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突然のペット大戦争

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突然のペット大戦争

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「ペットねぇ?生き物を飼うって大変なのよ」
 ユダとエヅリコの2人に向かって鳴神 裁(なるかみ・さい)は言った。
「その点ギフトいいわー。特にこのモンキーアヴァターラ・レガースがいいよ☆人懐っこいし、芸は覚えてくれるし、戦闘でも頼れる相棒になったくれる♪ご飯は自分達と同じでいいから手間もかからないしね」
「うーん……でも」
 エヅリコは「なんか違う」という風に呟いた。
 それはユダにとっても同じらしい。
「わがままだねぇ。ま、最初のペットぐらいは悩みぬいて決めるのもいいか☆アリスもそう……アリス?」
 裁はさっきまで隣にいたアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)の姿がないのに気が付いた。
 さっきまで傍にいて「ペット、ペットねぇ、面倒なだけなんだけどなぁ……ふむ」と言っていたのは覚えている。
 瑛菜にアリスの行方を聞いてみると、
「そういえば『そうだ、いいこと思いついた☆』なんて言って出て行ったわよ」
 ということらしい。
 そして当の本人はというと……。
「あ、きたきた」
 オープンカフェの端っこで何か遠くを見つめるアリス。
 その視線の先では柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)がこちらへやってくるのであった。
「よう、アリス……こりゃいったい何の騒ぎだ?」
 オープンカフェの状態を恭也は険しい目つきで見渡した。
 カフェのあちこちがやたら騒々しい。しかも一部では殴り合いまでしてるし、そこかしこに動物達がいるしでゴチャゴチャした状態になっている。
 アリスから事情を聞くと彼は「ふぅん」と呟いた。
「こいつはまた面倒くせぇ騒ぎになってんなぁ。ったく、どれが一番だなんて人それぞれだろうが、この阿呆共め。で、アリスは何で俺を呼んだんだ?鎮圧だけならお前等だけで十分だろ」
「これを鎮圧するだなんて、とんでもない☆。オチラギさん、わたしの命令(おねがい)☆にハイかイエスかヨロコンデーか答えてね♪」
「だが断わ……」
「やったぁ、ありがとう☆アリスもペット自慢したかったんだぁ♪」
「……聞けよ、おい。というか、ペット自慢つったって、ペットなんざ何処にいるんだ?」
「いるわよ、ここに♪」
 ぴっとアリスは人差し指をとある方向へまっすぐ差した。
 その先にいるのは。
「……おい、俺を指差してんのは何の真似だコラ?」
「今からわたしの玩具(ペット)☆になって☆よろしくねオチラギさん☆お手♪」
「俺が?お前の?ペット?っざっけんなコラァァァァァァ!誰がお前のペットだぁぁぁ!?
ここに呼んだ理由はそれかぁ!」
「ダメー?」
 くねくねと可愛らしく体を揺らすアリスとは対照的に恭也は烈火のごとく怒鳴り散らす。
 そんな目立つ2人へ「なんだなんだ」と人も集まり始めていた。
「ダメだ!」
「ああ、下僕(ぺっと)の方がいいってことね♪」
「よくねぇよ!つうか、ここに呼んだ理由はそれかぁ!んな巫山戯た理由なら帰らせてもらうぞ」
 そう言って背を向けて恭也は帰ろうとした。
「もう、わがままだなー」
 そんな彼に向けて、アリスはポケットから「使役のペン」を取り出す。
 そして、
「えい☆」
 背中にすらすらすら、『アリスのペット☆』と文字を書き込もうとした。
 が。
「おい、何だそのペンは」
 恭也は素早く振り返ると、アリスの腕を掴み取るのだった。
「あら〜♪バレちゃった☆」
「バレちゃったじゃねぇ!」
「もう、なにやってるのアリスー……て、オチラギさん?」
 アリスと恭也の騒ぎを聞きつけ、裁は2人の元に駆けつけた。
 その時、裁ははっとした。
 恭也がアリスの腕を強く掴んでいる。
 それはもう、ぎゅっと。
 裁は「そ、そんな……」とわざとらしく硬直してみせた。
「オチラギさんがそういう趣味だったなんて……」
「は?」
「そうなのよ♪彼(ペット)ったら強引なんだから☆体も逞しいけど、持久力もあってすっごく、す・て・き!」
「おい、なに言ってやがるアリス」
 3人の周囲が妙にざわざわし始めてきた。ついでになにかヒソヒソと話し合う声も聞こえてくる。
「オトコノコが好きなだけじゃなかったんだw」
「だから俺はノーマルだって言ってんだろうが蒼汁娘!」
「やーん、おこっちゃい・や。夜のオチラギさん(ペット)はすごく優しいのにー」
 周囲はさらにざわついた。
「アリスもなに誤解を生むような言い方してんだ!もう我慢できねぇ、おまえらそこになおれ!」
 恭也はたまらずに拳を振り上げる。
「あ、やべ、怒った。そーれ逃げろー☆」
「逃げろー☆」
「あ、おい待て!」
 裁とアリスは集まった人ごみをかき分けて逃げ出していった。
 そのついでにアリスは『使役のペン』で野次馬達に「足止めして☆」と書き込む。
 たちまち恭也はペンで使役された人たちに邪魔されて抑え込まれてしまうのであった。
 恭也はむなしく怒号をあげる。
「裁!アリス!後で絶対にぶっ飛ばしてやるから覚えとけやぁ!」