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【ですわ!】捕らわれ少女と闇夜の取引

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【ですわ!】捕らわれ少女と闇夜の取引
【ですわ!】捕らわれ少女と闇夜の取引 【ですわ!】捕らわれ少女と闇夜の取引

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第八章

「ヘイリー……これで全部よね?」
「おそらくは……」
 暗殺者を倒し終わったリネン・エルフト(りねん・えるふと)は呼吸を整えながら、ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)に問いかける。
 開け放たれた扉からはこれ以上敵が向かってくる気配はない。
 生徒達の頑張りで、アジトの襲撃者に被害はない。
 とりあえず一安心、と思ったその時――
『攻撃を仕掛けよう!』
 襲撃者の中からそんな声が聞えた。
 ヘイリーは振り返り、怒りを含んだ声で叫ぶ。
「あんた達、今の戦い見て何にも理解しなかったの!? そんな付け焼刃な布陣や腕っぷしでかなうと!? そんなわけないでしょ! おとなしくしてなさい!」
 文句を言う者には弓を向けてでも止めさせる。けれども、再び灯ってしまった炎は落ち着くどころか、燃え上がる一方。
 このままでは生徒達と交戦してでも強行突破を行いかねない。
「せめて、連絡が取れれば……」
 その時、想いが届いたのか。仲間からの連絡が入ってきた。


「これが魔法停止のやつ?」
「ん、ああ……ん、誰だ、おま――」
 セキリティ室の見張りを倒して入り込んだ笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)は、中にいた人物も昏倒させる。
「こいつを破壊すればいいんだね」
 何やらいくつかボタンがある端末。
 そこへ紅鵡は大量に銃弾を叩き込む。
 金属片と火花が飛び散り、爆発音と共に黒い煙があがった。
 ――魔法と通信妨害の装置が停止する。
「ほら」
「ありがとうなのですぅ」
 紅鵡はルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)を手に乗せると、館内放送マイクの前に近づける。
 スイッチをいれ――
「皆さん、装置は停止しましたよぉ。存分にやっちゃってくださ〜い!」
 ルナの声が建物内部に響いた。

「でかした! いくぞ、アニス!」
「にひひ〜っ、いっくよぉ〜!!」
 佐野 和輝(さの・かずき)の指示でアニス・パラス(あにす・ぱらす)が【稲妻の札】を放つ。
 敵が怯んでいる隙に、和輝は曙光銃エルドリッジを両手に突撃する。
 和輝を止めようとして向けられる銃口。
 放たれた銃弾は――
「さぁ、ショーを始めますか」
 彼らの前に現れたフェニックスが纏う炎に掻き消される。
「めったにお目にかかれない存在です。しっかりその眼に焼き付けてくださいね」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)の周囲に淡い光が巻き起こり、次々と姿を現れる召喚獣達。
 真人を守るように立つ召喚獣達は、待ちくたびれたと言わんばかりに雄叫びをあげ、会場を震撼させた。


