを勢い良く押し返した。
 後ずさる久に、アーダルベルトが斬りかかる。片方のカットラスを聖杭ブチコンダルで受け流すものの、もう片方を避けきれず、久は斬られてしまう。
「くっ」
 痛みに声を漏らすものの、直ぐに体勢を立て直すと、再び聖杭ブチコンダルを振り上げて、音速を超えた一撃を振り下ろした。