リアクション
エピローグ
地上に向かうトンネルを抜けてトリネルが見たものは、とても、とても眩しい世界。
肌に触れる空気の流れ。
ぽかぽかとライトの前にいるような温かな光。
地下の世界では見たことのない青々とした植物。
そして、どこまでも続く大地と、高く高く続いていく――
「――空」
空にある白いもやのようなものは雲というらしい。
夜に空に光るきらきらしたものは星というらしい。
そして、空のずっとずっと先には宇宙というものがあるらしい。
夢にまで見た世界。
感じたかった世界。
「トリネル、本当にいいのか?」
ルルドは荷物をつめた鞄を背負いなおして、トリネルの顔を覗き込む。
「いいの。でもその代わり約束して。どこかに行っても必ずこの村に帰ってくるって。それでいーっぱいいろんな話を聞かせて」
「……分かった。約束する」
夢にまで見た世界。
広すぎる世界。
やらなきゃいけないことがある。
教えてもらったことがある。
大事にしなきゃいけないことがある。
それを守るために、もっともっと、より良い世界を創るために。
「私が頑張る場所はここだと決めたんだ」
だから、いってらっしゃい。
これから訪れるだろう様々な交流をもたらす人のために、そしてルルドたちがいつか帰ってこれる場所を守るために、トリネルは村に残ることに決めた。
だが、後悔はしていない。つらいとも悔しいとも思わない。
望んでいた世界はトンネルを抜けた先にあるのだから。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
参加してくださった皆様方、本当にありがとうございました。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
それではまたどこかでお会いしましょう。
宇角尚顕