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桜封比翼・ツバサとジュナ 第二話~これが私の交流~

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桜封比翼・ツバサとジュナ 第二話~これが私の交流~

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■ツタの化け物攻防戦・後編
(――前回はわけもわからずに飛ばされてしまった。だが、今回は前回を失敗を踏まえて敵の出現に合わせてかっこよく登場して決めてやる!)
 そんな野望を胸に抱え、パートナーである九断 九九(くだん・くく)新城 咲和(しんじょう・さわ)クレイ・ヴァーミリオン(くれい・う゛ぁーみりおん)の三人を引き連れて戦場の物陰から様子をうかがっているのは高塚 陽介(たかつか・ようすけ)。前回、陽介は何が何やらわからないままに空の彼方まで吹き飛ばされしまい、かっこいい所を見せつけることができなかった。そこで今回は、登場パターンを変えてかっこよく決めようという算段のようだ。
「敵が出現したところで俺たちが颯爽と登場して、そのまま助太刀に加わる。そして敵を圧倒した後にかっこよくその場を立ち去る! ……うん、我ながら完璧なプランだ。三人とも、戦闘になったら俺の指示に従ってくれよ」
 脳内で今回の登場プランを組み立て、うんうんと納得し終えると……実際の戦闘を担当する九九、咲和、クレイの三人へ視線を向ける。だが、そこにあったのは……。
「あ、そこにマヒ肉仕掛けちゃってくださいねぇ。今の魔獣の状態なら食べるので」
「あいあい、了解〜。いやぁ、九九ちゃんに勧められたこの狩りゲーム面白いねー」
「……やば、巨大爆弾持ってくるの忘れた」
「爆弾を忘れたぁ? 何してるんですかぁ! 爆弾がないと部位破壊できないです……これは縛り首の刑ですねぇ、10時間ほど」
「縛り首に逆さ吊りだね、10時間ほど」
「え、ちょ、爆弾忘れただけでその責めかたひどくね!? ああ、両手剣のホームラン攻撃で吹き飛ばすなぁっ!」
 ……リアル集会場だった。陽介の話をガン無視して、ブームが再燃しているという、魔獣ハンティングゲームのパイオニア『ビーストハンター改』の協力プレイ中の九九たち。実に楽しそうである。
「何やってんだ貴様らっ!? 戦場でゲームとか、戦う気ないのか!! ――こら、露骨に無視するな!」
 陽介はその状況に思わず突っ込んでしまう。さらに追及しようと思ったその時、ちょうど目の前に矢雷 風翔(やらい・ふしょう)小野寺 裕香(おのでら・ゆうか)、そして瀬乃 和深(せの・かずみ)上守 流(かみもり・ながれ)アルフェリカ・エテールネ(あるふぇりか・えてーるね)の一団が陽介たちのいる物陰の前までやってきたようだった。
「めんどくせぇ……せっかく温泉に入りに来たのに護衛に駆り出されるハメになるなんて……」
「何言ってるんですか! 困ってる人を助けるのが私たちのやるべきことですよ! それに契約者としての経験が浅い翼さんも心配なのもありますし」
「あー、あの店員か。まったく、またあのウネウネした奴が出てきたってのもあるしホント、トラブルとモテモテじゃないか」
「自己紹介が済んでるのに、いつまでも翼さんを『店員』って呼ぶのは失礼ですよ!」
 風翔は相変わらずの面倒くさがり屋を発揮している。普通ならば旅館で待機していそうなものだが、風翔の隣で気合を入れまくっている裕香に引っ張られて参加させられてしまったようだ。
「せっかく翼さんと樹菜さんにかっこいい所を見せようと思ったのに、その二人と離れた場所を担当するとはなぁ。まぁそれでもギリギリ見える場所だからチャンスはあるんだけど」
(……まだ、死角を作る必要がありそうですね。これだけ離れてれば、ほとんど大丈夫とは思いますが)
 そして和深は翼と樹菜の二人に今度こそかっこいい所を見せたいと輸送飛空艇の護衛に参加し、実際に何度かアピールしていたのだが……そのことを知って若干不機嫌な流が、巧みな行動でそのアピールが見えないよう二人の視界に和深を入れないよう死角を作ったり、こうやって二人とは離れた場所を担当するよう働きかけたりと、ある意味ではやきもち全開だった。
「何をやっているのだ……やれやれ」
 そんな和深と流の様子を見て呆れているアルフェリカ。――と、そこへ輸送飛空艇へ向かおうと一団になって移動しているツタの化け物たちが、一行の視界に捉えられる。
「きた! よし、貴様らゲームやってないで行くぞ! 作戦開始だ!」
 それを陽介も確認すると、颯爽と登場するべく物陰から出ていく。……九九たちはボス魔獣狩りの終盤を迎えていた。
「風翔さん、敵です! 全部倒して――って、誰ですか!?」
「――俺、登場ッ!! 俺たちが助太刀してやる! 貴様ら、すぐに周囲てんk――ってぇ、早く出てきてっ!?」
 颯爽と五人の前に登場、往年の桃太郎的変身ヒーローのポーズを取りながら、SEが鳴りそうな勢いでかっこよく決めたまではよかったのだが、その時点で九九たちがまだ出てきていないことに気付いたようだ。
「……陽ちゃんが戦え戦えうるさいですし、いっちょやりますかねぇ。セーブもしましたし」
「さてさて、陽介君の一人寂しい空回りもMAXみたいだし、今度はリアルで魔物狩りの時間だよん」