 来客が入ってきた正面出入り口に向かう司会者。
「こ、こんなの聞いてませんよ!」
 生徒達の反撃を受け、別室で状況を見ていた司会者は慌てて護衛と共に脱出しようとしていた。
 すると、彼らの前にクレメンティア・フォレストヒル(くれめんてぃあ・ふぉれすとひる)が立ち塞がった。
「ここは通行止めです!」
「どけ!」
 司会者の前に出てきた護衛達が武器を構える。それに対して、クレメンティアの前にはブリュンヒルデ・ヒンダルフィヤル(ぶりゅんひるで・ひんだるふぃやる)が進み出る。
「クレメンティア様、私の後ろにお下がり下さい」
「お願い、私は援護に回ります。……ブリュンヒルデ、できるだけ傷つけてはいけませんヨ?」
「善処いたします」
 ブリュンヒルデは一斉に向かってきた相手にバスタードソードで横凪に斬りつける。
「無理して倒さず、時間を稼いでください!」
 クレメンティアは銃を構える相手に火球を放つ。ブリュンヒルデは指示を受け、追撃はせずに相手を吹き飛ばして距離を取らせる戦いをする。
 攻撃はとめる。先には通さない。
 二人はお互いをカバーをしあいながらその場を持ちこたえた。
 一向に決着のつかない戦闘に、司会者は苛立ちを積もらせる。
「ええい! 何をやっているんですか! あの女を潰せば全てが終わるでしょう」
「クレメンティア様!」
 司会者が隣の護衛から奪った銃をクレメンティアに向ける。
 寸前に魔法を放ったばかりのクレメンティアは、急いで回避行動をとろうとする。
 そして――銃口が逸れた。
「なっ!?」
 司会者が横を見上げると、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が立っていた。
 エヴァルトは握りつぶすような勢いで、掴んだ司会者の腕に力を込める。
「やっと顔が拝めたな。覚悟はいいか? おまえは俺の友を誘拐するだけでは飽きたらず、人身売買にかけた。そんな奴はな……」
 痛みに悲鳴をあげる司会者から手を離したエヴァルトは、すかさずに腹に拳を叩き込む。そして、前のめりになった司会者の頭上に脚を振り上げ――
「万死に――値する!!」
 踵を振り下ろした。
 轟音と共に、床に亀裂が入り、司会者は肩まで埋まる。
 【ポイントシフト】で突然現れたエヴァルトに驚いていた護衛が、慌ててエヴァルトへ攻撃を仕掛ける。
「ブリュンヒルデ、いまです!」
「お任せください!」
 すると、背中を見せた護衛にクレメンティアとブリュンヒルデはすかさず攻撃を加え、全滅へと追い込んだ。
 周囲に敵がいないことを確認して、エヴァルトは司会者の頭を掴んで持ち上げる。
「そんなに儲けたいなら儲けさせてやる……お前自身でな。さぁ、何処を売る? 目か? 臓物か? 心臓は高そうだな。出来ないと思うか? この場で目玉をくり抜いてやろうか? 嫌なら、黒幕を吐け。国軍でなら少しは人間らしい扱いがされるだろうよ」
 エヴァルトは司会者の目の下に触れた指に軽く力を込める。脅えた司会者は洗いざらい情報を話し始めた。

「ここを開けて!」
 舞台袖の扉を叩かれ、リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)の声が聞えてくる。仲間の声に想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)は慌てて塞いでいた物をどかして扉を開く。
「無事だったんだね」
「うん。武器を見つけて来たよ。ところでポミエラは知らない? 今まで探してたんだけど見つからないんだ」
「ポミエラは……」
 リアトリスは回収されていた一部の生徒の武器を渡しながら、落ち込む夢悠の姿に眉を潜める。
 夢悠は言葉を詰まらせながらもポミエラが別の場所で捕まっており、命の危険に晒されていることを伝えた。
 生徒が【テレパシー】を使って連絡を取ろうとするが、届かない。
「ポミエラの周りにも遮断装置があるのかもしれない」
「それだけじゃない。もう一つ悪い知らせがあるのだ」
 考え込むリアトリスの元に天禰 薫(あまね・かおる)が深刻そうな表情で近づいてくる。
 言い難そうにしている薫に変わって、天王 神楽(てんおう・かぐら)が言葉を引き継いだ。
「他の奴から聞いた話だが、セキリティ室のポミエラの牢を映したモニターに、近づいてくる複数の熱源が表示されているらしい。おそらく生徒の誰かだろうな」
 その誰かは、連絡がとれない十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)達であるとすぐに予想がついた。
 彼らは首輪のことを知らない。このままではポミエラが危ない。
 話を聞き終わったリアトリスは、無言で思考を巡らした。
 そして――生徒達に背を向け、扉に歩き出した。
「僕が知らせに行くよ」
「場所はわかるのか?」
「わからない。けど、このままじゃ助けられない。だから、どうにか探してみるよ」
 そう告げるリアトリスの背中には静かな闘志に満ちていた。
 だが、そう易々とはいかない。
「こんな時に……」
 通路に出た瞬間、敵の増援に行く手を塞がれる。
 時間がない。
「援護するのだ!」
 すると、薫の放った【アシッドミスト】が敵の集団を覆い、矢の嵐が降り注ぐ。
 敵ががむしゃらに撃ってきた弾丸を、神楽が【サイコキネシス】で引き寄せた執務机でガードする。
「いけ! ここは俺らがやってやる!」
「ポミエラを――お願いします!」
 夢悠に背中を押される。
 リアトリスは黙って頷くと、尋常ならざる速度で敵の間を縫って外へと向かった。
 残された生徒達は、敵を引きつけるために派手に戦闘を繰り広げる。
「ちぃ! 結構な数だな……」
 だが、倒しても倒しても駆けつける増援に苦戦を強いられていた。
 そんな時――
「駆け抜けよ――氷結の獣!」
 敵の背後から氷の嵐を襲いかかった。
 生徒達による挟み撃ち。敵は瞬く間にやられていった。
 敵影がなくなると、挟撃の初手を放ったベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)が薫の前に降り立つ。
「大丈夫か?」
「ベルクさん、助かったのだ!」
「ベルク?」
 その名前に神楽は、薫にもふもふの狼の耳と尻尾をした友人がいることを思いだす。
 そこへ、豆柴姿の忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)がやってきた。
「助けに来てやりましたよ!」
「おお、こいつが例のもふもふか!? なんか聞いてた話と違うが、なかなか……」
「ななな、何するんだ!? や、やめろぉ――!?」
 神楽はポチの助の身体を触りまくる。
 最初は嫌がっていたポチの助も、お腹を撫でられてなんだか気持ちよさそうにしてきた。
 満足そうな神楽。しかし――
「違うのだ、神楽さん。それはポチの助さんで、フレンディスさんのお仲間なのだ」
「そうなのか? じゃあ、どこに……?」
「フレイならここにはいないぞ。正面で戦ってるぜ」
 苦笑い浮かべる、ベルク。
「何が戦力バランスだ……」
 共に援護へ駆けつけたウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)は、不平不満を口にする。

