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新入生とパートナーには友達が少ない?

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新入生とパートナーには友達が少ない?

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お茶会

「皆さんも席に着かれましたことですし、お茶菓子でも配りましょうか。あ、その前にひとつ。わざわざ手作りして頂いたのですから、お出しする際に各人にご紹介してもらうのも宜しいですわね」
 さっそく、といった体でアルセーネは指示を出していく。
「まずは……そうね、おはぎとシフォンケーキからいきましょうか」
 アルセーネの言葉で、手伝い組みに回っていた人たちが一斉に配り始める。
 その中から、アキレウスが二人を手招きした。
「杜守とヴェクターの二人が手作りして来てくれたようだぜ。しっかし美味そうだなーこれ」
 アキレウスの賛辞に、蛇々の顔が赤らんでいく。
「ちょっと! それより私、こんな風に前に出るなんて聞いてないんだけどっ!」
「いいじゃん、蛇々おねえちゃん! ほら、せっかく皆と仲良くなれる機会だよー。素直にならなくっちゃ」
「別に素直じゃないわけじゃないけど……」
 リュナに諭され、言葉尻の萎んでいく蛇々。
 しかし、このままでは駄目だと自覚したのか、大きく深呼吸をすると口を開いた。
「私が用意したのは、きなこと餡子のおはぎよ。ほっ……他のお菓子なんかに比べたら地味かもしれないけど、甘さ控えめで美味しいんだから! さっさと食べちゃいなさいよねっ!」
 結局は素直になり切れていないままの蛇々に苦笑しつつも、リュナが前に出る。
「あたしはこのシフォンケーキを作ってきたよー。生クリームとか添えて食べてみてね」
 にっこりと笑みを浮かべて、シフォンケーキをテーブルにのせるリュナ。
 茶会席に座っていた面々から、好意的な言葉を投げかけられる。
「喜んでもらえてよかったね、蛇々おねえちゃん」
「……う、うん」
 蛇々は照れ臭そうに頷いたのだった。

「それじゃあ皆のところに行き渡ったところですし。ところで、お茶会といっても何を話しましょうか」
「桜の季節は出会いの季節。自分は、皆の馴れ初め話とかでもどうかと思うぜ」
 アキレウスの提案に賛同するように、皆が頷いてみせる。
「そうしましょうか。では、さっそく……」
 アルセーネが周囲を見回した所で、勢いよく手を挙げる人がいた。
「はいはい! ワタシ、樹様との馴れ初め話がしたいです!」
 ジーナに続くように、章も同意する。
「そうだね、僕も惚気……じゃなかった。樹ちゃんとの馴れ初めが話したいな」
「おい、二人とも!? というよりアキラ! 今惚気とか言いそうになってなかったか!?」
 ガタンっと、思わず席を立つ樹。
「うー! こたも、こたもー!」
 主張するようにコタローが手を振る。
「そうですね。私もぜひお聞きしてみたいです」
 追い討ちを掛けるように、正面に腰掛けていたフレンディスが同意する。
「あ、葦原の忍び娘まで……」
 退路がないことを悟り、樹は渋々と席に着き直す。
「わかった、私たちからいこう」
「では、樹さんからお願いしますわね」
 アルセーネの促しで、馴れ初め話は始まった。
「はいはいはい! まずはワタシからですねっ!」
 まずはジーナからだった。
「樹様とはヒラニプラの荒野で出会いました。ちょっとした遺跡の片隅にワタシは眠っていたそうで、そのワタシを起動して下さったのが、樹様なんです。ワタシがしていたタグと外見から、樹様が名前を付けて下さいました! それが今から約……12年前になりますでしょうか? あのころの樹様は、名前を呼ぶと怒って、殆ど表情も変わりませんでしたね。ですが、今ではとても表情が柔らかで……」
 苦笑混じりながらも、優しい瞳で樹を見遣るジーナ。
「じ、ジーナ、私は自分の名前が嫌いだったんだ。だからお前には、名字で呼ばせていたのだ……。うむ、まさか起動しただけで契約したとは思わなかったな」
 あの頃のフォローをするかのように言葉を足しながら、樹の瞳も思い出に浸る。
「じゃあ、次は僕と樹ちゃんの馴れ初めといこうか♪」
 樹の意識を引き戻すかのように、章の声が楽しげに響く。
「まあ、表情が増えたのも僕の愛のせいかもしれないね、うん」
「!? な、何を言い出すんだ、アキラ!?」
 樹の叫びを無視し、章は言葉を続かせる。
「僕が樹ちゃんと契約したのは教導団の食堂さ! 前々から『他の団員とよくケンカする』って聞いていたから
一回どんな人かと食事時に見に行ったんだ。そしたら、こんな綺麗な子だとは思わなかったんでねぇ〜♪ 速攻で結婚を申し込んだってワケさ! それからずーっと申し込み続けてえっと……6年間だっけ? やっと去年の6月に受け入れてもらえたってところさ」
「あ、会っていきなり申し込んだんだぞ! お前は! そんなすぐに受け入れるわけ……はあ、全く、しょっちゅう話しかけてくるアキラを足蹴にしている内に契約していた形になってしまったとは……」
 樹が頭を抱えているところに、コタローが爆弾発言を落とす。
「うー、こた、はやくあきとねーたんに『あかたん』こないかなって、おもってうれすお! らから、『こうのとり』しゃん、のこにいうかあきれうしゃん、おせーてくらさいれすお!」
「こうのとり?」
 コタローの舌っ足らずな発言に、アキレウスが考え込む。
「こ、コタローっ!! ……い、いいイイ、そんな話はイイからっ!」
 絶叫した樹は、皆に忘れてくれと言うように手を思い切り左右に振る。
「困り果てていたときに拾ったんだ。『野良ガエル』だと思っていたんだが……。体調不良になったときに医者に診せたら、『ゆる族』だと教えられてな……」
 気を取り直したかのように、樹がコタローとの馴れ初めを説明する。
「う! それに、こた、おにゃの子なんれす。ねーたん、こたがおいしゃさんにかかうまれ、男にょ子とおもってたんれすお! らから、こたのにゃまえ、『こたおー』なんれす」
「ま、まあ、そんなところだな」
 コタローの説明に少し気まずくなり、視線を彷徨わせた樹。
 ふと、自分を見つめるフレンディスと目が合った。
「おお! 葦原の忍び娘、今度はそちらが話す番だぞ!」
 先ほど追い討ちを掛けられたのもあり、樹はそのまま彼女を指名した。