「結局、魔獣のドロップアイテム拾わせてもらえなかった……チッ、この鬱憤はあのツタ共と陽介で晴らすッ!!」
 ゲームでの魔獣狩りをひと段落つけたのか、ようやく九九たち三人も出てきて陽介の指示した陣形を取っていく。すぐに陽介は三人それぞれに触れながら『パワーブレス』で強化を施す。
「なんかまた面倒くさそうなのが出てきたけど……まぁ手伝ってくれるなら問題ないか。――よし、こうなったら一秒でも早く温泉に入るためにもとっととこいつらを片づける! すべては温泉と風呂上りの一杯のため!」
「動機が不純すぎます、風翔さん……」
「いいですねぇ、あたしたちも元はと言えば温泉入ったりゆるゆると狩りゲーするためにきたんですし、そっちの意見には大賛成ですよぉ」
 風翔と九九の考えが一致した瞬間だった。――戦闘が開始されると九九は咲和と一緒に前線を駆けながら《トマホーク》を振るい、次々とツタを斬り落とし、それに合わせて他のツタの化け物を風翔が面倒そうにしながらも攻撃。種の放出に対してはクレイが《フューチャー・アーティファクト》を乱射して対処。その前線を裕香が『ディフェンスシフト』や『ヒール』でサポートしていく。
「今度こそ、かっこいい所を見せる――!」
 和深も戦線に参加し、『【剣の舞】地球人用』でツタの化け物を斬り裂く。全ての動力源は翼と樹菜にかっこいい所を見せたいという想いからなのだが、その想いは儚くも流が翼たちがいる方角を陣取って和深を視界から遮らせながら『ファイアストーム』を撃って化け物を対処しているため、叶うことはなかった。アルフェリカも後方から『我は射す光の閃刃』などの広範囲の魔法で援護攻撃を撃ちつつ……これだけの敵を操る黒幕の所在と存在に思考を働かせていた。
「……和深、と言ったか。なんだか、似たようなにおいを感じるのは気のせいか――ぐぉっ!? おいクレイ! レーザー今こっちに当たったぞ!?」
 乱射しているはずなのに、ツタの化け物たちと陽介以外には全く命中しないクレイの《フューチャー・アーティファクト》。気分が高揚しているからか、クレイは陽介の言葉を全く聞かず……再び、乱射されたレーザーの85%が陽介に着弾し、弾けた。
「どああぁぁぁぁぁ!!? またかあぁぁぁぁぁぁ!!!」
 ――またしても空の彼方へと吹き飛ばされる陽介。……が、裕香くらいしか心配する者がおらず、その後の戦闘も滞りなく進んでいったとかなんとか……。

「…………」
 護衛戦線の一角。ゼクスはいつも以上に押し黙ったまま、《紋章の盾》を構えての『スウェー』でツタの化け物の攻撃を受け流し、『爆炎波』を伴った《カルスノウト》で一気に焼き斬っていく。放出される種に対しては、《白虎》の背に乗った封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)が《鯨ひげのヴァイオリン》の力で凍らせて処理をする。
「――ゼクスさん、少し様子が変ですけどどうかしたんですか?」
 周囲警戒のために発動していた《野生の勘》のおかげか、ゼクスの様子がおかしいことに気付いた白花は、『禁猟区』で周囲警戒を怠らないままゼクスへ話しかける。ゼクス本人は無口な機晶姫だからか、すぐに話はしなかったが……数体ほどのツタの化け物を協力して倒したのち、ゆっくりと口を開いていく。
「……あの男はマスターも白花さんも護らずに戦っています。普通は護るべきなのに、お二人はそれを全然気にせずにいるみたいですが……むしろ、それを嬉しそうにしている。僕にはそれがわからないんです」
 ゼクスの話を戦いながらも静かに聞く白花。ひと段落ついたところで、上空から援護に来たのであろう洋の小隊へ戦線を任せ、ゼクスへ語りかけていった。
「つまり、刀真さんが私たちを蔑ろにしてる……って思ってるのですね。――刀真さんが私たちを護らないのは、刀真さんが私たちの力を信頼しているからですよ。今回の相手なら私たちでも退けられると、刀真さんは不安や心配もせず、逆に自分の背中を預けてくれたんです。そして、私たちはその信頼に応えるために全力で自分の力を振るうんですよ」
「信頼……」
 マスターである月夜が刀真を信頼している。それを聞いたゼクスの表情に、わずかながらの寂寥感に駆られてしまった。
(マスターから白花さんと一緒に戦うように言われた時にも、同じような寂しさを感じた。……でも、マスターは僕を信頼しているからこそ、そういう風に言ってくれたんだと思う)
 信頼という“絆”があるからこそ、あのように護られていなくても嬉しそうにしていられる。――白花の言葉を通じて、ゼクスは何かを掴めたような気がした。そして同時に寂寥感は薄れ、信頼に応えたいという力が湧いてくるようにも感じられる。
「――いい顔になったようですね、ゼクス。……相沢さん、戦線をお任せして申し訳ありませんでした! すぐに私たちも合流します!」
「気にしなくて結構! こちらも空賊相手に白兵戦で経験を積んでいる翼と樹菜の安全を確保するため、化け物共に空挺乗りの戦い方というのを教え込んでいたところだ! みと、エリス、洋考! 援護弾幕、これより吶喊する!」
 洋は《小型飛空艇オイレ》を飛ばし、ツタの化け物たちが密集しながら移動している上空まで乗り付けると、小隊員たちの火力支援を受けながら急降下攻撃による吶喊を試みる。オイレは大破覚悟、密集地点に向かってパラシュート無しの空挺降下を『段差に強い』特性を信じて――攻撃を開始!