 雛の救出に向かった生徒達は、会場に戻ってくると二手に分かれて援護に向かった。
 片方が舞台袖の扉付近へ。もう片方は正面入り口へ。
「俺の邪魔をするな!」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は扉の前で固まっていた兵に【クライオクラズム】を放つ。漆黒の冷気が兵士達を氷漬けにしていく。
 残った兵士が銃口をグラキエスに向けた瞬間、フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)の忍刀によって銃が真っ二つになった。
「援護は姉に――お任せ」
 フレンディスは素早い動きでヒット&アウェイを繰り返す。
「お兄さんもいる事をお忘れなく」
 ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)が綺麗な音色と歌声で援護を行う。
 ノリノリで援護してくれる二人に、グラキエスは皺の寄った眉間に指を当てて尋ねる。
「あのさ……いつまでそれやってるつもり?」
 フレンディスとベルテハイトは笑顔で親指を立てていた。
 そんな彼らの背後で、月崎 羽純(つきざき・はすみ)は敵の増援を相手にしていた。
「なぁ、歌菜。そろそろ教えてもらえないか?」
 羽純は槍で難なく敵を蹴散らせながら、遠野 歌菜(とおの・かな)に尋ねる。
 魔法と通信を妨害していた装置が止まると、歌菜は何故あんな自信満々に言っていたのか。それが気になっていた。
 すると、魔法少女衣装の歌菜は、【さーちあんどですとろい】で敵を焼き払いながら、鼻を高くして話しはじめる。
「ふふん♪ それはねぇ〜」
「それは?」
「実はね、私……」
 焦らして溜めに溜めた歌菜は、羽純の方を振り返って言い放つ。
「――予知能力者なの!
「ウソだな」
「えええ! なんでそんなにはっきり否定しちゃうのよ!」
 歌菜は頬を膨らませ、羽純の頭を槍で叩いていた。


「どこだ……」
 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は街で一番高い建物の屋根から周囲を見渡す。
 夜風がリアトリスの髪をなびかせながら磯の香りを運んでくる。
 ポミエラが捕らわれている場所を探すと言っても、その範囲はかなり広い。
「せめて手がかりがあれば……」
 ――トゥルルル
 リアトリスは悩んでいると、携帯電話が鳴りだした。
「はい」
「そなたはリアトリス・ブルーウォーターで間違いないな。わらわはグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー。先ほど、送られてきた情報から少女の居場所は特定した」
 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)から送られてきた画像を手に、街に詳しい人物に尋ねて場所を特定した。その写真とは、【ソートグラフィー】で映し出したモニターで見たポミエラの捕らわれている姿だった。
 その写真の窓に映された月と夫婦岩がヒントだった。
灯台だ。灯台もと暗しという言葉があるだろう。そこの地下に牢がある」
「――あそこか!」
 リアトリスの目が岬で輝く灯台を捕える。
 急がなきゃ。
 足の裏に力を込め、リアトリスは屋根から屋根へと跳躍して灯台を目指した。


