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もみのり

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もみのり

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 一方……。
 大助と別れた雅羅は、少し離れた場所で一人、ぼんやりと空を眺めていた。
「好き……か。私、どう答えたらよかったんだろ……」
 その表情には迷いも後悔もなかった。だが、相手の熱気に呑まれて火照った頭を冷やしていたのだ。
「……」
 雅羅はしばらくの間黙っていた。
 と……。そんな彼女の横合いから、そっと飲み物が差し出される。
「……?」
 そちらに顔を向けると、そこには遠慮がちな表情で少年が立っていた。
「喉が渇いているだろうと思って。余計なお世話だったかな……?」
 冒険帰りの魔法使いにしてワゴンの同乗者想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)は、雅羅が悶々と思い悩んでいるのが心配になってやってきたのだ。
「さっきまで、ワゴンでキミたちと一緒に遊んでいたんだけど、オレのこと覚えてないかな?」
「ううん、そんなことないわ。ありがとう……」
 雅羅は、夢悠から飲み物を受け取るとクピリと口をつける。ハァッと一息ついてホッとしてから、何かに気づいたように目をしばたかせる。
「もしかして、見ていた?」
「……何を?」
「いや、なんでもないわ」
 そう言って雅羅は再び黙り込む。
 少しの間、二人は並んで空を眺めていた。青空の下、雲がゆっくりと流れていく。
「……いい旅だね」
 いささか緊張気味なものの、夢悠は思い切ってそれ以上の会話を進めてみる。
「ドタバタ、ヒャッハー! と予想通り騒がしいけど、楽しい旅だ」
「どうなのかしらね。相変わらず災難続きで、落ち着かない思いをしている人もいるんじゃないかしら」
「チャレンジャーな種もみ剣士や一般人女性がいるからね。一筋縄ではいかないよ」
「彼女たちの責任にしたくないわ」
「ねえ、もしかして、襲撃やトラブルを雅羅さんの災難体質のせいだと思っていない?」
「……」
「雅羅さん、キミはいつだって災難体質の自分を責めて、親しい人たちだって遠ざけてきているよね。だからいつだって、一人ぼっちだ」
「……まあ、私は一人のほうが気楽だしね。向こうにだって好みがあるわけだし、ついた離れたで一喜一憂していたら、身がもたないわ」
「好み……か。オレは雅羅さんのこと好きだけどな」
 勇気を持って、だが重くならずにさりげない口調を装いながら、夢悠は想いを伝える。
「キミのことを嫌っている人なんて、多分いないよ。とても魅力的な女の子じゃない。でね、オレ、雅羅さんに、自分を好きになってもらいたいんだ。自分を嫌わないでほしいんだよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、よいお返事を期待されても困るわ。あなたのこと、まだよく知らないし」
「……ごめんね。雅羅さんのことが好きな人の気持ち、もっと受け入れてくれたらな、って前から考えていただけだから」
「本当に私のことが好きなんだったら謝らないで。玉砕したっていいじゃない。あなたの想いは一度きりなの? 私なんか、あれだけ災難に見舞われてまだ生きているのよ」
「……」
「まだ時間はあるんだし。ゆっくり考えよ。お友達でいいじゃない。それから、ドリンクご馳走様。おいしかったわ」
「……」
 夢悠は去っていく彼女の後姿をじっと見守っていた。
 想いは伝わったのだろうか? それは……。



「やっぱりこうでなくちゃね」
 事の顛末を一部始終ビデオに収めたプーチンは、満足げに戻っていった。恋の成就はならなかったが、こちらの方が受けるのだ……。
「視聴率視聴率……」