「うおおおおおおお!!!」
 ――ツタの化け物たちが密集している地点は、豪炎に包まれていた。降下後、『ファイアストーム』を撃ちこみながら勢いある着地を決める洋。当然のことながらオイレはツタの化け物や地表に激しくぶつかって大破してしまうが、そんなことはお構いなしに乗り捨てると同時に『怒りの煙火』を放つため拳を大地にぶつける。それによって発生した溶岩が、広範囲にわたる化け物たちを遠慮なく焼き尽くしていった。そして、ミニガンモードの光条兵器を構えるとその場で固定砲台のごとくに一斉掃射、化け物へ更なるダメージを与えていく。
「……みと! 私を中心ポイントに設定、空対地爆撃支援用意!! エリスと洋考は先行してこちらの攻撃を逃れた化け物共を早急に処理! ――みと、放て!」
「ふふ、了解。――広範囲攻撃、なんて素敵なんでしょう……魔力任せの砲撃、能力補正もしていますから――沈んでください、ツタの皆様」
 洋の指示を受け、みとは躊躇せずに指定されたポイントを中心に最大火力の『ファイアストーム』を放つ。纏めて焼き上がるツタの化け物たちを眼下より眺め、その表情は狂気に染まった満面の笑みと至上の愉悦、悦楽、恍惚を浮かべている……。
「あははははは! 素敵ですわ、もっと、もっと!! 素敵な花火を! 素敵な炎を!! 洋様の願いを! あなたたちに死を!! あはははははははははははははは!!!!」
「――みとは絶好調のようです。こちらもマルチロック確認……一斉射撃です、以上」
「はいはーい、任せたよー。こっちも前回の戦闘データがあるから対処は簡単、全部やっちゃうからねぇー」
 みとのハッスルぶりを見ていつも通りの反応を示すエリスと洋考。こちらも洋の指示に従い、地獄絵図のような範囲を逃れたツタの化け物に対して、エリスは《小型飛空艇ヴォルケーノ》から放つミサイルの雨あられを、洋考は《フューチャー・アーティファクト》による狙撃と『放電実験』の広範囲攻撃をそれぞれ繰り出していく。
 どうやらエリスのミサイルは火器管制機構を修繕したのか、今回はきちんと誘導機能が働いているらしい。的確に化け物たちを爆発に巻き込み、放出される種も洋考が確実に処理する。前回の戦闘データを参照しているため、戦いやすさは断然違うようだ。
 ――と、そこへ更なる増援が。黒幕との戦いに備えて飛空艇の甲板から戦闘を観察している葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の指示を受けて、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)セイレム・ホーネット(せいれむ・ほーねっと)鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)の三人だ。
「こちらは教導団少尉・相沢 洋である! 支援感謝する!」
「こちら、コルセア・レキシントン。これより友軍の支援に入るわ。セイレム、絶命寸前の奴を優先にやっちゃって!」
「りょーかーい」
 分身体を作ろうと種放出の前兆を見せる化け物を優先して《ホエールアヴァターラ・バズーカ》と《機晶爆弾》で焼却処理をおこなっていくコルセア。セイレムもコルセアの指示で言われたツタの化け物に対して『ファイアストーム』を放って燃やし尽くしていく。二十二号は二人が分身体の阻止に集中できるよう、前衛に回って大立ち回りを繰り返す。
 ――そして大方片付いたであろうその時、輸送飛空艇のほうより大きな爆音が響く。その爆音に導かれるように、この戦域にいた契約者たちは急いで輸送飛空艇へと戻っていくのであった……!