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THE RPG ~導かれちまった者たち~

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THE RPG ~導かれちまった者たち~

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「よくぞ来られた勇者たちよ。俺はこの町の領主である」
 そうそう、忘れてはいけません。
 王様か、そうでなければ町の偉い人に挨拶に行くのは冒険には必要なことです。
 LV上げもまずまず進んだところで、勇者たちは町を仕切る大富豪に会いに行きました。
「もう冒険には慣れたかな?」
 意外にもフランクに出迎えてくれたのは、この最初の町(これまでは村ばかり)を治めるシド・ハートウェル(しど・はーとうぇる)です。
「聞くところによると、秘宝を探しているとか。気をつけて旅されよ」
「いや、他人事みたいに言ってくれてますけど。秘宝は町の大富豪が持っているという話ですよ」
 すかさず突っ込んだのは島井です。
「50億VGは用意できそうにないですが、その代り出来うることなら力になりますよ」
 別のミッションをクリアするから秘宝を何とか譲ってほしいとニュアンスの島井に、シドは小さく微笑んで。
「それは、海を渡った向こうの国の大金持ちの話だ。俺は関係ないし、船を使っていいから勝手に行くがいい」
「船!? きましたわー。なんか前進って感じですね」
 オルフェリアは喜びます。
「船は、峠を越え橋を渡った向こうの島のほこらにつないである。特に危険もないし俺自身何も欲しいものはないので、普通に持っていくといい」
 なんかいい加減な展開ですが、何もないというなら遠慮せずに貰って行きましょう。
「たんすの回収も済んだぜ。金持って割には大したもの持ってなかったけどな」
 聖が戦利品を抱えて戻ってきましたので早速出発です。
 武器も整えLVも上がったので、これ以降はサクサク進みます。もう、モンスターも怖くありません。教会に運ばれたころの猫勇者たちとは違います。
「あ、見えました。あれですね?」
 オルフェリアの指さす方向に、向こうの島へと渡る大きな橋が架かっているのが見えました。
 あれを越えるとほこらがあり、念願の船が手に入るのです。
 あの町のお金持ち、いい人です。感謝しましょう。そう思いつつ勇者たちが大橋を渡ろうとした時です。
「ヒュウウウウウ……!」
 不気味な唸り声とともに、橋の向こうから負のオーラをまとった人影が姿を現します。
「…………!」
 言葉にならない声を上げながらいきなり襲いかかってきたのは、無数の死霊たちを身体にまとわりつかせた謎の悪霊です。
「うわ! なんか出たにゃー。あのお金持ち何もないって言っていたのに嘘つきにゃ!」
 御影が悲鳴を上げます。
 それほど恐ろしげな風貌をしていたのは、水橋 エリス(みずばし・えりす)が役割を担う、中ボスです。本々女性だったらしく、ドレスをまとった骸骨の姿で、かなり強そうです。

 モンスターが現れた!

 悪霊       1匹
 コマンド?
  たたかう
 →にげる
  じゅもん
  どうぐ

 しかし回り込まれてしまった。
「にゃー! 逃げられないにゃ〜!」
 悪霊は、呪いの声とともに、死の呪文を連発してきます。
「……これはマズい。こんなところで死んではお宝が……!」
 島井が慌てた様子になるほど、悪霊は彼を執拗に狙ってきます。
「まあ、こっちは狙われていないようなので、気は楽だがな」
 なんだか少々薄情なことを言いながら攻撃と防御を繰り返す聖に、璃央がぽつりと言います。
「あの女性、なんか悲しそうです」
「              」
 エリスの悪霊は何か言っているようですが、聞き取れません。
 やがて……。
「私は、先に進まないといけないのです、昔も今も! 言いたいことがあるなら、来世でまた会うとしましょう!」
 島井の必死の攻撃で悪霊はHPが尽き、抱きつくように倒れかかってきます。
「ワ……ス……レ……ナ……イ……ヤ……ク……ソ……ク……ヨ……」
 悪霊は、何か叫び声を残して消滅してしまいます。
「……これは?」
 オルフェリアは、悪霊が落としていった物を拾い上げます。
 それは、小さなロケットペンダントで、中には男女の写真が収められています。
「……より、愛をこめて、ですか。名前のところはちょっと読み取れませんけど。年号からすると、この男性ももう生きてはいませんね」
 それよりも眼をひいたのは、写真の男性の肖像が島井に似た面影を残していることです。
「……あいつ、私を彼だと思っていたのでしょうか?」
 だが、どうして攻撃を……。
「聞かぬが花だと思うけどね」
 何かを察したように聖は言います。
 きっとあの亡霊は写真の女性で、恋仲がうまくいかなかったのだろう。捨てられた彼女は、ずっと待っていたのだ。あんな姿になっても。その恨みを魔王に利用されて悪霊として蘇らされても。もう一度、最後に男に会いたかったのだ……。
 一行はそう推測します。
「……」
 勇者たちは、悪霊のいた跡に花を手向けます。
 もう何もしてやることはできませんし男の手がかりも見つけることはできませんが、せめて魔王を倒したら報告に来るとしましょう。
「せめて安らかに眠ってください」
 島井は途中で手に入れた宝物を形見(?)として残していきます。
 さあ、しんみりするのもここまでです。またバタバタと冒険を続けましょう。
 で。
「……え〜っと」
 やはり、このゲームただではいかないようです。
 大金持ちの言うとおりほこらに行ってみると、船は壊れていて使えないではないですか。
「……いい加減なことばかり言ってくれましたね」
 どうやら食わせ者だったようです。もう何もかも信用できません。どうしましょうか。向こうの国に渡れなくなってしまいました。
「……イチドダケ、ワタシテアゲル」
 と……。先ほど悪霊の声が、女性の声に変わり光が舞い降りてきます。
「……!?」
 エリスの悪霊は輝く女性の姿に変わり、勇者たちの手を取ります。昇天する途中で戻ってきてくれたようです。
 そのまま、女性の霊に導かれ勇者たちはゆっくりと海を渡ります。
「こんなことって、あるんですね」
 オルフェリアは驚きの声を上げます。許してくれたかどうかは知りませんが、力を貸してくれたようです。
 そのまま、反対側の大陸にたどりつくと、女性の霊は今度こそ消滅します。
 最後に小さく微笑んで。
「ありがとう」
 感謝の言葉を残して、勇者たちは先へと進みます。
 さて、いよいよ秘宝のある町です。
 大金持ちは、秘宝を譲ってくれるでしょうか……。