「こいつがアーベントインビスの脱出艇か」
 海岸の洞窟を進んでいた源 鉄心(みなもと・てっしん)は飛空艇を発見する。
 鉄心は突入するために、亜空のフラワシから銃を受け取り、ぽいぽいカプセルからレガート(ペガサス)を呼び出した。
 そしていざ突撃と意気込んだ時――
「――っわ!?」
 レガートに背後から頭突きをされ、洞窟を流れる海水の中へと落っこちてしまった。
 鼻を鳴らして蹄で岩を叩くレガート。その背中をティー・ティー(てぃー・てぃー)イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が優しく撫でる。
「レガートさん、不機嫌ですね」
「鉄心がひどい扱いをするからですわ」
 レガートはぽいぽいカプセルに入れられていたことを怒っていた。
「……行くぞ」
 海水から上がってきた鉄心は、先を急いでいるからと怒鳴りたい気持ちを抑えて、飛空艇へと向かった。
 慎重に甲板へと続く急な階段を上った。
「お……」
「む? お久しぶりです」
 そこでは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が乗組員と戦闘中だった。
「どうしてここに?」
「ああ、支配人の脱出を手伝うように言われたんですよ」
 ガードマンとして潜入した唯斗は、支配人を脱出させるためにこの場所の護衛を指示されていた。
「そこで制圧しようと思ったのですが、予想以上に数が多いのです。手伝ってもらえますか?」
「もちろんです」
 鉄心は向かってくる乗組員に銃口を向ける。
「私と唯斗さんで前に出ます! 鉄心は援護を!」
 前へ出るティーと唯斗を、鉄心が援護する。
 圧倒される乗組員。
「そらぁ!」
 リーズ・クオルヴェル(りーず・くおるう゛ぇる)は空中で獣人に姿を変え、着地同時に敵を切り裂くと、狼に姿を戻して敵の間を抜けてかき乱す。
 その姿を見ていたイコナはレガートの背で闘気を燃やす。
「わ、わたくし達も行きますわ。レガートさん、ゴーです――んぎゃ!?」
 いきなり走り出したレガートに振り落されたイコナは、頭を打って伸びてしまった。


 そんな洞窟の奥では、十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)が自分達の何倍も大きい化け物と戦っていた。
「くらえ!」
 宵一は獣の力を借りた拳を叩きこむ。突き出した拳に動物の幻影が重なり、化け物の身体に青あざをつくる。
 度重なるダメージを受けていた化け物は、それだけで足元がふらついていた。
 そこへ飛び込んだルーシェリアが、両手に持った剣で化け物の腕を切断する。
「――!?!?」
 苦痛に満ちた悲鳴が洞窟に木霊する。
「今です!」
「これでクリアだ!」
 宵一が地面を蹴り飛ばし、高く飛び上がる。
 上段に構えた代理人の大剣が青白い炎を纏って輝いた。
 宵一は全身全霊を込めその剣を――振り下ろす。
「レジェンドゥ・ストライィィィク!!!!」
 剣は化け物の頭から股を一直線に切り裂いていく。
 光は洞窟を照らし、轟音を立てて化け物は冷たい岩の上に横たわった。
「……進みましょうか。この先にポミエラさんがいることを願って」
 ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が追い付くのを待ってから、彼らは石の階段を昇り始めた。
 鉄の扉を開けると、その先は倉庫。
「灯台みたいでふ」
 倉庫を出ると、廊下に『灯台地下1階』と書かれている。
 湿っぽい廊下の白い壁が所々緑色になっている。
「宵一達、いましたわ!」
 部屋を一つ一つ見ていたヨルディアが、捕らわれているポミエラを発見する。
 呼びかけるとポミエラが泣きそうな声で返事をした。
 彼らはカギのかかった扉を蹴破って中に入ると、行く手を塞ぐ鉄格子を剣の一撃で破壊した。
 ようやくポミエラに触れられる所まで辿りつく。
「今、外してあげますからねぇ」
 椅子に巻きつけられたビニールテープが順番に外されていく。
 目隠しを外すと、ポミエラは緊張の解放から大粒の涙を流し始めた。
 そっと抱きしめようと手を伸ばし、ルーシェリアは歪な首輪の存在に気づいた。
「これもですねぇ」
 ルーシェリアが首輪を外そうとする。
 その時――

「つらぬけぇぇぇ!!」

 声と共に大きく灯台が揺れ、廊下の天井に穴が開いた。
「な、なんだ!?」
「触るな! 首輪に触っちゃいけない!」
 土煙の中で、リアトリスが叫ぶ。
 ギリギリの所で間に合うことができた。


 地下道を通って洞窟に出た支配人は、急ぎ足で飛空艇へ向かっていた。
「な、なぜだ!? 下衆な輩は全員始末されるはずじゃなかったのか!?」
 焦りと不安の中、急な階段を息を切らしながら昇る。その先には…… 
「どうも、こんばんは。下衆なのはどっちですかね?」
 制圧を終えた唯斗達が待っていた。
 支配人はその場に座りこみ観念し、首輪のカギを手に入れる。

 こうして生徒達による闇取引の摘発と救出劇は、幕を閉じたのだった。